a さんの感想・評価
2.2
物語 : 1.0
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 2.0
キャラ : 1.0
状態:----
作画と雰囲気は良いです
作画は評価できます。
バトルシーンはアングルから色彩まで素晴らしかったです。ただし近年の技術進歩により、スピード感のあるバトル演出そのものが飽和してきていますし、目新しい表現が取り入れられていた訳でもなかった印象です。
問題はストーリーにあります。特に原作のシナリオ構成とキャラ立てにかなり難があります。したがって、以下に指摘することの多くがアニメ制作サイドとは無関係な事項です。
・主人公の動機付けが弱い
身体能力と正しい死への拘り、何が関係あるんでしょう。祖父は虎杖の半生にどんな影響を与えた人物なんでしょう。主人公がなぜ戦うのか、なぜ物語のカメラが彼に焦点を合わせなければならないのか、今いちピンと来なかったです。
ちなみに、他作品で似たような感覚を覚えたものは「炎炎ノ消防隊」ですね。あれも主人公がヒーローになりたがる動機の説明が弱い作品です。貶す意図はありませんが、呪術廻戦と炎炎ノ消防隊のファン層はマージしている印象があります。
・戦いに緊迫感がない
過去のコメ欄にあるように、ダメージ判定の基準が不明瞭でバトルの解釈がしづらいです。一般人や建造物へのダメージと能力者へのダメージ、違いすぎませんか。領域展開という必殺技も、必中と言いつつなかなかそれ単体では勝負がつかず、メリハリがありません。
また能力開示によるメリット享受(HUNTER×HUNTERの念能力っぽい設定ですね)に関しても釈然としませんでした。初見殺しの能力が多く登場したためですね。能力開示のメリットをもっと分かりやすく描写してくれればマシだったと思います。
全体的に、たとえばジョジョシリーズのように「発動条件の厳しい必殺技を決めるための駆け引き」を描くとかであれば、もう少しスリルのある戦いになったのでしょう。
・センスが女性ファン寄り
これは欠点とは言えません。マーケティングの観点から女性ファンの獲得が有効なのでしょうし、少年誌の存在様式も変わってきています。
だからダメ出しではないんです。ただ気になりました。五条悟のセクシーな描かれ方やEDの雰囲気から醸し出される男性キャラ萌えの空気感。これに関しては原作漫画よりアニメで露骨になっていて、ハッキリとしたセールスの意図を感じました。もちろんSNS方面でしっかり話題となり、セールスは短期的には成功だったと言えます。でも長期的にはどうなのでしょうか。私にはコンテンツの質の担保より、刹那的な話題提供を選んだように映りました。
また、ギャグセンスに関してはかなり厳しかったというか…キャラへの萌えを前提とした上で寒い掛け合いを入れる、というパターンが目立っていた気がします。私は男性であり、男性キャラにほっこりする情緒は持ち合わせていないため、コメディシーンでは眉間にしわが寄りっぱなしでした。
この項目に関しては私の偏見が多く含まれるであろうことは念のため触れておきます。
総括すると、作画は素晴らしくバトルアニメとしての最低限の見所は押さえてあります。おしゃれな雰囲気も伴い、話題提供という点では同クールの他作品を抑える実績を挙げています。
しかしその実は心情描写、伏線回収、キャラとストーリーのシナジーに乏しい中身のない物語となってしまっています。それらの多くが原作の構成に起因していますが、一部はアニメ制作の際に生じています。
原作に問題があるのはもうアニメ制作時にはどうしようもないのですが…今後MAPPAにはチェンソーマンの制作を担当する予定があります。その際には雰囲気だけをやたらと良くすることを考えず、アニメ表現と向き合って欲しいと感じました。今回が悪かったという訳ではないですが。