かがみ さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
みんなで叶える物語
人は誰もが「物語」によってその生を基礎づける。社会共通の物語が失効し、それぞれが「自分の物語」を選んで生きるしかない現代においては、時として「わたし」と「あなた」の物語は衝突する。いわゆるゼロ年代的想像力はこうした「物語」同士の関係性を問うものであった。
そして2010年代のサブカルチャーを象徴する作品の一つとなった本作はその副題に「みんなで叶える物語」というキャッチフレーズを掲げている。この言葉はユーザー参加型企画としてのラブライブの性格を言い表すものでもあると同時に、ゼロ年代的想像力における問いに対する2010年代からの回答としても読めるだろう。「わたし」と「あなた」は違う物語を生きている。だけどその間に「みんな」を見出すことができる。こうした意味での「みんな」はゼロ年代的想像力における「つながりの社会性」の延長線上にあるが、本作の特徴は「みんな」がある種のホーリズムとして「わたし」や「あなた」の「個」を抹消する危険についてかなり自覚的なところにある。
1期後半ではラブライブ出場に血眼になる穂乃果の陰でことりが留学の話を打ち明けることができず、その結果、土壇場でμ'sは瓦解し、ラブライブ出場を断念する憂き目にあった。そして2期では、再びラブライブ出場を目指しつつ、穂乃果たちは生徒会の活動をやり抜いたり、これまで逃げていた自分に向き合ったりといった「個」の物語が掘り下げられる。こうしてみると本作のいう「みんな」とはゼロ年代的「つながり」を超えた、ばらばらな「個」の集合としての「まとまり」を意味しているのではないか。
そして、こうした視点からすればあのμ'sの結末も腑に落ちる。μ'sという固有名はあの9人の「個」の「まとまり」を指すものであり、ひとりたりとも欠けては成立しないものだったという事なのだろう。