蒼い✨️ さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
人情劇。
【概要】
アニメーション制作:マッドハウス
2003年11月8日に公開されたオリジナル劇場アニメ。
監督は、今敏。
【あらすじ】
少年少女が『きよしこの夜』を歌う教会。
歌に続いての牧師様の話を聞くホームレスの集団がいた。
彼らの目的は当然、提供される温かい食事だった。
配食に並ぶ中に居たのが、髭面のホームレスのギンと、オカマのホームレスのハナ。
そして、家出少女のホームレスのミユキを加えた3人は、
新宿の公園をねぐらにして、仲良く喧嘩する仲間だった。
ハナの提案でミユキへのクリスマスプレゼントをゴミ捨て場に拾いに行った3人だったが、
ゴミの中から新生児の赤ちゃんを拾ってしまった。女に生まれたかったオカマのハナは、
母親気分を味わおうと赤ちゃんに「きよしこの夜」から「清子」と名付けた。
ギンは、赤ちゃんを預かるのは一晩だけで翌日になったら警察に届けに行くことを、
ハナに言いくるめたが、翌日にハナは赤ちゃんを連れて姿を消していた。
雪上の足跡をたどり、すぐに見つかったハナと話すと、
赤ちゃんを親元に連れて行って『なんで子供を捨てたの?』
と聞きに行きたかったとのこと。
手がかりを頼りに3人は清子の実の親を探しに出かけるが、
遠出の先々で数々のトラブルが起きるのだった。
【感想】
今敏作品としては珍しくも幻想世界(現実と非現実のシームレス化)を用いない、
3人がお互いに会話で気持ちを伝え合いながら物語が進むという人情劇。
ところが、キャラ設定が一筋縄じゃいかない。
まだ10代のミユキは僻みで普通の生活をしている人たちに向かってビルの屋上から唾を落とすし、
若くないホームレスのギンとハナは長い路上生活で身体にガタが来てて歯が欠けています。
まあ、3人共に絵面が汚いですね。
愛情に囲まれて暖かい部屋で温かい食事と満ち足りた暮らしをしている人たちとは無縁な、
路上生活者たちの徹底的にうらぶれた日常。風呂に入らず洗ってない服で臭い汚いと言われるし、
冬の寒空の下で厚着で防寒をしているものの、屋外の冷たい空気が鼻から入って、
風邪気味でいつも鼻をすすっている、そりゃあ、こんな生活してれば、
いつ病気になって野垂れ死んでもおかしくないよね!
とホームレスの描き方にもリアリティを求める、これも日常芝居でしょう。
一見イロモノに見えながらも、今敏監督の描写のこだわりが素晴らしいですね。
そのホームレス3人組を社会の落伍者としてあざわらうわけでもなく、
クズやオカマや小娘なりに人生に色々あった結果としてホームレスになったことを見せながら、
社会からの爪弾きものとして周囲から怪訝な目で見られながらも、
図々しく生きる姿をコミカルに描いている。なぜ笑えるかというと、
赤ちゃんを拾ってからは、いろんなトラブルや病気や怪我など山あり谷ありながらも、
ご都合主義の幸運が3人に次々と舞い降りて、
ボロボロの状態から自分を見つめ直したりで人生の転機の芽生えとなっていく。
ジャンルにもよりますが、ビターエンドやバッドエンドでなければ、
アニメとは話を盛り上げる演出があったり気持ちの良い嘘を見せるものであって、
そこをリアリティがないだの、ご都合主義だの否定的な人もおりますが、
なんでもかんでもリアルであれば良いというも間違いで、きちんと意味があって、
フィクションの物語の中でぐらい偶然による幸せがあっても良いじゃないか?
と作為的な「救済」の物語。
3人が遭遇した「奇跡」の数々こそ、神様がくれたクリスマスプレゼント。
人間は幸せになるために生まれてきたんだよ、ろくでなしでもイヤなことあっても、
頑張って生きていればそのうち良いこともある。
展開が出来過ぎなおとぎ話といえばそうですが、一見イロモノで見た目も汚いながらも、
ハッピーな気持ちを届けてくれて微笑ましくなるコメディとして、
個人的には面白いなとは思いました。
そうそう!
ホームレス3人組の声優が、江守徹や梅垣義明と岡本綾と俳優・コメディアン・女優なのですが、
それぞれよく合っていたと思います。タレントの声優期用には基本的には反対なのですが、
このような使い方なら大歓迎ですね。特に梅垣義明はオカマ芸で長年やってるだけあって、
人情派のでかいオカマの役が似合いすぎてて笑ってしまいました。
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。