なばてあ さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
パワー勝負と引き算
原作未読。
ふしぎな作品。作画はちまたで言われているほど、良いわけではない。「大自然の美しさ」をテーマにする映像作品の場合、たとえば風でそよぐ木々や草むらをひとつひとつ別々(であるかのよう)に動かさないと、きょうびのクオリティに慣れた視聴者の眼にはどうしてもチープに見える。
この作品は背景については一枚絵で完結しているものが多く、キャラの髪が風にそよいでいるのに背後の草が微動だにしないことが、どうしても気になる。これが街や学校を舞台にしていれば、背景が動かなくてもそんなに違和感がないため、まあ結果、気にならないということになる。
ようするに壮大な自然をテーマにする作品は、ジブリ的な制作陣のパワー勝負に乗れるかどうかというところが、最初のリトマス紙として機能するということである。この作品のスタッフ陣の仕事が手抜きだと糾弾したいわけではないけれど、わたしはどうしても背景美術のチープさが目に付いたのはたしか。
キャラ作画も、けっして洗練されているわけではない。日常芝居であっても、もっともっと、詰められるところはあったと思う。歩き、走り、座りなどなど、基本的な動作の粗が気にならないわけではなかった。とはいえ、このふたつの瑕疵を除くなら、『ゆるキャン△』はすごい作品だと思う。初見時は心底、おどろいた。
この作品のすばらしさは、人口に膾炙する神回の第5話「二つのキャンプ、二人の景色」に凝縮されている。日常系+アウトドアトリビアというどちらかというと平凡な構造でしかないのに、第5話ラストのあのふるえるような感動はいったいどこから来るのか。
語りすぎない、踏み込みすぎない、熱くなりすぎない、・・・という引き算の美学なのだろうといまは考えている。野外にしろ、友情にしろ、青春にしろ、とにかくさりげなくフラットに節度をたもったストーリー展開で、声優の演技もオフサイドラインをしっかり見極めた、品の良さ。
たとえば日常系+美術制作の『{netabare}ひだまりスケッチ{/netabare}』も良い作品だけれど、比較してしまうとどうしても熱すぎる瞬間がいくつかある。友情や青春の良さに浸っている、その浸り方の無遠慮さが鼻につく瞬間が、ある。『ゆるキャン△』は比べるとどこまでも「クール」である。
この「クール」というのは、気取っているということではない。気取らないのである。「・・・しない」という否定神学をアニメに落とし込んだ際の興味深い結晶のひとつが、この作品である。結果、こんなにかわいいキャラデザなのに、すごくオトナな作品に触れた感がとめどない。
そう、キャラデザはほんとうに良さみ。原作を読まなくちゃいけないだろうなあ。
衝撃:★★★
独創:★★★★★
洗練:★★
機微:★★★★☆
余韻:★★★☆