ヒロト さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
「届かない場所がまだ遠くにある 願いだけ秘めて見つめてるー」
ありきたりな学園アニメに飽き飽きしていた私を虜にしてくれた傑作です。具体的な感想は他の方々がコメントしてくださった内容と大体同じなので割愛させていただきますが、1話で最初に国崎往人と神尾観鈴が出会ってから家にたどり着くまでに2人が交わした会話の内容が10話以降につながっています。見事な伏線回収です。
さて脚本家である麻枝准さんは“翼”に対してどのような想いを抱いていたのでしょうか。4話の白穂、5・6話のみちる、8・9話の翼人のエピソードを見る限り翼は誰かを不幸にしてしまう忌み嫌われる存在だと思ってました。しかし最終話の最後に神尾晴子が「人の思いとか全部、空に返してや!」と言ったのを見ると、翼は誰かを呪うという従来の考えは払拭され、翼は“傷つきながらも夢を運んでくれる希望の存在なのだ”と確信しました。
メロディ・歌詞ともに常軌を逸した主題歌「鳥の詩」ですが、1番のAメロ
「届かない場所がまだ遠くにある 願いだけ秘めて見つめてる」
という歌詞にAIRという作品の世界観が詰まっているように感じました。この歌がネット上で「国唄(国崎往人の唄)」と称されている以上、この部分も観鈴のことだと考えた人も多いでしょうが、ここは観鈴以外の登場人物の立場からも解釈できるはずです。
①霧島佳乃視点:「届かない場所」=亡き母がいる大空 「願い」=ありがとうと伝えること
②遠野美凪視点:「届かない場所」=母親のもと 「願い」=自分をみちるではなく、美凪として扱ってくれること
③神奈備命視点:「届かない場所」=母親&海(神奈自身は結局海には行けなかった) 「願い」=翼人の呪縛から解放されること
④神尾観鈴視点:「届かない場所」=空にいるもうひとりの自分&海 「願い」=幸せに最期を迎えること
⑤国崎往人視点:「届かない場所」=空にいると言われている、翼の生えた少女 「願い」=彼女の呪いを法術で解いてあげること
あくまでも私個人の解釈ではありましたが、「鳥の詩」がストーリーを凝縮させた歌詞になっていることが分かると思います。最後に、字数の関係上問いかけで終わる形にはなってしまいますが、「鳥の詩」冒頭の“消える飛行機雲 僕たちは見送った”の「飛行機雲」「僕たち」は誰のことなのかについても、いろんな解釈ができると思うので、考察してみても面白いと思います。