101匹足利尊氏 さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
コンゲームに人情が入る余地を確保した詐欺師キャラクターアニメ
【物語 4.0点】
視聴者も含めて完膚なきまでに騙し切るより、明るいエンタメ性を重視。
コンフィデンスマン(信用詐欺師)の首魁・ローランの描く“図面”は常にユルユルw
人情故のワガママにも柔軟対応。
そのためか、詐欺の“台本”は、相手を上回るスケールの物語で覆い被さり、
脱線を封じて破綻を防ぐパターンに定型化。
事態打開策も{netabare}死んだふり{/netabare}に頼りがちで、仲間からもまたかいwとツッコまれる始末w
なので、最初に手口を知れば後は大体読めます。
これが重要になるよ!との伏線強調も明快ですし。
ゆったりとした枠組みの中で駒ではない人間であることを許された
登場人物たちの過去の人生と決着が、複数話完結のCASEごとに掘り下げられる。
この一見グダグダなプランは、ヘイトを集めない、ローラン流の処世術でもあるでしょうか。
彼が若い頃、{netabare}イカサマ麻雀で一人勝ちした後、恨みを買いボコられる{/netabare}シーンは、
ヘイト回避の教訓を得た彼の原点のように思えます。
特にCASE4はローランによるヘイト一掃回にも映ります。
{netabare}過去に騙した方々にもアフターケアする入念さw{/netabare}
クライマックスの“茶番”に至っては、
演技を通じて、仲間の本音を出させるガス抜きでもあり、
ユルい脚本や、詐欺師風情が勧善懲悪を標榜すること等に対する、
視聴者からのヘイトをもキャラに代弁させ緩和しているとも取れます。
ヤラれた!と詐術に興奮したい方にとっては不満が残る内容でしょうが、
気軽にキャラクターを楽しむ分には満足できるでしょうか。
因みに私は、一回観ただけでは状況把握できない、
ガチのコンゲームだったらどうしよう等と狼狽えていたので、
肩の力を抜いて行けると分かり、ホッとしましたw
【作画 4.5点】
アニメーション制作・WIT STUDIO
背景美術は昼間のグリーン、夜間のパープルを強調したポップな作風。
Googleマップ等にアクセスすれば、瞬時に世界中の名所を“観光”できる。
憧れの場所に“連れて行って”くれる映像作品の意義が後退する中、
アニメでしか表現できない景色が追求される。
実写と違いアニメなら撮影に行かずとも、
各地を飛び回れる利点を生かした映像展開はゴージャス。
スタッフもシンガポールの“飛行コース”等、要所はロケしたが、
後はGoogle先生でフォローしたそうでw
ロスの夜景等は“実物”(の画像w)とは違った味がありました。
私が妙に印象に残っているのは、数秒だけ映ったNYのJFK空港・発着場。
人物作画では貞本 義行氏デザインのキャラが躍動。
実写寄りに整えた顔立ちが崩れるシーンも巧く表現できており、作品にリズムを生み出す。
転がされて叫ぶエダマメとかw{netabare}ラリったアビーの怪演{/netabare}とかw
あと、本作はカプセルトイを世界に広めるクールジャパンアニメですw
【キャラ 4.5点】
各CASEで順次、クローズアップされる詐欺師たち。
信用詐欺の世界で才能を生かし輝いているが、どこか歪で、
堅気の人間として生きていれば……との悔恨が混じるビターな風味。
私は特にCASE3のまだピュアだった頃のシンシア姐さんが可愛くて切なくて、萌えますw
標的となる悪役たちも外面は厳ついが、
懐に潜り込むと、人情で荒唐無稽な“台本”をねじ込める
脆い部分もある人間味重視。
脚本の古沢 良太氏は、数年に亘る執筆中に、
フェイクでも信じたい物が真実になる世界情勢も視野に入れていたとのこと。
ローランのプランもそこを突いており、
万人を騙せる既製品ではなく、ターゲットだけを騙せる特注品を練り上げて来る。
【声優 4.5点】
ローラン役の諏訪部 順一さん。高音か低音か、本音か嘘か。
掴み所の無い声質が、無謀な台本を可能にする。
翻弄される主役・枝村 真人(エダマメ)役に小林 千晃さん。
{netabare}英語での会話シーンを、「~だべ」と方言風の訛りで表現したのは笑撃w
折角、世界を飛び回るシナリオでも現地語じゃないと風情が……
という天邪鬼など、どっか飛んじまったべw{/netabare}
小林さんと、アビー役の藤原 夏海さんが比較的若手で、
諏訪部さんや、シンシア役の園崎 未恵さんらはベテランの域に入った
チームバランスの取れた主要声優陣。
彼らの協力者たちにはCV.くじらさん等。
ターゲットとその周辺にはCV.斧アツシさん等。
随所にいぶし銀が光る挑みがいのあるキャスト陣。
揉まれた若手二人は、今後、遭遇したら嬉しくなると思います。
【音楽 4.5点】
劇伴担当は、やまだ豊氏。OPテーマでもある「G.P.」等、
痛快なジャズを基本に、クラブ風やYVYのボーカル曲も交え、
視聴者を気持ち良く振り回す。
ED主題歌はフレディ・マーキュリー氏の「The Great Pretender」(1987)
猫たちが陽気に合唱する明るい曲かと思いきや、
HPで歌詞対訳見るとメッチャ哀しいです。
騙せる男は企みも見抜かれないが、本心にも気付いてもらえない。
彼は何時だって孤独なのさ……。