元アニメーターのオジ さんの感想・評価
2.0
物語 : 2.0
作画 : 2.0
声優 : 2.0
音楽 : 2.0
キャラ : 2.0
状態:観終わった
脚本の練り込み不足取材不足のまま作った感…
元アニメーターとしては、まずは作画について語るべきなのだろうが作画云々の前に脚本の練り込み不足感が気になって仕方がない。
ヒロインの《全知》の力を描きたかったのだろうが上滑りなエピソードを並べるばかりで無駄に話数を重ねている感が拭えない。
これならば1話の突然の降雨を言い当てた様なエピソードを重ねた方がヒロインの特異性を表現出来たのでは無かろうか?
また、ロゴス症候群による身体の不具合を量子コンピュータで補うというアイディア自体特に目新しい物では無いし、それを狙うIT企業のCEOが明らかに犯罪と判るハッキングを《天才少年ハッカー》という手垢にまみれたキャラに命じ、おそらくは顧客であろう謎のお偉方に報告の上、《未成年者誘拐及び傷害》の片棒を担ぐという謎展開。
ヒロインの祖父が件のIT企業からスポンサードされていたのならまだ判るが、その様な伏線も無いために余りにも唐突な印象。
更に、ヒロインの祖父が量子コンピュータによる治療を施す前は医者の実父でさえ匙を投げる程意思の疎通が出来なかった重度のロゴス症候群患者だったはずなのに、量子コンピュータを除去されたヒロインはある程度意思の疎通が出来る中度の患者として描かれている点も不自然だ。
そして自分にとって決定的に違和感を感じたのが、血縁者でも保護者ない未成年者の主人公がヒロインを施設から連れ出したという描写である。
自分には出生時の医療過誤で脳に障害を負った従妹がいる。
従妹も作品中の様な施設に入所しているが、ただ外出するだけでも成人した家族もしくは委任状を持った身元がはっきりした成人以外は施設の外に連れ出す事は出来ない。
未成年、しかも身分詐称した主人公がやはり未成年者のヒロインを施設から引き取るなど余りにも非現実過ぎる。
この作品の評価が芳しく無い理由はこれらの煮詰めの甘さに起因しているのだろう。
最後となるが、元アニメーターとして作画について少し触れる。
OPと第1話はなかなか素晴らしい出来映えだ。
しかし残念ながら話数を重ねる毎にレイアウト、タイムシートを含め作画のレベルが緩やかな右肩下がりとなってしまっている。
終盤になって作画自体やや持ち直したが、残念ながら第1話のレベルまでには至っていない。
レイアウトは最後まで右肩下がりのままだ。
これはおそらくコロナ禍の影響でスケジュール管理に無理が生じたのかも知れない。
OPと第1話だけなら☆5をつけても良いがその後のレベルの下がり具合を考えると☆3というところだろう。
脚本は煮詰めの甘さが最後まで鼻につくので☆1。
総じて☆2と評したい。