上位者のヒモ さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
壮大な世界観と緻密な心理描写
『月の影 影の海』の一番の見どころは、陽子が楽俊(人とネズミの半獣)を救うか否かの葛藤です!
途中、妖魔に襲われて二人は離れ離れになります。楽俊は陽子の秘密(日本から来たこと)を知っているので、陽子は楽俊を生かしておくか悩みます。
(陽子は何回の裏切られたせいで、他人を信じることが出来なくなっています。)
その時、陽子を誘惑するのが蒼猿(魔剣が見せる幻)
楽俊のもとに戻り、奴を殺せと唆します。
この蒼猿とのやり取りで陽子は成長します。
「ネズミを見捨てただけでこんなに辛いのに...殺さなくてよかったぁ。」
陽子が自分の芯を見つけた場面ですね。
つまり、蒼猿の誘惑を振り切って、本心に従う場面。
そして、以下のことに気づきます。
「絶対の善意でなければ、他人を信じることができないのか。そうではないだろう。私が他人を信じる事と、他人が私を裏切ることは何の関係も無かったんだ!裏切られたとしてもそうした奴が卑怯になるだけだ。」
「そうだ、私は1人だ。だから、私のことは私が決める!私は誰も優しくしてくれなくても、どんなに裏切られたって、誰も信じない卑怯者にはならない!」
この場面だけは絶対にアニメ(7話)の方がいいです!声優の演技はもちろんですが、Bgmが素晴らしい!
アニメを見ていて、あそこまで心を揺さぶられた瞬間はありません!
思えば、私が人間ドラマにハマったきっかけはこの場面を見たからだと思います。人間ドラマとして今、注目してる作品は『ヴィンランド・サガ』です。その内書きます。
話を戻して、上記の部分を見て、私はどうしてあんなに見事に描写できるのか驚きました。課題の分離という考え方をあれほど分かりやすく描いている。きっと作者は人との信頼とか生き方についてとても深い洞察を持っているとしか思えません!ただ者じゃありませんよ...
『嫌われる勇気』によると、課題の分離というのは、行為の結果が自分に及ぶ場合のみ、真剣に対応し、自身が介入できるか否かを吟味することです。
他人が自分を嫌うか好むかはコントロール不可なので、そのことについて考えても意味がないということ。そうやって、次第に誰からも嫌われたくないが、嫌われても構わないという姿勢になり、精神的に自由になります。
課題の分離という概念を思い出させる点で、この作品は承認欲求一辺倒になってしまう私にとって良い薬ですw
ちなみに、十二国記の世界には天帝がいて、天帝によって麒麟を介して陽子は王に選ばれるのですが、きっと天帝は、陽子があの場面を乗り越えることを知っていたから王に選んだのでしょう。