音フェチ さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
血と汗、硝煙と油の臭いに塗れたロボットアニメ
極めてドライな語り口で、新しくも古臭い戦争に関わっていく人々を描いたアニメ。
本作のロボット「エグゾフレーム」の取り得は歩兵のような器用さと、なによりも安さ。
故に殆どの機体は使い捨て。機械と人との絆だとかは存在しない。
果たしてこの技術を得て地球の社会はどうなっていくのだろうか。
という作品。
時系列が意図的にシャッフルされている上に、一話あたり13分と短いので終盤までは何を目的にこのアニメを作ろうとしているのかがわかりづらく、キャラクターに感情移入もしにくいので「なんかクソッタレなロボットがドンパチやってるアニメ」という印象を持たれがちだと思います。
また、BGMのテンションも半端で、聴いた瞬間にどういうシーンか判るものは少ないです。OPテーマもキャッチー性に乏しく、イマイチ記憶に残りづらいです。
しかし特に後半は一気に外連味に溢れた話が増え、ラスト3話はそれぞれ別のベクトルで興味を引かれるシナリオでした。
個人的に、虚淵玄という作家は、既存の作品の良いところを引っ張ってきて、自分の皿に綺麗に飾り付けてしまうタイプの作家だと思っているのですが、明確にボトムズを意識したOBSOLETEもやはり類に漏れなかった印象です。
ではどこが面白いかというと象徴的なのは10話。
密入国者がコカインを密輸の為に背負ってアメリカに向かって歩く。というただそれだけの凡庸な筋書き。
それがキャラクターのウィットに富んだ台詞回しのお蔭でクールに仕上がっています。
入念に世界観の説明に終始していたシナリオが、一気に花開いた瞬間だと思います。
ビターながら希望を感じさせるラストシーンも印象的。
この作品は計12話を掛けてようやく「始まった」のだと思います。
全体としては「惜しい」作品ではあるものの、終盤に掛けて尻上がりに面白くなるので見届けてほしいです。
通常アニメ半クール分の長さしかありませんし。
広げた風呂敷を畳むことにかけては安定している虚淵玄(アニゴジだって、過程や賛否はさておきラストはきちんと畳みました)
アニメオタクを名乗るなら、たまにはこういう作品も観て良いんじゃないでしょうか。
しかし、つくづく音の作りが日本向けでないのが悔やまれます。
12話の演出を鑑みるに意図的な調整ではあるのでしょうが、娯楽作品において「解りやすい演出」はとても大事です。
硬派なのは良いですが、何もかもをドライで統一してしまうと味気なくなります。ただでさえ一話辺りが短いんですから、もっと詰め込んでも視聴者は着いてこられると思います(事実、鋼屋ジンが執筆した本作の12話はアニメのお約束を逆手にとってわかりやすく詰め込んでいます)。
これからに期待したいです。