芝生まじりの丘 さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
現代的なミステリ風SF
他者の内面世界への没入しその人間や事件のを真実を理解するという形式、黒幕や組織のあり方、真相全体の世界設定に斬新さはそこまでなく、ある種ありがちな要素の詰め合わせにも見えるが、「名探偵が夢世界で謎を解明する」というところで、必然性のない独自の様式美を作ったことにこの作品の素晴らしさはある。かえるちゃんは死んでいて、なぜかその名前がわかり、自分はなぜか名探偵であり、謎を解くためにそこにいると直感的に理解する。「イドでは現実での記憶がなく、なぜそこいるのかもわからず単に名探偵というロールを演じる」、この設定への説明を放棄し、全く必然性も理屈もないところがフィクションらしくて素晴らしい。
ジャックとその主人というすこし劇形式をメタにしたような劇があってその中で宿屋の女主人が悲劇的な復讐劇のストーリーを語る(劇なので語る横で実際にそこで悲劇が演じられる)シーンがある。主人公のジャックはその劇の最後をぶち壊して不幸な現実の結末を幸福な結末へと無理やりぬり変えてしまう。その感動的かつ馬鹿げたシーンの、観測者、作家の現実に勝る傲慢さ、エゴとも言えるものが僕は大好きだったのだが、名探偵らが"かえるちゃん"や被害者らを夢の中で不毛に無意味に救おうとする様を見るとそれを思い出してしまう。
夢世界、サイコサスペンス、理屈的じゃないミステリ、群像劇、劇中劇的な様式、と自分好みの要素詰め合わせなので当然というかわりと面白かった。欠点としてはその様式美以外の点がわりと凡庸であること。また終盤は局面が目まぐるしく展開するが忙しいばかりで内容は希薄なように見えた。{netabare}"かえるちゃんを必然を超えて救う"というところで良かれ悪しかれもう少し劇的で破壊的な結果演出を示した方が自分好み。モモチの使い方が半端で、モモチに救わせるならそれはそれで彼の過去の葛藤をもう少し伏線として描いた方がよかったのではないかな。最後のまとめ方で損をしていると思った。{/netabare}