あああ さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
ダンまち3期 感想と解説
感想と解説の中で脚本について意見している部分があるので、素人のそういう言動が嫌いなひとは非推奨。あと長い。自分が素人であることはもちろん自覚してるし、制作陣へのリスペクトは忘れてないつもり。
■3期の意味(感想と解説)
{netabare}
3期が物語的にどういう意味をもつのかはこの後の主人公を見れば分かるかもしれない。また外伝を見ればまた違った意味を持っていることが分かる。ネタバレになりそうなのであまり書けない。ベルが生きる上での目標を持ったことは伝わっただろうか。
書けることがあるとすれば「ダンまち」はベルの肉体的成長と精神的成長を描いた話。
1期(肉体的成長メイン)→2期(精神的成長メイン)→3期
適当に検索すれば分かると思うが、タイトルが「ファミリア・ミィス(眷属の物語)」のときもあった。子細が分からないので何ともいえないが作者が意図したタイトルはこっちだと思う。ダンジョンはあくまでもラスボスの中の1つという認識が適切だろう。
作者の描きたい「英雄像」
3期は作者の描きたい「英雄像」が見える話だった。
1つ目は「自分の行いが必ずしも正しくはないと分かった上でも理想を追い求められること」
ベルが民衆とロキファミリアの前でウィーネを庇い意地汚い冒険者を演じる場面でこれが感じられる。そしてその後のフェルズの「『偽善者』と罵られる者こそが『英雄』と呼ばれる資格がある。愚者であれベル・クラネル」という台詞にもよく現れている。
2つ目は「自分よりも強大な敵に自分を賭して立ち向かうことができること」アニメで分かりやすいのは1期ミノタウロス戦だろう。自分よりも強大な敵に立ち向かうベルを見たアイズ達が心を熱くしていた。自分よりも強大な敵に立ち向かう、つまり死地に身を投じることはアイズ達にも難しい。ソードオラトリアでのフィンの「ベル・クラネルの真似事は、君達には荷が重いか?」という台詞にそれが現れていた。今回はそれがアステリオス戦で現れる。
そしてこの2つが他のキャラにはない主人公の凄いところであり、それが現れる上述した2つの場面が今回の見せ場だったのだろう。原作ではこういう見せ場のシーンでベルは男らしく、血を流し骨に罅が入りながらも戦うような言ってしまえばクレイジーな一面を見せる。これがアニメでは表現されておらず盛り上がりに欠けるように感じた。2つの見せ場について書く。
1.ベルが民衆の前でウィーネを庇う場面
まずこの場面の前にベルがディックスに「助けを求めてる!!それだけで十分だ!!」という場面があったが、これが軽く流されてしまっているのが残念だった。この台詞が今回のゼノスと人類の問題(ウィーネを助けるかどうかじゃない)に関して、ベルが初めて自分の意志で出せた答えだった。この発言を聞いた暴走しているはずのグロスの目が見開かれ、リドの目から涙が流れる、単純だが明快な答えがどれほどゼノス達にとっては救いだったかが現れていた。
そしてその答えの意味を確かめさせられるようにウィーネを庇う場面へと移り、答えを貫き通すベルが描かれる。
ベルがウィーネの前に立つときの表情は素晴らしかった。ヘルメスの表情は改変だが、人類とモンスターとの問題に関する説明が少ない中、ベルの行動がどれだかヤバいものなのかが何となく伝わったと思う良い改変だった。その後のヘルメスの「ここで間違えばベル・クラネルは人類の敵となる」という台詞も、地の文を補足した良い改変だった。
しかしその後の言動と表情がもったいなかった。原作では意地汚い冒険者を演じ威嚇的な言動だったが、アニメでは狼狽しきっている様子だった。
またその後ウィーネに魔法の集中砲火が行われる中に躊躇わず突っ込んでいき、肌を焼き焦がされながらウィーネの元に進んでいく場面や、そのときの「イカれてんのかテメエは!?死ぬぞ!」という他の冒険者の台詞も欲しかった。こういう所にベルの男らしさというかクレイジーさみたいなものが現れていた。
2.アステリオス戦
民衆がアステリオスに恐怖する場面、そのように恐怖する中自分より明らかに強い敵に立ち向かうベルの姿に息を呑む場面、欲を言えば手を出そうとするLv3の冒険者達がアステリオスのハウルに怯んでしまう中で同じレベルのはずのベルがアステリオスに切りかかる姿に瞠目する場面などが欲しかった。こういう場面に先の2つ目の英雄像、即ちベルの何が凄いのかが現れていた。
そして戦いの中でも、血を噴き出しながら、肉の潰れる音を聞きながら、骨に罅が入る痛みを無視しながら、返り血を浴びながら雄叫びを上げて戦うベルの姿を描いて欲しかった。こういう場面にベルの男らしさ、クレイジーさが現れていた。
そして全体的に他の人がベルの戦いを『見守る』場面が描かれていたが、どちらかというと戦いに『引き込まれる』シーンを描いてほしかった。後者の方がベルの凄さみたいなものが感じられる。
1期ミノタウロス戦では作画はもちろん凄かったが、こういうシーンの描き方も素晴らしかったのではないだろうか。
こういうベルの男らしい場面、クレイジーな場面が2期3期ではあまり描かれていない。そしてアニメでは改変によってむしろ全体的に原作に比べてベルの言動や表情が幼く(落ち着きが無い?)なってしまっている。2期3期ではベルの「何が凄いのか」が分らず、盛り上がりに欠けるように感じた。
{/netabare}
■以下よく疑問視されている点について
【なぜゼノスとの共存が難しいのか】
{netabare}
・人類は神が降臨する前の時代にモンスターに散々殺されたという歴史がある。そして2期で出てきたようにその古のモンスターである「黒竜」はまだ倒されておらず、この人類とモンスターの戦いは終わっていない
・モンスターの見た目は特有の嫌悪感を人に与える。一応ゼノスにはこの特有の嫌悪感は感じないのだが、リドなどの人型ではないゼノスはそれでも恐怖を与える見た目をしており、人類の見た目と一線を画する。(ウィーネはかなり人に近いが、爪や翼や額の石があきらかに人ならざるものとして描かれる。)
・ゼノスの存在を知った全ての冒険者がこれまで通りにゼノス以外のモンスターを一切の躊躇なく屠れる保障はなく、一瞬の迷いは死に繋がる。そしてこの可能性はダンジョンのモンスターを倒すことで手に入る魔石などによって繁栄を保っているオラリオにとっては非常に大きな問題でもある
・身内をモンスターに殺された人も結構いる(ダンジョンに行って殺されたというわけではなくオラリオの外での話)。ベルも自分の祖父はモンスターに殺されたと伝えられている。またダンジョンで殺された場合は自己責任だとは思うが、それでもそう簡単に割り切れるものでもないだろう。
{/netabare}
【アステリオス戦】
{netabare}
・ベルがアステリオスとの再戦を受けたのはアステリオスがあの時点で瀕死であったため、アステリオスの意思を尊重したから。他にもこの戦いからは逃げてはならないと思ったという個人的理由もあれば、グロス達救出のために民衆の注目を集める意味もあった
・ベルがLv.7のアステリオスとやり合えたのは先程述べたようにアステリオスが瀕死だったから
・他の冒険者が手を出さなかった理由は
ベルの戦いに引き込まれた
フレイヤ・ファミリアが抑えてた
民衆を守ってた
とか。あと最初の方は結構手を出してる
{/netabare}
【ウィーネの戻る行動】
{netabare}
ベルとアイズの戦いは大分改変され短縮されていたが(その後のウィーネの場面を描くためだろう)、実際はウィーネを逃がすまでにもアイズの攻撃で意識朦朧としながらも戦い続けており、ウィーネを逃がす時点でかなりボロボロだった。アニメでは善戦しているように見えるのでウィーネが戻る必要性は全く無いように感じられその動機が分かりづらいが、原作では動機と気持ちは理解できるつくりになっている。
またウィーネが死によって精神面で変化を遂げていることも伝わりにくかった。最初の頃から変らないままの子どもっぽい願いに感じられたかもしれない。
(あとこれは結果論だが、ベート(狼っぽい人)はこの時点で既に追いついているので、ウィーネの行動が無ければウィーネは生還できなかったと思われる)
{/netabare}
【ヘルメス】
{netabare}
最後の謀りの場面でのテンションの高さと顔芸は小物臭があって違和感があったか。後半の方でのヘルメスが今回の騒動に対しベルのことを憂い真剣に取り組んでいる場面はカットされている。このカットされている状況で原作よりもテンションを高くして顔芸をさせてしてしまうとただのクズだった。ヘルメスはベルの英雄としての素質を見抜き、黒竜討伐のためにベルに全てを賭けている。恐らくベルの出自についても知っており一番ベルのことを理解していると言えるかもしれないキャラだ。今後のこのキャラの立ち位置に違和感があるかもしれない。
最後のヘスティアにドロップキックをかまされるのは一応3期の後の内容であり、良い改変だったと思う。しかしあれもヘスティアに誠意を込めて頭を下げにいく場面だったので、「は~い☆」は違和感があった。今後アニメ詳細が描かれる可能性もないわけではないが。
ちなみにベートのキャラも少しブレいている気がした(同じくただのクズの方向に)。
{/netabare}
コロナで色々大変だったと思われる中、アニメ化してくださったことには本当に感謝しているし、2期より確実に作画が上がっているのは嬉しかった。しかし脚本の面で原作との齟齬が感じられ、重要なシーンのカットや改変、伏線となるシーンの全カットがあったので、原作勢にとってはどうしてもストレスが溜まるものだったかもしれない。もちろん良い改変もあったのだが、良い印象を受けない改変の方が目立った。
2期から3期では作画に変化が感じられた。もし本編4期か外伝2期(こっちの可能性は低いか)をアニメ化してれるなら
・ベルの男らしさやクレイジーさが無いこと、全体的に言動や表情が幼く落ち着きが無いこと
・レベルやステイタスの情報の無さ
・心理描写の少なさ(ダンまちは哲学的な部分があるので心理描写はむしろ多い方がいいのでは)
・戦術や「技と駆け引き」の無さ(つまり心理描写の無さになるわけだが)
ここらへんでの脚本面の変化が欲しい、そう思わされる3期だった。