遊微々 さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
死の恐怖すら凌駕する、度し難い人間の探求心
リコとレグ、2人の少年少女が様々な出会いと別れ、苦難を乗り越え、人類最後の秘境と呼ばれる大穴「アビス」の最果てを目指す冒険ファンタジー。
元々非常に高い評価は聞き及んでいましたが、視聴するきっかけになったのは先日大関に昇進した正代関が本作を絶賛しているニュースを見かけたから。・・・もしかして力士ってエリートアニメオタクなのでは?
で、私の感想ですが、文句なく名作。
冒険ファンタジーモノとしては素晴らしい出来。特に「アビス」の設定が気に入りました。進むとあらゆる困難が待ち受けている。しかし戻ることはそれ以上に過酷な「アビスの呪い」の設定。どっちに進んでも困難が待ち受けている状況、簡単に帰路を選ぶことが出来ないからこそ生まれる緊張感、いいですね。
リコとレグの二人が得意不得意がはっきりしており、互いに足りない部分を補い合いながら道中を進んでいく様子も良かったです。
ナナチ関連の話も良かった。特に13話のミーティとの別離、似たようなシーンはいくつも見てきたはずなんですが泣いてしまいました。
さて突然ですが、みなさん冒険家の方たちにどういう印象持たれてますか?
今作で描かれている探窟家は「アビス」の中にある多くの遺物を持ち帰っているからなんか職業として成り立っているような気がしますが、実際現実にいる冒険家の多くは別に何もない秘境を目指している人々が多いですよね。
私自身は正直かつて「別に高い山登ったり密林もぐったりしたからって新しい資源やら秘宝やら持って帰るわけでもねーし、死ぬ危険性も高いし、何が楽しくてこんなことやってんだろう?冒険家って職業として破綻してね?」とか思ってました。
でもある番組で冒険家の方たちの生き様を多く見る機会がありまして、それで考えを改めさせられたんですよね。
冒険家の方たち、実は好きだから、楽しいからって理由でやってる人がそんなに多くはないってことです。半分くらいの人たちは全然楽しくないし、やってる最中は常時家に帰りたいそうです。
いやいや、最悪命かかってるんだから嫌ならやらなきゃいいじゃんん・・・、と我々のような一般の感覚だと思ってしまうのですが、冒険家の方から言わせれば理屈で説明がつくようなものではないのだとか。楽しいわけでもないし、明確な目標があるわけでもない、強いて言えば自分がなぜ冒険するのかその理由を探すためにやっているらしいです。
これ、一見バカらしいように思えますけど、自分の命を危険に晒してまでも理屈等を超えてそういう行動に駆られてしまう、実に人間らしいなと思ってしまいました。
結局何が言いたいかといいますと、今作に出てくる探窟家も、「アビス」にある遺物やら未知の生態系やら、そういったものだけが目的で潜ってるわけではないんじゃないかということです。自分にしか出来ないこと、分からないもの、それらを追い求めるからこそ、あれだけの危険に足を踏み込めるのではないか、そういった人間味溢れる度し難い衝動が感じられたからこそ、私はこの作品に魅かれたんじゃないかと考えました。