薄雪草 さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
障がい者、健常者。
田辺聖子さんの原作。1984年です。
1981年は「国際障害者年」でした。
その流れがあったのかもしれませんね。
当時は、「障害者年」という文言それ自体に、障がい者の生き方や社会的な認知を掘り起こす役割があったように思います。
あの頃は、主には身体障がいの方にスポットライトが当てられがちでしたが、今では、知的障がい、精神障がい、難病の方々にも自己表現の機会が創られつつあります。
昨今では、LGBTQ+の方々、HSPの方々からの日々の暮らし向きや生きづらさへの思いなどが発信されるようになってきました。
国会議員にも重度の障がいをお持ちの方が数人いらっしゃいますが、社会的な責任を自ら負い、政策に関わろうとなさる生き様には頭が下がります。
本作は「健常者」の側にいらっしゃる方に是非見ていただきたいと思います。
物語はいわゆる「あるある」な古典的なものに思われるかもしれませんが、障がい者の側からは、その「あるある」自体が「あまりない」のです。
そういう視点から見ていただけると、障がい者、健常者という文言そのものの意味合いに、少し違った印象や感覚をお持ちいただけるのではないかと思います。
社会を変えるのは人間の意志です。
当時の活きのいい「若者」も、国法によればそろそろ「高齢者」と呼ばれます。
障がい者と健常者、ジェンダー、セクシャリティー、ジェネレーション、北国と南国、地方と都市などの違いも、変化に次ぐ変化です。
その変化の入り口として、他者とのぶつかり合い、それぞれの受け止め合い、お互いの補い合いを、シンプルに「ひとの営み」として認めあう気持ちを醸成し、行動に表すことで、社会がまたひとつ変わっていくと思います。
令和3年は「国際障害者年」から40年目を迎えることになります。
あのころの恋も、今年見る恋も、変わることのない素敵な恋バナなのでしょう。
そして、ジョゼの考え方、仲間たちとの生き方を、我がことのそれとして想像できるのが本作の最大の魅力です。
是非楽しんでください、ね。
P.S
できましたら、原作と実写版にも関心を持っていただき、どうぞ触れてみてください。
本作とは異なる印象が得られると思います。