こま さんの感想・評価
4.7
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
濡れてる方が惚れている。
これは大人になりきれなかった少年の恋物語。
不安に覆われた頭を持ち上げて、帆高の瞳に映るのは暗灰色の曇天。
降水確率100%東京は本日も雨。
なぜ雨は降るのか、いつまで雨は降り続けるのか、いつ雨は止むのか、その理由を知ることもなく順応し、無関心になった人々が行き交う街。
ここにくれば何かが変わると思っていた。
無味乾燥で、平々凡々で、どうということもない、ありきたりな日々の中で、世界の中心じゃないと知った時、物語の主人公じゃないと知った時、きっと帆高はそれでも名もない歯車の一つではない誰かになりたかったのだろう。
だから東京を目指した。現実から目を背けて逃げ出した。
そんな中で出会った一人の少女――陽菜
「ねぇ、今から晴れるよ」
彼女の祈りが通じた時、チャコールグレイの空に穴が空き、光明のような一筋の光が射し込む。
きっとこの瞬間、帆高の中で物語が動き出し、世界の中心が見えたに違いない。
けれど現実は残酷で、無慈悲な選択を彼に迫る。
『晴れ』か『陽菜』か
たとえ世界中の人々を敵に回しても、たとえ世界中の人々が間違いだと指摘しても、たとえ何度同じ選択を迫られても、大人にはなりきれなかった帆高はまっすぐに答えを出すのだろう。何を犠牲にしても守りたい人を助けるために。
――3年後。
降水確率100%東京は本日も雨。
あの頃よりも少しだけ大人になった帆高と陽菜。
二人で入るには小さな傘を差し、肩を並べてその街を歩いた時、その肩が濡れているのはきっと帆高の方なのだろう。