Fanatic さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
( ゚д゚)・・・(つд⊂)ゴシゴシ・・・(;゚д゚)!!
まず最初に。
純粋に楽しめた作品だとは言えませんが、私の主観のみで低評価にすることも戸惑われるような強烈なインパクトもありました。
脚本自体はテンポも良く、先へ先へとページを捲らせるブリッジの組み方も秀逸。
非常に評価の難しい作品だったため、★はデフォルトとさせて頂きます。
制作は「ハイスクールD×D」等のTNK。
監督は「刀語」「デート・ア・ライブ」「超可動ガール1/6」等の元永慶太郎さん。シリーズ構成は「刀語」で監督とタッグを組んだ上江洲誠さんです。
原作は未プレイですが、PC用のアダルトAVGからのアニメ化。
榊野学園に通う伊藤誠、桂言葉(コトノハ)、西園寺世界(セカイ)の三人の高校生が繰り広げる愛憎トライアングルとその末路を描いた学園モノです。
個人的に、こういうドロドロ作品にはあまり手を出さないんですが、たまたま友人と話していて話題に上り、どんな作品なのかとググってみると「最終話が放映中止」と言うような検索結果がズラッと……。
どうも、放映直前に実際に起こった事件が関係しているらしいというのは分かったのですが、ネタバレ回避のためそれ以上の検索はせずに、まずは視聴を開始。
主人公の誠と、ダブルヒロインのコトノハ&セカイによる三角関係が物語の主軸です。
誠は、根は悪くないのですが、優柔不断で煮え切らない性格が災いして、どんどん泥沼に嵌る、いかにも三角関係の主人公という性格。
ただ、今でこそ「何だこいつ!?」って思いますが、中高生の頃の私や周りの友人の様子を思い起こすと、まあ、こんな感じの人も結構いたようなぁ、と思うシーンもチラホラ……。
誠は、以前から通学電車で見かけていた隣のクラスの少女・コトノハのことを気に掛けていて、それを知った同じクラスのセカイが誠とコトノハの間を取り持ち、二人は交際することに……というのが序盤の展開。
ところが、誠はいつも顔を合わせては助言をしてくれるセカイのことが段々と気になるようになり、逆にコトノハとの交際には疲れを感じるようになります。
そしてセカイも、実は以前から密かに誠のことを想っていた……と言うのが、4話辺りまでの内容。
ありふれた三角関係ですが、この手の作品にあまり触れてこなかった私は、この辺りで既に鬱になり始めてます。
イライラしながらも先が気になって視聴続行。
本当の欝シーンはまだまだこんなものじゃありませんでした。
イライラの原因はやはり、誠の性格。
ルックスはまあまあで性格も良く、女子の間でもそこそこ人気があるという、まあまあリア充な設定なんですが、あっちにフラフラこっちにフラフラと流されやすい性格で、恋愛に関しても主体性がありません。
悪人でなはいんですが、選ぶ選択肢が衝動的で、自分の行動に対する責任感も希薄。
自分の行動が周りに及ぼす影響についても想像力が欠如しており、一言で言うと小学生のような精神年齢です。
結果、無自覚に周囲を傷つけてしまうことが多く、個人的には自覚のある悪人以上に嫌悪感を覚えるタイプ。
観ているこちらも、若い時の自分に重なる部分もあったりして、もしかすると傷つけてしまっていたのかも?という人たちの顔が思い浮かんで気分が滅入ったり……。
その意味では誠に対する嫌悪感の中に、自己嫌悪的な気持ちも含まれていたのかもしれません。
そして、ドロドロ三角の主犯格は誠だとしても、ヒロインの二人にも有責性がないわけではありません。
男子にあまり免疫がないコトノハは、誠のストレートな欲求に応えることができず、付き合っていてもどうしても警戒をしてしまい、そんな態度のせいで、誠も彼女の気持ちを理解できなくなっていきます。
思い込みが激しいコトノハは、クラスでは浮いていて相談する相手もいません。
物語が進むにつれ次第に精神に変調をきたすようになってきます。
またセカイも、誠に想いを寄せながらも他の女子との仲を取り持つという偽善的な行為でそもそもの原因を作っています。
どういう形にしろ誠の傍にいたいという気持ちから生まれた行動ではあるんですが、最終的に自分の気持ちを抑えきれなくなっていくので、セカイこそドロドロの元凶と言えなくもありません。
{netabare}根は悪くないのですが、精神的に幼い誠は、徐々にヒロイン二人の純粋で未熟な愛に追い詰められ、やがて性格も変質して自制心が効かなくなっていきます。
三者三様にボタンを掛け違えていくことによって、序盤の学園ラブストーリー風の展開から、中盤にかけて徐々に雲行きが怪しくなり、悲劇の終盤へ突入して行きます。
この作品の最もグロテスクなところは、凄惨な絵面ではなく、自分のことしか考えられない、純粋であると同時に未熟な若者たちのエゴが、他人を思いやる気持ちを失わせ、精神を残酷に変容させていく過程なのではないでしょうか。
(若いから未熟と言うのではなく、この作品が若者の未熟さにスポットを当てて描いているということです、念のため)
とりあえず、ドロドロの愛憎劇が好きな方は楽しめるかも知れませんが、誰にでも無条件にお勧めできるような作品ではありません。
また、たとえドロドロ好きでも、物語の顛末に閉口する方も多いのではないでしょうか。{/netabare}
最終話の放送中止の原因となったニュースは偶然起きた出来事かも知れませんが、何かしら似たようなニュースは頻繁に流れていますし、ニュースじゃなくても中止の口実は後付けでどうにでもなります。
最終話は、『本当にこれ、地上波で放送するつもりで作ったの?』と、制作サイドの神経を疑う内容でした。
これ、何も起こらなかったとしても、地上波無理やろwww
余談ですが、よく話題に上っている「Nice boat」と言う単語は、放映中止になった際に差し替えで使われた環境映像の一部にボートの映像があり、それを見た外国人が掲示板に書き込んだ言葉だそうです。
炎上する掲示板でのクールな一言が逆に笑いを誘い当時は話題となっていたようですが、期せずして本編のラストシーンに対するオチにもなったというのも、何か持っている作品だったのかも知れません。