tata さんの感想・評価
2.6
物語 : 1.5
作画 : 4.0
声優 : 2.5
音楽 : 4.0
キャラ : 1.0
状態:観終わった
当初麻枝准の言っていた「原点回帰」とはなんだったのか
筆者の視聴前の姿勢として、
麻枝准のアニメオリジナル作品はあまりいい印象がない
しかしKey作品アニメはどれも面白く感じた
麻枝准の原点回帰といえばoneやAirのような作品であると思っていた
この3点があり、期待半分諦観半分であった
3話程度視聴してわちゃわちゃした日常パートにいつもの麻枝節と這い寄る終末感を感じて考察やレビューを漁った
映画ハローワールドと似た構造ではないか?と考察するサイトがあり、大変感心した
ひなたちの次元は電脳空間で、ハッカー央人サイドは現実であるという考察だ
SF要素や迫り来る陰鬱な雰囲気とあっけらかんとしてドタバタ楽しい日常がよく対比される、良い手法だと思った
「そういう路線もいいな」
考察を読んだ時にこう思っていた
しかしそこは麻枝准、きっと過去の反省を踏まえて我々の考えるものより、より良いものを作ってくれるに違いないと期待でいっぱいになった
直近で発売されたKeyのゲーム「サマーポケット」がいい意味でKeyらしかったのでKey信者に刺さるポイントを麻枝准やスタッフは忘れていないのだという確信も期待に追い風だった
ところが蓋を開ければ出てきたものはなんとも形容し難いビターなエンド
10話以降の鬱っぽいストーリーラインは既定路線で、勿論そのような要素を多分に含んだ展開になることは麻枝准作品に触れた人なら察していただろう
ヒロインの努力や我慢、健気な想いが奇跡となって終盤の鬱展開を打破する
我々が見たいのはこれだ
決して独りよがりに記憶の定かでないヒロインに自分を思い出してもらうために強行する主人公が見たいのではない
親に必要とされなくなった為に歪んだ天才がコロッと代償行為として善行をするのが見たいのではない
ただの装置と化したサブヒロインと親友キャラがヒロインと主人公の2人の為の背景のように扱われるのが見たいのではない
クラナドはアフターが高評価であることが多いが一期も良かったと感じている
それぞれ登場人物の想いが奇跡となってアフターのラストに繋がる構成は非常に感動した
そういった相互の想いが形になって現れる、奇跡になって救われる、言う人が言えばご都合主義の無理矢理なハッピーエンドである
ほぼ全てのKey作品のラストがそうであったように思うし、みんなはそこに感動を覚えていたのではないだろうか?
当作品にそういうところがあっただろうか?
なるほど、普通じゃなかったひながしたかったことを1話から時間をかけて丁寧に描写していた
そこを伏線にしてひなが本来やりたいことをなぞっていくことでひなの記憶が戻り始めるような描写も本来なら感動的なはずだ
陽太が必要だと幼児退行したようなひなが泣くシーンは観鈴のゴールシーンに匹敵するはずだったのだ
しかし我々は感動できなかった
なにが駄目だったのか?
過去2作品シャーロット、エンジェルビーツに関しては尺とラストの畳み方が台無しにしているというのが否定的な意見の中心だと思う
今回もそうだったのだろうか?
私は違うように思う
前述のように伏線はしっかり張ったし陰鬱さの影は1話から、いやトレイラーが出た時点で忍び寄っていた
ひなが後半消えるであろうことなんて私たちは知っていたのだ
しかしそれは死であったり消失であるべきだった
幼児退行と記憶喪失したヒロインひなと再会した時、私達=陽太はどう思うだろうか、覚えてない、むしろ自分を怖がっているひなを快く思えるだろうか?
そしてそうなった彼女を元のひなにしたい、あるいは新しく自分と思い出を作り直していきたいと思わせるに足るヒロインだっただろうか?
予感はあった唐突な別れ、終盤の絆を再確認させるためだけに言わされたような「好き」という言葉、空虚な時間を過ごして他人に発破をかけられてやっと決意を新たにする主人公、そしてその間違った覚悟の方向……
あらゆる面で伏線が雑に張られ拾われていくのを目の当たりにして、つまり10話以降で私はこの作品のラストを見限った
恐らく私が見たいものではない
ビターエンドが嫌いなわけではない、むしろ好ましい作品さえある
しかし麻枝准にはそうあって欲しくないのだ
馬鹿げた奇跡が全てを救ってほしいのだ
そしてその奇跡を起こすのはそれまでに培った絆であり友情、愛情であるべきだったのだ
ヒロイン主導のはちゃめちゃな日々に居心地の良さと安心感、「この子ともっと時を過ごしたい」と思わせる力が足りなかった
映画撮影もバスケもラーメンも麻雀もたしかに共有する記憶だし大事な思い出で登場人物たちの絆である
しかしそれが結実しただろうか?それがなければストーリーは成り立っていないだろうか?
答えは前述の通り、ノーでしかない
Airのようにヒロインと他のキャラとの強固な絆がない
Kanonのように主人公との安心して寄り添う関係性がない
CLANNADのような家族を持つという決意も家族自体を主眼に置いた人生を考えるきっかけもない
(リトバスとリライト、シャーロットに関してはあまりいい感想を持ってないので控える)
ABのような麻枝准の得意とする音楽の力もない(ストーリーとしてはお粗末な作品だと思っている)
総じてパワーが足りなかった、情熱がなかった、若さと独善性を履き違える主人公は今までにもいたが彼らには目に見える情熱があり、悲壮感があり、陽太よりも少し大人だった
そこが分水嶺となってこの作品を駄作たらしめていると考察する