「無職転生 ~異世界行ったら本気だす(TVアニメ動画)」

総合得点
90.1
感想・評価
1081
棚に入れた
4506
ランキング
64
★★★★☆ 4.0 (1081)
物語
4.0
作画
4.2
声優
4.0
音楽
3.9
キャラ
4.0

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ネタバレ

ちゃんもり さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0
物語 : 3.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:今観てる

ついに爆誕した真の「なろう最終兵器」

始まった。ついに始まってしまった。

2016年、私はリゼロの原作で初めて「小説家になろう」の存在を知り、
すっかり「なろう愛好家」となってしまった。
その当時から、なろうの累計ランキング(全ジャンル)不動の一位を
ひた走っていたのが本作、「無職転生」である。
無論、リゼロのなろう投稿分を秒で消化した私は「無職転生」にも
すかさず手を伸ばし、挿絵も何もないネット小説である本作の世界観に
あれよあれよという間に引き込まれていった。

今の時代は光の速度でコンテンツが消化されていく時代である。
リゼロや「ログ・ホライズン」、「オーバーロード」等、2013~2016年に
かけて放送された秀作アニメのおかげで花開いた「なろう/異世界モノ」という
コンテンツは、いつしか一つの定番ジャンルとなり、毎クール必ず1本は製作されている。

また、この5年の間に数多く作られた「なろう/異世界」アニメの中には
一部例外を除き、原作をきちんと吟味もせずに安易にアニメ化が
企画された結果、駄作・凡作となり果てた作品も数多存在しており、
まさに粗製乱造と言われても仕方ない事態である。
そんな訳で今や「なろう/異世界」コンテンツはブームのピークを
過ぎてしまった感もあるし、「まーたなろう系か・・・」と露骨に
敬遠するアニメファンも一定数存在するようになった。

そんな中、いわゆる「量産型なろうアニメ」が取り上げられる度に
ネットのあちこちから「なぜ無職をアニメ化しないのか?」という声が
上がっていた。ある程度異世界ファンタジーに造詣が深い者なら、
「無職転生」という物語の唯一無二の求心力と説得力を分かっていたからだ。
原作読了済の私も全力でそう思っていたし、その声は
年々高まっていたように思う。

そして満に満を持して、ついに2019年、本作のアニメ化が発表された。
しかも製作の「スタジオバインド」はリゼロを手掛けた製作会社である
「WHITE FOX」と「ダンまち」等を手掛けるプロデュース会社である
「EGG FIRM」がタッグを組み、本作の製作に集中できる環境を
作るためにわざわざ立ち上げた製作会社なのである。
これは発表当時かなり話題になり、その美麗で壮大なティザーPVは
「ああ、これは本気で作るんだな」と否が応でも思わせられる仕上りだった。

これは久々に、ルディじゃないが私も本気でレビューしなければならない。
原作を知る者として極力ネタバレを排した感想を述べていこうと思うが、
どこでアクセルを踏み違えるか分からないので伏せておく。

1話感想
{netabare}
さて、いよいよ始まった、無職転生、ルーデウスの物語。
原作愛読者の私から見ても、もう100点である。全裸土下座ですよ、ええ。

正直、この序盤の入りをどうアニメで描写するかは注目ポイントだった。
「無職転生」は途轍もなく長大な物語であるが、アニメでは文章全てを
再現することはできない。だがここを丁寧に描けなければ、世界観や
キャラクターに対する感情移入も湧かないことになる。

視聴した結論から言うと、原作組も十分安心して観ていられる素晴らしい
構成だったように思う。無論、実際にはこれでもかなーり端折られている。
だが限られた放送時間で、セリフで入れられない情報を作画で入れたりと
随所に丁寧な工夫が見られた。

作画も想像以上に細かい。水魔術の水弾の描き方など、いわゆるアニメ的な
魔術エフェクトじゃなくちゃんと「水の玉」が描かれる。
これはルディが魔術を習得していく過程を描く上で必須な描写だし、
「この世界の魔術はこれこれこういう原理で起きる現象ですよ」と
視聴者が自然に理解できる描き方である。
こういった作画や構成の工夫は、原作を本当に細部まで読み込まないと
できない、いやむしろこの作品が好きじゃないとできない筈だ。
そういう意味でもこの先の展開に何の不安もなくなったと言って良い。

唯一不満があるとすれば、ルディの笑顔はもう少しニチャァっとしている
はずなのでもっと崩してもいいのよ・・・?というところか。
原作的に言うとそこがコミカルな部分なのだがアニメ的表現としては
下品の一歩手前なので難しいところかもしれない。

とにかく、1話の総括としては大事なところは端折らず、
且つアニメとしてテンポよく観られる素晴らしい1話だった。
今後も序盤は特に丁寧に描いていって貰えるとありがたい!

☆☆☆☆☆

{/netabare}

2話感想
{netabare}
ロキシー回である。イコール神回である。

主人公ルディの(特に中の人的な部分の)トラウマを払拭し、
広い世界に連れ出してくれた、という事実の意義は非常に大きく、
今後のルディの人生に多大な影響を及ぼすキャラクターである。

原作では細くてちんちくりんで三角帽子な魔導士キャラとして
描かれており、どちらかというとこのすばのめぐみん的な
キャラ像をイメージしていたが、アニメ版のキャラデザは
ちゃんと少女的な柔らかいラインが表現されており何というか
けしからん。しかも「あのシーン」までやってくれるとは、これはもう
演出班にロキシー教信者がいるに違いない。
そして彼女は魔族だがまちカドまぞくではないので勘違いしてはいけない。

無職転生の良いところは、主人公であるルディはもちろん、
ロキシーやシルフィ、何ならパウロに至るまで登場人物各々の
成長が描かれる点である。
ルディという「自分を軽々と超えていくであろう才能」に
直面ながらも、腐ることなく更なる高みを求めて旅立っていくロキシー。
だが安心してほしい。徐々に群像劇的な側面を見せていく本作の、
もちろん彼女もその主軸のひとりである。

また、1話冒頭でほんの少ししか触れられなかった「中の人」の描写。
尺調整にしても少しアッサリすぎたような気がしていたが、なるほど。
ルディの夢や回想シーンで少しずつ見せていく方向なのか。
これは非常に良い改変だ。
ルディの中の人は前世ではゲロ以下の臭いがプンプンするクソ野郎であり、
原作での描写はそのクズっぷりが遺憾なく発揮されているが、
続けて映像化すると本気でドン引きなレベルだからだ。
だからといって描写が少ないとルディの「外に出たくない」という
トラウマの説得力を欠いてしまう。
この2話では必要な箇所で少しずつ回想シーンを散りばめながら、
視聴者に「行間を想像・補完させる」ことで原作の描写の生臭さを
上手く中和しつつ、ルディの人となりを深掘りすることに成功している。
1話に続き素晴らしい演出だ。

今のところ、バッチリ原作準拠で話が進んでいる。
他の異世界転生作品と違っていきなり派手な展開にならないところが
無職転生の(良くも悪くも)特徴なのだが、毎話視聴するごとに
「あれ、今週もう終わりか・・・」という感想に落ち着く。
おそらく原作未読組の皆さんの多くも同じ感想だろう。
これはここまで述べたように登場人物やルディの心情を丁寧に
描写できているからこそ生まれる視聴感だ。

今後もこの調子でお願いします!

☆☆☆☆☆

{/netabare}

3話感想
{netabare}
シルフィ回である。またしても神回である。
何なのだ。オレを殺す気なのか。

前回、ロキシー神のおかげで前世のトラウマを一部克服し、外の世界へ
一歩を踏み出したルディ。3話では幻想的なOPテーマに乗せて
美しい風景描写が描かれた(作画バケモノレベル)。
ルディ目線で広がった世界の美しさが表現されている。
もうね、こういうところが感情移入ポイントなんすよホントに。

プラプラしているとイジメっこに遭遇するルディ。
補足すると、原作では前世のイジメの切っ掛けは「学食で並んでいる
列に横入りしたヤンキーを注意した」ことである。
たったそれだけで全裸に剥かれて校門に磔けられるとかどんだけ
世紀末な高校なのだろうか。きっとやんくみがいるに違いない。

幼いながらも高レベルの魔術を取得しているルディから見れば
そこら辺のイジメっこなどスライムレベルな筈なのだが、
相手の目を見て注意できないルディの描写で
「ヤンキー=こわい」というトラウマはまだまだ残っているんだな、
というルディの心情が伝わってくるシーンだ。

そして
「ショタコンのお姉さんがいたらジュンってなるに違いない」
「ショタコンのお兄さんがいたらズクン!ってなるに違いない」
「エリナリーゼさんの有害図書!」(そのうち出てくるのでお楽しみに)
これらはルーデウス名言集にも載っています(たぶん)が、
杉田の演技が最高すぎる。彼はおそらくこれらのセリフを言うために
キャスティングされたに違いない。

また今回はパウロの父親視点のルーデウスとの関係性も描かれている。
無職転生の最大のテーマは「家族」なので、他の異世界作品と違い
父親の心情描写があることで作品のテーマ性が強調される大事なシーンだ。
シルフィ回であるはずなのにシルフィ以外にもこんなに見どころが
あるなんて贅沢な構成である。

そして肝心のシルフィ。原作のイメージだともう少しボーイッシュな
キャラデザかと思ったが、これを性別間違えるとかどうかしてるぜルディ。
ブラックラストをホワイティキャノンしてペーパーハンケチ―フに
ミートしているヤツはこれだからいけない。

アニメになったことで改めて気づかされたが、このエピソードは
愛らしいシルフィを紹介しつつ、実はシルフィとの関係修復を通して
パウロとの親子の距離が縮まる話なんだな、ということだ。
このあたりも作品のテーマ性がきちんと捉えられている。

またしても30分があっという間に終わってしまった。
原作を知り尽くしているのに、こんなにも次回が楽しみなのは
初めてかもしれない。

☆☆☆☆☆

{/netabare}

4話感想
{netabare}
今週も始まった杉田劇場。

本エピソードの目玉は、序盤の重要シーンである家族会議。
ゼニスの第2子懐妊とともに発覚するメイド・リーリャの妊娠。
やらかしたヤツはひとりしかいない。真実はいつもひとつ。

これまでアニメではあまりリーリャの心情は語られていなかった。
ルディに対して唯一「あかの他人」であるリーリャはおそらく
最も視聴者に近い存在だ。パンツを握りしめて二チャッと笑いながら
自分の胸を凝視してくる赤ん坊など客観的に見れば寒気が走るほどの
不気味な存在である。
これまでのルディの成長過程で、原作ではそんなルディに度々戦慄していた
リーリャであったが、「ご神体(ロキパン)」の存在に気付きながらも
黙認してくれたリーリャに恩を感じ、リーリャ親子が不幸にならぬよう
落としどころに導いたルディに、生涯をかけて恩を返そうと誓う。
原作を知る身からすれば、このリーリャも当然ただの脇モブではない。
これまで少し描写の薄かった彼女がきちんと視聴者に認知された
本エピソードにはひと安心だ。

また、今回「剣術」についての設定説明もサラリと為されたのも
見逃せない。「剣術」と「魔術」は本作のバトル方面の主軸を担う要素。
覚えておいて損はないので勝手に補足しておきます。
・剣術も魔術も以下のようなランク分け
 初級⇒中級⇒上級⇒聖級⇒王級⇒帝級⇒神級
・神級魔術は地形変えるレベル。使えるヤツはまずいない
・戦争になるとひとりの聖級魔術師でも何百人相当の戦力。
 王級魔術師とか一生お目にかかれないレベルで貴重。
・剣術には剣神流、水神流、北神流がある。
 神級は各流派の頂点。ひとりしかなれない。
・一般的な城塞騎士で中級レベル。ひとつの流派で上級取得でも
 かなりの才能。3つの流派で上級をおさめるパウロは実は
 けっこうすごいヤツ
などなど

さて、物語は徐々に成長に行き詰まりを感じ始めるルディ。
聖級以上の魔術など資料もなければ使える人も貴重なので
学びようがないのである。
これ以上村(ブエナ村といいいます)にいてもなぁ・・・と
徐々に村の外に目を向け始める。
そんなルディに「行かないれぇぇぇぇぇ」と泣きつくシルフィ。
それも当然。シルフィにとってルディはイジメられる毎日から
颯爽と救い出してくれた王子様そのもの、完全な依存対象なのだ。
このあたり、端折られているがパウロはそんな2人を見ていて
「このままではシルフィはダメになってしまう」と客観的な
危惧を見せている。ギレーヌを召喚して2人を引き離したのには
こういった事情もあるのである。

そして今回、唯一そして大変残念なのは、ギレーヌ登場の件である。
原作ではこうだ↓

〇ルディ、仕事の斡旋をパウロに頼む
〇ある日突然、修行中にパウロにボコられる(ここはアニメ通り)
〇気づいたら見知らぬ馬車の中、目の前には屈強な獣人(ギレーヌ)

という流れである。

私はweb版原作組なので文庫版ではもしかしたらアニメ通りに
改変されているのだろうかとも思うが、ギレーヌを事前登場させて
しまったのは勿体なかった気がする。
原作通りいきなりボコられて馬車で拉致られた方が
「物語が動き出した感」がより強調出来た気がするのだが・・・

個人的には、馬車の中のシーンは原作でもかなり名シーンなので
次回絶対やってほしい・・・やるよね?

☆☆☆☆

{/netabare}

5話感想
{netabare}
家庭教師編突入の5話。主にエリスとギレーヌの紹介回。

個人的には今週はかなりカット多めできたな、という印象だ。
原作ではエリス登場からガチ誘拐→ロア帰宅までの間にエリスと
もうひと悶着以上あるのだが、このあたりやはりカットの仕方は上手い。
説明不足にはなっていないと思う。

一応補足しておくと、原作ではエリスはここまで物分かりが良くない。
まさに「嫌いな勉強をなぜやらないといけないのか分からない子供」である。
そんなエリスに隣町からロアの街までの小旅行を経験させることで、
学習の大切さを理解させることが今回の自演誘拐の目的である。
原作では
・算術ができないと現在の所持金と宿泊費や馬車の運賃も比較できないよ?
・読み書きができないと行き先も分からないよ?
と、ことあるごとにルディが事例を挙げて諭していくのだが、
原作でもこの誘拐事件後にいきなりエリスが「はいわかりました」と
納得するわけではないので、今後の授業シーンでエリスが理性を獲得していく
描写を入れてくれるとありがたい。

というわけで、原作に思い入れがある身としてはもっと深堀してほしかった
シーンも多いのだが、そこは好みの問題かもしれない。
少なくとも、最低限必要な描写は拾えていると言っていい。

そしてやはり今回最も特筆すべきシーンは戦闘シーンだろう。
剣と魔法の世界と知りつつ、ここまでルディが経験した戦闘といえば
木剣を用いたパウロとの模擬戦程度。
ゲームではない、本物の命のやりとりに青ざめ茫然自失する演出が
実にリアルで、ルディの感じた恐怖や緊張感がこっちにも伝わってくる。

何より、ギレーヌが放つ剣神流奥義・「光の太刀」の演出が凄い。
原作の設定としては、
○この世界の剣士は魔力を闘気として身に纏い、
 身体能力をブーストしている(ルディはできない)
○剣神流は最も合理的に最速で剣を振ることで常に先手を取る流派
○上記2点を極めた剣神流の剣士のみがこの光速を超える防御不能の必殺剣、
 「光の太刀」を会得し、「剣聖」ランクと認められる
 (ギレーヌはもう1こ上の「剣王」)
原作でも度々登場するこの奥義、どのように描かれるのか楽しみだったが、
めっちゃカッコいいっす・・・最高に中二心をくすぐられる。
霹靂一閃レベルで作画が凄い。

さて、いよいよ来週からはロアの街を舞台に家庭教師編本格スタートなわけだが、
原作でも序盤では最も文字数が割かれるパート。
エリスやギレーヌはもちろん、パウロのバックグラウンドなんかも
深堀されるはずなのでできればカットもほどほどにのんびりやって欲しいなぁ・・・
(こういう感想が出てくる事自体贅沢)

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎

{/netabare}

投稿 : 2021/02/09
閲覧 : 556
サンキュー:

12

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