稲葉姫子 さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:----
デフォルメ・現実VSリアル・ゲームの対比
デカダンスdécadence〉は一般に衰退,落,退廃を意味するフランス語です。
2020年12月15日現在、このデカダンスは2020年のアニメで私のベストです。
事前情報一切無しで見た感想です。
第一回のTV放送を見てから、しばらくは2話以降を視聴しませんでした。第一回目だけの印象は絵がいいけど、中身が薄い、ひねりがないと魅力を感じなかったのです。うーん、レコーダーにはどんどん録画が溜まりますが、触手は動かず12回(最終話)の録画も終わり、気がつけば12月に入っていました。レコーダーを整理しようとして2話をちょっと見て削除するつもりでしたが.....2話でビックリする展開になったのです。
<デフォルメされたデザインの現実世界とリアルなゲーム世界>
デフォルメされたデザインのサイボーグ世界が現実です。このキャラクターデザインには当初、違和感がありました。どう見てもギャグアニメです。リアリティーが感じられません。日曜日の午前中の子供アニメでも通りそうです。それに対して、虚構の世界・ゲームの世界はリアリティーある絵になっています。そのリアリティーある絵が1話であり、ビックリしたのが問題の2話からのデフォルメされた絵です。
<2つの世界>
この2つの世界(絵)の対比が、大変にわかり易いのです。サイボーグからすれば人間(タンカー)のいるデカダンスは全くの異次元世界であるし、人間(タンカー)から見てサイボーグはこれも異次元世界に違いありません。お互いを理解しあうなんてことは普通では考えれないのです。その分かり合えるはずもない2つの世界を共有し、最初に分かり合ったのが「カブラギ」であったのです。
<遅れて2つの世界を把握する私達>
遅ればせながら、視聴者である私(私達)も両世界を一つにしていきます。あの冗談のようなキャラクターに当初に思えたドナテロ、サルコジも、非常に人間臭い(人間ではありませんが)存在に思えてきます。そして2つのキャラクターが混在する絵をみても、自然に受け入れていくのです。
<両世界は分かり合えたのか、ハッピーエンドか>
最終話#12「decadence 」において、人間世界とサイボーグ世界は一見幸せそうに共存しています。でもそれは本当の共存ではありません。ソリッドクエイク社のアトラクションの中の世界で、遊戯施設の中でキャストとして人間は存在するのです。ただ、無意味に消されたりしないだけです。たとえば私たちが東京ディズニーランドの中で生きているとしたら、それは本当の幸せでしょうか?
制作側は深いメッセージをこの作品に忍ばせているというのは考えすぎでしょうか。私は考えてしまいます。
最後に、NUTの作画は素晴らしいです。
#7「driveshaft」でカブラギとナツメが外装から外を見ながら語るシーンがあります。このシーンの背景、クレーンの質感などに目をみはりました。
、「固定給8万円+出来高制(アニメーター経験者優遇します)」
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