RFC さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
濃密な劇場版 苦みと酸味とほんのちょっとの希望
TV版SHIROBAKOがあまりに秀逸だったので、視聴は必定でした。
【作品概要】
TV版SHIROBAKOの4年後の物語。
たった4年で「兵どもが夢の跡」と化したムサニ。
人、金、物が大きく欠損した状況で
いわくつき劇場版作品を手掛けることになりますが…。
【作品に対する感想】
最初から最後まで「涙腺攻撃」と「笑」が怒涛のラッシュ。
脳が震える2時間でした。
TV版の積み重ねを120%活かした、素晴らしい劇場版だったというのが
率直な感想です。
TV版と対比的に作られているシーンが多々あり、懐かしさと変化の
両側面で心を揺さぶってきます。
この劇場版を100%楽しむには、TV版をよくよく視聴してからの方が
いいと思います。(せめて顔と仕事が一致するくらいには)
私は基本的に、劇場版は「尺不足による不完全燃焼」を
前提に視聴するようになりました。
それはこれまでに視聴してきた劇場版作品によるものです。
しかしそんな私でも、この作品は十分な満足感を得ることができました。
SHIROBAKOが好きな方、特に社会人の方にはお勧めできます。
と言いますのが涙腺攻撃の大半はドラマチックなものではなく、
「ほんとにキツイときのちょっとした気遣い」だったり
「昔に蒔いたちょっとした種が、ここで小さく効いてきたり」
といった、地味なものなんですよね。
この辺はそういう経験がないと有難味を感じにくいかな…と。
1)物語
物語には6点、7点付けたい気分です。
華々しい成功体験などほんの1割あったらいいほう。
その下には何十倍の挫折や涙が消えて行ってるんですよね。
{netabare}
➀やりたいこと≠出来たもの
これキッツい内容でした。
三女崩壊。
あれだけ苦労して最高の出来にした三女が酷い有様に…。
皆さんの苦労を知ってるだけに、観てられませんでした。
でも最後に…ほんの少しの希望が。
➁経営者・管理者のきつい現実
華々しく大団円を迎えたTV版。
それがたった4年、ワンミスで崩壊する脆い世界。
業界の慣習か、契約社会に移行し切れていなかった弊害か。
立場が上の人ほど割に合わないリスクを負ってるのが現実ですね。
➂契約書
ネタ的になってましたが、重要ですね「契約書」。
忙しくてもコピペなんてしちゃいけません。
その一文ですべてがパーになることもあるんですから。
{/netabare}
TV版ほどの外連味やドラマチックな演出が減った代わり、
リアリティはより厚めに。
そんな印象でした。
ホントにリアリティを言うなら、
「蒔いた種が都合よく開花するかよ」という突込みもあると思うんですけど、
それを言ったら作品になりえませんので…。
3)声優
TV版のキャラを一瞬出すために何人参加してるんですか!
贅沢極まりないっ!
5)キャラ
➀宮井楓
もうちょい彼女とみゃーもりのコンビネーションが見たかったです。
登場時と最後に出番がありましたが、問題解決していく過程に
もっと彼女が絡んで欲しかったなと。
➁げ~ぺ~う~社長
こういったどうしようもない人、普通にいますね。
そもそも接点を持たないようにするか、
接点があるなら隙を見せないようにするかしかないですね。
茶沢もちゃっかりいましたね。つか、まだ居れたんですか。
ですがあの面々だと多分用済みになったらポイだと思います。
➂宮森あおい
とうとうプロデューサーですか。
仕事の運び方は十分力ついた感じですが、まだまだ若いという感じ。
立場が上がったことでそれ以上の苦労が降ってきて、心折られまくってます。
自宅の荒れようがきつさを伺わせます。
➃安原絵麻
ネガティブが大分克服され始め、あおいに注文出したり
釘刺すほどに成長しているところが印象深いです。
フリーのアニメーターになったのは公式サイトで知っていたのですが、
てっきり「一人で食っていけるだけの力量とツテが出来たから」
だと思ってたんですよ。
{netabare}でも本当はムサニに社員抱える力がなくなったから
出ざるを得なかったんでしょうね{/netabare}
➄坂木しずか
TV版では一番の遅咲きでしたが、徐々に売れ始めている感があり、
後輩にも助言したりと、4年間の成長がうかがえます。
➅藤堂美沙
部下をまとめ、指導する立場となり、それゆえの苦労も。
真面目な性格なんでしょうけど、抱え込む傾向が顕著です。
いい意味で頼ることを覚え、絶賛成長中。
⑦平岡大輔
元気にやってる平岡にちょっと涙腺やばかったです。
業界で仕事を続けられるきっかけとなったみゃーもりには
恩を感じているらしく、彼のできる方法でフォローしてる姿に
うるっ😢。
⑧遠藤亮介
どんだけええ奥さんやねん!
三行半でもおかしくない状況です。
遠藤さんの気持ちもすごくわかるんですけど、
生きていく、守るべきものがあるならあれじゃいかんでしょう。
嘘でも誤魔化しでもいいから前に進まんと。
遠藤さんは周りの人にものすごく恵まれていますね。
ああまで言ってくれる瀬川さん、フォローしてくれるみゃーもり
笑顔で支えてくれる奥さん。
6)印象深いシーン
{netabare}
➀軽く食事
が、全然「軽く」になってないみゃーもりと宮井楓(笑。
素面の時は「大人の対応」してますが、
内心「どれだけため込んでんねん」と突っ込みたくなるシーン。
三軒ハシゴの上、自宅にもビールの空缶が転がってましたね。
➁5人の飲み会
みゃーもり、りーちゃん、えまっち、ずかちゃん、みーちゃん。
TV版でも同じような飲み会があったんですけど、ペース早い早い。
「皆さんよっぽどため込んでるものがあるんだなあ」と
「心底心許せる友人なんだな」と
感じたシーンでした。
もうちょい皆さんの心の内を聞いてみたかったなとも思いました。
➂元社長 みゃーもりに問う
ここ、涙腺やばかったです。
「立ち止まっている場合じゃない。君たちは前に進まなきゃ」
社長、ちゃんと責任を負ってますし、
みゃーもりの背中を押してます。
TV版の最後の方でロロがみゃーもりに
「目先のことばかり考えている時期はもう終わりだよ。
そろそろ、少し高い所から遠くを見る時がきたんだよ。」
と、問うシーンがあったのですが、正直あの時のみゃーもりの回答は
20点だったと思います。(1年目としては十分と思いますが)
今回も社長に同じことを問われますが、
やっぱり曖昧なままなんですよね。
4年経ってもまだ答えにたどり着いていなかったんだなーと思いました。
まあ仕事の哲学なんて見つけたと思ったら砕かれて…の繰り返しで
強くなっていくもんですからね。
この辺、やっぱ社長は年期からの強さがあるよね と感じました。
彼もまた、折れて足搔いての繰り返しで辿り着いた境地なんでしょうけど。
➃舞茸、りーちゃんのキャッチボール
TV版のえくそだすのコンテが上がらないときに
舞茸しめじが言った粋なセリフからつなげた粋なシーンでした。
りーちゃんもキャリアからすればまだまだなんでしょうけど、
師匠に意見できるほどの場数は踏んできたことは十分わかります。
舞茸の方も「商売敵」とりーちゃんを認めてますよね。
➄綸子はん 晒してしまう
こんなん噴くしかないやろ(笑
その後何事も無かったかのようにいつものスタイルに戻る
メンタルの強さが素敵🌸
➅退職後も意外と根に持ってない皆さん
アニメ業界の普通なことなのかもしれませんが、
トップのミスで職を失った人たちが割と普通にムサニの仕事してます。
私の業界ではこんなことになったら、クビになった社員は
会社や社長をボロクソ叩きまわって永遠に決裂すると思います。
それに対して、作中の皆さんのメンタル的タフさを感じます。
⑦人生は永遠に俺たたエンド
これ、名言ですね。
目指す限り上はあるし、歩く限り道は続く。
{/netabare}