きつねりす さんの感想・評価
4.5
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
『9話』を見るためにこのアニメはある
世界を取り戻すという野望によって人を排除していく『悪魔』と、その異端な存在を恐れ暴徒化していく『人間』という構図、そしてその悪魔と人間の間をとった『デビルマン』に変えられてしまった主人公・不動 明の葛藤を描いた名作。いや重い。とにかく重い。
近年はニコニコでネタと化しているデビルマンは、「キャラクターの外観は同じだけど、設定を始め中身が全くの別物」と知ったのはこの作品を見始めてから。そりゃこの『crybaby』を子供が見たら絶望するわ…という救いの無さのオンパレード。
{netabare}優しい心の持ち主だった主人公は半ば強制的にデビルマンに変えられるし、仲間だと思っていた親友にはぞんざいに扱われるし、守っていたはずの人間に心の支えとなる存在を奪われる始末。全員死ぬとは薄々思っていたものの、よりによって1番死んでほしくない時に死んでいく登場人物たち…
悪魔になってしまったとはいえ、子が親を殺す、逆に親が子を殺すというシーンを両方描いているところには『とことんまで描いてやる』という原作・永井豪の執念のようなものを感じました。
それだけ酷に描かれた分、ヒロイン・美樹の訴えに立ち上がる人々の勇気、明の体を張った説得に目を覚ます群衆という"救い"は心に染みました。(ただここでも美樹の言葉は大衆の胸糞悪い意見に淘汰されるし、この救いも結局は無に帰すというのがなんとも無常…)
そしてつまるところ、悪魔にも感情があったという結末ながら、それすらも粛清されてしまうという幕引き。ある意味悪は死んだとはいえ、本当に何も無い『0』になってしまったというラストに、見ているこっちは唖然…という感じ。ただ、これ以外にこの刺激的な作品を畳む方法は無かっただろうな…というところで納得のいく作品でした。 {/netabare}
このデビルマンという作品のパワーと、湯浅監督・そしてその製作チームが交わったことで芸術ともいえる領域に達していることも凄いですが、その環境を作ったNetflixという場があればこそ生まれた作品とも言えるので、純粋にこの時代に生きていたことをラッキーと思いたい。そして普段は見ないジャンルなだけに、知り合えたきっかけを作ってくれた友人に感謝。2度と見たくないけど、人には薦めたいアニメになりました(迷惑極まりない)。