遊微々 さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
恐らくは忘れられるであろう、名も無き英雄の物語
タイトルは聞き及んでいた作品。
なろう系の異世界ファンタジー作品かと思いきや、驚くくらい正当なダークファンタジー。昨今の異世界モノが好きって人には中々受け入れづらい内容なんじゃないでしょうかこれ?
特に1話の凄惨なシーンで視聴を断念したという声もチラホラ聞いております。こういう時、つくづく自分がこういった描写に耐性がある、というよりも歪んだ性癖持ち合わせていたことに安堵しますね。正直こんな程度で躓いてたら黄金時代編とか見れねえじゃん!って思います。あれだけのダークファンタジーは中々お目にかかれないのに、実に勿体ない。
とにかく中々にリアリティのある内容でしたね。勇者が強大な敵を屠って人々を救うというよりも、職人がたんたんと害虫駆除に専念するような絵面的には地味な内容です。しかしそこが他の作品と一線を画してますね。
富や名声、人々の不安を取り除くために強大な敵には果敢に挑もうとする冒険者たち。それに比べて大した自慢にもならないからと見過ごされがちなゴブリンの討伐。確かに国を滅ぼしかねないような力を持った敵に比べれば、せいぜい村一つを襲うのがやっとなゴブリンの被害は、恐らくあの世界ではそう珍しくもないのでしょう。よくあることとして処理されてますが、当事者にとってみればドラゴンに襲われて命を落とそうがゴブリンに襲われて命を落とそうが、それは同じことなんですよね。現実世界に無理矢理当てはめるとすれば、前者が凶悪犯による殺人、後者が交通事故といったところ。人々の関心がより強いのは前者かもしれませんが、失われた命の重さは同じなんです。
主人公のゴブリンスレイヤーは、そんな見過ごされがちな人々にとっての希望なんですよね。彼自身は決して強い人間ではないものの、何度も何度も戦い、傷つき、それでも歩みを止めない覚悟を持っています。周囲から白い目を向けられようとも、弱音を吐かずに戦う彼の姿、それを理解しているからこそ神官や受付嬢も彼に対して協力してくれるんですよね。
歴史の影に埋まっているかもしれない一人の英雄の姿を切実に描いたストーリー、良かったと思います。
個人的には序盤で子供のゴブリンすら容赦なく殺害する様子に目を背けていた神官ちゃんが、最後は敵の甘言に惑わされることなく術を保ち続けた精神面での成長が好きでした。