フィリップ さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
魂のありか
アニメーション制作:J.C.STAFF、監督:長井龍雪、
シリーズ構成:ヤスカワショウゴ、
キャラクター原案:はいむらきよたか、
アニメーションキャラクターデザイン:田中雄一、
音楽:井内舞子、原作:鎌池和馬+冬川基
『とある魔術の禁書目録』の外伝でありながら、
本編を凌ぐほどの人気を誇るシリーズ。
私はアニメを観始めたころに出会った作品で、
本編についてはほとんど知らず、
外伝だけにふれたのだが、十分に楽しむことができた。
そして、アニメという媒体が分かりやすく、
多くの人々に大切なことを訴えることができることを知った。
今回はそのシリーズの3作目。
この作品の何がそんなに面白いのかと考えると、
ひとつは、やはり絶妙なキャラクターたち。
主要人物は御坂美琴を筆頭に白井黒子、初春飾利、佐天涙子の
4人でこの関係性がとても良い。
高能力者が目立つ学園都市内にあって、
レベル1の能力者だが天才ハッカーの初春と
レベル0だが、純粋な心と明るい性格の佐天が
高能力者たちを支える友達関係だというのが、
物語をさまざまな角度から捉えられるようになっている。
それに加え、美琴が黒子にも言えない秘密を抱える、
孤高の存在であることも特徴だ。
また、今回は食蜂操祈が美琴と絡む
メインキャラクターとして活躍しており、
CV浅倉杏美の演技も堪能させてくれる。
ただ、あのメンタルアウトの能力は、
あまりにもチートすぎる気もしなくもないが、
美琴の能力値の膨大さを考えると
同じレベル5としては釣りあいがとれているのかも。
そして、作品のもうひとつの魅力は、
「人とは何なのか?」という
テーマがいつも物語の背後にあること。
能力の大きさによって、人の価値が測られるのか。
クローンは人間と呼べるのか。
クローンと友情を育んだ人間の想いをどう考えるのか。
サイボーグの人工知能は、果たして魂なり得るのか。
能力者は学園都市内において、
実験動物のように扱われる。
{netabare}特に美琴の場合、多くのクローンが生み出され、
そして殺戮されていた。{/netabare}
楽しい学園生活と派手な能力バトルの陰には、
とても重いテーマが横たわっている。
それをエンタメ要素のなかで上手く扱っている。
3期の前半部分では、食蜂操祈と警策看取が
{netabare}美琴クローンのプロトタイプである{/netabare}ドリーとの
友情や想いのために行動する。
後半では、予知能力者の美山写影と黒子が協力して
被害者となる人物の被害を未然に防ぐストーリーや、
暗部組織・アイテムのメンバー、フレンダと佐天涙子の
交流を絡めながら、操歯涼子とドッペルゲンガーの
戦いに美琴が巻き込まれる本流が描かれる。
ここで、インディアンポーカーという、
夢を介して能力を取得できるアイテムが登場し、
それを後半のストーリーの中心にしているのが上手い。
枝葉のエピソードを楽しませながら、
本流を視聴者に意識させていく。
禁書目録の作品については詳しく知らないが、
外伝の魅力は、やはり御坂美琴と仲間たちなのだろう。
美琴のハードボイルドな考え方に加え、
女子らしい距離感による友情が
一本の軸となって物語の根底にあるのが心地良い。
自分とクローンとの関係性で悩む美琴が、
その事実を知らない友人たちとの交流で、
信念を貫き通す活力を得ているのだ。
超能力者、クローン、そしてサイボーグにも
かけがえのない魂がある。
もし、現実世界でそんなことが起こったとき、
私たちはどんな選択をするのだろう。
(2021年1月30日初投稿)