Fanatic さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
終末の廃墟都市を旅する少女たちに、世界は何を見せるのか?
■原作:ウェブサイト『くらげバンチ』にて連載されていた、つくみず氏による漫画作品。
■制作:WHITE FOX 「Reゼロ」「慎重勇者」「ゴブスレ」「ごちうさ」「刀語」他
■監督:尾崎隆晴 「ゴブリンスレイヤー」「PERSONA5」等
■シリーズ構成:筆安一幸 「文スト」「魔女の旅々」「転スラ」「ブラッククローバー」他
■キャラデザ:戸田麻衣 「慎重勇者」「装神少女まとい」他
文明が崩壊した後の終末世界で、何層にも分かれた廃墟都市の中を、ケッテンクラートに乗って旅する二人の少女・チトとユーリ。
道中、さまざまな文明や宗教、あるいは兵器を発見したり、わずかな生存者との交流を経ながら、ひたすら上層を目指し続けます。
そこに、何かがあると信じて……。
「999」や「キノの旅」「魔女の旅々」など、他の旅ものアニメにも通じるものはありますが、それらに比べると各話のストーリーの起伏はかなり少なめ。
二人の主人公――真面目でしっかり者のチトと、楽天的でのんびりやのユーリも、どちらも感情はフラットで、どこか達観しているような言動。
なんとなく童話的というか、絵本を見ているような感覚になる不思議なアニメーションでした。
悲壮感の漂いそうなアポカリプス物ですが、緩めのキャラクターデザインも相まって、全体に漂うのはどこかほのぼとのした日常系アニメのような空気感。
ただ、かと行って道中が退屈なわけではありません。
チトとユーリの、独特のテンポで繰り返される、可笑しみのあるダイアローグ。個人的に笑いの要素というのはかなり重視しているので、思わず微笑んでしまう彼女のたちの会話は、本作を評価する上でかなりプラスに働きました。
そして、物語が進むにつれて、少しずつ明らかになっていく世界の在り様。
人類の残したさまざまな文化・文明の痕跡を辿りながら、次第に、生きるとは何か? 死ぬとは何か? 生命とは何か? というテーマが浮き彫りとなっていきます。
{netabare} やがて、地球の終末を見届けるという使命を帯びた、謎の生物・エリンギたちとの出会いを経て、二人はある答えに辿り付きます。
歌のようにも聴こえるエリンギたちの通信シグナルは、私には、最後に残った人間たちに対するレクイエムのようにも聴こえました。
いったい、この廃墟の最上層には何があるのか?
視聴者の興味も尽きないまま、最終話が終了します。{/netabare}
深いテーマがあるのかどうかは分かりません。
ただ、全編通して感じたのは、無垢な子供が、少しずつ世の中の真実に触れ、世界を認識し、最終的に根源的な問いを自らのうちに求めるような……そんな過程を、二人の旅から凝縮して見せられているような気がしました。
特に、何か謎を解こうとか、真理を探究しよと頑張るわけではありません。
出会ったもの、見つけたもの、滅び行く世界が二人に見せる物をありのまま受け止めて、その果てに、人間とは何か、生命とは何かを感じ取っていくチトとユーリ。
起伏のある、ハリウッドの三幕構成のようなストーリーを前のめりで楽しみたい方には向いていないと思いますが、
生と死、絶望と希望、アポカリプスと二人のゆるさ(笑)
そんな、二律背反の要素が常に渾然一体となって醸し出す不思議な空気感を自然体で楽しめる方は、きっとハマる作品ではないでしょうか。
原作は完結していますので、ぜひアニメで、最上層まで観てみたい作品です。
ケッテンクラートの、三人目の同乗者となって、二人と共に廃墟世界を旅してみませんか?