HAKU さんの感想・評価
4.8
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
新年1発目はこれって決めていた!
スタジオコロリドの新作映画で、舞台が常滑市、主題歌をヨルシカが担当・・・こりゃ観るっきゃない!って思っていた作品です。
{netabare}
スタジオコロリドさんと言えば、ペンギンハイウェイが頭に浮かぶと思います。
あの映画でも、映像美だとか、声優さんの演技のすばらしさとか、原作の謎感(?)をしっかりと落とし込んでいる辺りとか・・・とても好印象でした。
それに、愛知出身の自分にとって、身近な常滑が舞台ってのも嬉しかったです。
こりゃあ、観終わったら聖地巡礼だ!って観る前から息巻いていたものです。(笑)
さらに、主題歌はヨルシカさん!基本アニソンばかりしか好きにならない自分が、気が付いたら好きになっていた人たちです。
youtubeで広告に出てきたことが始まりだったと思いますが、いつもはスキップするはずが、つい最後まで聴いてしまったんだと思います。
自分でも珍しいなと思っていますが、他の曲もどんどん聴いてCDも全部買ってしょっちゅう聴いているくらい好きでした。
これだけ揃っているのに、さらに声優陣がなかなか豪華!
その中でも目を引いたのは志田未来さんです。
アリエッティの名演が心に残っていて、今回はどんな声を、演技を披露してくれるんだろうとわくわくしていました。
こんな期待だらけの泣き猫・・・コロナのせいで劇場公開が一時白紙になり、ネトフリの独占配信が決定しました。
でも、そう決断した理由がまた粋で・・・。
コロナで混迷を極めている世界に、エンターテイメントが必要だから、劇場公開ではなく、自宅でも気軽に観ることができるネット配信にするというのです。
でも、きっと劇場公開するだろう、ネトフリ配信ならいつでも大丈夫だから待っていようと決めました。
次第に、舞台である常滑を皮切りに劇場公開が始まりました。
(ちなみに、常滑では地元の方を対象に特別上映会が組まれるという粋な計らいが・・・!でも、コロナのせいでそれも中止に・・・僕は常滑在住とかではないから関係ないんですけどね(笑)製作者側の、世界に少しでも貢献できたらとか、舞台となった人たちに少しでも魅せてあげたいとかいう心意気がとても素敵ですよね。)
ほらきたぞ、待ってました!やっぱり本作は劇場で観たい!と思っていたのでネトフリの契約は後回しにしていて、仕事も落ち着いてきた頃によし観るぞって思ったら、愛知での上映は終了・・・
流石にこの時は自分を呪いましたね・・・何やってんだ!って・・・
ここまできたら、何か特別な日に観ることにでもしなきゃ収まりがつかないぜ!ってことで、元日に観ることを決めていたのでした。
{/netabare}
↑ネタバレではありませんが、今日観ようって思ったわけがだらだらと綴られています。ちょっと長いので畳んでおきます。(笑)
PVは何度も何度も観ていたので、きっと主人公の女の子がネコになっちゃって、ネコの自分なら好きな男の子にもこれだけ近づけて・・・このままネコでもいいか、いやよくない!でも戻れない!みたいな物語なんだろうなぁって思っていました。
しかし、序盤で主人公の美代(通称ムゲ)が日之出に対して猛アタックしているのを見て、おやおや?自分の思っていたのとは違うようだぞと思い、気軽にネコになり、気軽に人間に戻る様子も見て、こりゃあ全然予想と違ったなぁとなったものです。
この破天荒?な性格の主人公を好きになれずにつまらないって思ってしまう人もいるかもなぁって思いました。もう少しマイルドにしてもよかったかもってね。
あだ名であるムゲは無限大謎人間という意味。
それはきっと、周りとは一線引いているけど、周りから嫌われたくないという優しいけれど不器用な美代だからこその奇怪な行動がそうさせたのではないかと思います。
その背景には、親の離婚・再婚もあると思います。
きっと、産みの親のことは好きなんだと思います。
幼少期にリビングにあった絵本、全部美代の部屋にありましたしね。
お母さんの作った煮物、大好きだったからこそ、義母の煮物には手をつけないんだと思います。
義母に対しては、表面上は上手くやっているていだけれど、お母さんとは呼ばず薫さんと呼ぶし、大事なことは言わないし、敬語だし・・・
多分、自分の家なのに自分の居場所がないと感じていたのではないでしょうか。
小学生の時、親の離婚のことでいじめられてしまった美代。
そこで仲の良かった頼子もいじめっ子に利用されてしまって・・・気持ちが爆発した美代に、必死で謝る頼子がとても健気でいい子だなぁと思いました。
だからこそ、周りをどうでもいい案山子に見てしまう美代であっても、頼子のことは頼子として見ているんだなと思います。
中学生ならではの、大人な部分と子どもな部分がない交ぜになっている様子がよく表現されていると思います。
傍目から見たら元気印の変わった女の子ですが、心の中ではたくさんの悩みを抱えて、我慢して生きているのです。
そんな不安定なところを、ネコ店主に目をつけられてしまったのでしょう。
ただ、美代はネコになったことで、日之出の優しさに触れ、心惹かれたのでしょう。
そして、ネコの姿で交流を交わすことで、優しい顔や言動に触れていき、もっと好きになっていったのだと思います。
それで、ネコになった時に落ち込んでいる日之出を見て、励まそうとして手紙を書くけれど、それをからかわれる・・・あの男子たちに対してだけ凄まじい嫌悪感があります。腹立つ中学生男子って感じではありますが・・・。
きっと、その時の日之出の拒絶の言葉が人間じゃなくてもいいやというきっかけだったんだと思います。
頼子はそれを見抜いていて、校長室に呼び出された後、あいつらなんかのせいで家出しないって言ったんだと思います。
そして、日之出のせいだって言わない優しさ、日之出の好きという気持ちがあったとしたらそれを最初に聞くのは自分じゃないという律義さ、ほんといい友達ですよ。
父親は置いておくとして・・・
母も義母も、自分勝手な部分があったとしても、どちらも美代のことを愛している、愛そうとしているところは同じだということも分かります。
母の愛は分かりますが、義母の美代に対する愛は、形だけではないんだなって分かって嬉しかったです。
最後の美代の言葉から、美代もそのうちその愛を理解することができるんじゃないかなって思います。
猫島に行ってからも、わくわくするような世界観・・・だったのですが、そんな雰囲気で入っていったわけではないので、楽しめないというのが口惜しい!
なんなら、1年前(なのかな?)に美代がネコになるきっかけになったお祭りの時に、猫島に迷い込むみたいなところが観たかった!
みんないらないって思っていたけど、ここは素敵!ネコっていいかも!それでネコの仮面をもらう・・・みたいな・・・と、勝手なことを言っておりますが(笑)
とても楽しそうなところでしたが(ネコ店主の野望渦巻く辺りは不気味ですが)、ネコになった人たちのことを考えると、ちょっと複雑です。
{netabare}助けてくれたけれど、きっと2度と会うことはないと思います。
彼らがネコとなって会いに来てくれるかもしれませんが、言葉を交わすことはできません。
人間の美代は、一度はネコになってもいいと気持ちが揺らぎましたが、最後には人間として生きていきたいと思い直しました。
ネコのきなこは、一度はご主人(義母)をもっと幸せにしたいと思い人間になることを選びましたが、ネコとしてとても愛されていたことに気づき、やはりネコに戻りたいと思い直しました。
それでは、ネコになった彼らは・・・
そう思うと心のモヤモヤが消えません。{/netabare}
泣き猫は、全体を通して愛情について伝えようとしているんだと思います。
母の愛、義母の愛、恋愛感情、ペットへの愛、ご主人への愛、そして友情・・・
そんな愛が周りには溢れているんだよって伝えたいのだと思います。
だから、恋愛物に見せかけた・・・なんというんでしょう、愛情物?ハートフルストーリー?
とにかく、心が温かくなる作品であるのは確かです。
※ちらっと調べたら、 {netabare}生きにくい世の中で抑圧している自分と向き合おうっていうが話の本筋なのかな?
人間社会を生きていくのは生きにくさがあるけれど、それは外的要因ではなく、もしかしたら内的要因の方のが大きいのではないか。その内的要因(自分の抑圧=猫を被る=仮面を被る)からの脱却(抑圧からの脱却=仮面を外す)を描いているようです。大事なのは、巨大な敵を倒すことではなく、自分と向き合うこと、ということでしょうか。
だからこその、美代の悩みと日之出の夢が取り上げられていたのかなと思います。詳しくはHPで!{/netabare}
エンドロール、こういう形、最高に好きです!
声がなくてもしっかり口が動いてて、全部じゃないけど文字でセリフもあって、他の部分は観てる側が勝手に補完しちゃえるし・・・
猫島の出来事を知らない頼子が、2人のことを聞いて喜んで泣いてくれたのを見たときは、こっちももらい泣きしそうでした。頼子、最高だぜ!
こんな見せ方、いいですよねぇ。
曲も最高でした!
BGMもよかったですが、なんといってもヨルシカさんの3曲!
曲の入れ方もなかなかよかったですし、新曲の「嘘月」も鳥肌ものでした!「花に亡霊」も新曲と言えば新曲なのですが、泣き猫を観る前からもう何度も聴いていましたから新曲感が薄れてしまっています(笑)
でも、映像と合わせて聴くと、「夜行」も「花に亡霊」も新鮮な感じがしました。
最後まで観て思ったことは、やっぱり映画館で観たかった!でした。
声の演出もBGMも映画館と自宅とでは大きく違うのです。
本当に惜しいことをしました・・・!
でも、今年1番に観ることができたのはよかったです。
今年1番が泣き猫でよかった!