芝生まじりの丘 さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
泥臭く凡庸で非凡な宇宙浪漫
自分にとっては宇宙への浪漫というものを描きなおした作品。
私は宇宙開発競争の只中の世代、ユーリガガーリンの言葉に心を打ちふるわせた世代ではないので宇宙に到達することへの素朴な感動を与えてくれた点でこの作品に感謝したい。
門外漢が何か喋っても仕方ないが1950年代、まだコンピュータも赤ん坊だった時代、宇宙開発競争において、ソ連とアメリカはまさしく軍事と娯楽と人類の夢のために巨額の予算を投じて、鉄の塊に蝿だの犬だの亀だのを乗せて宇宙に送りあった。私が浅学なだけかもしれないが今日ではそのような宇宙開発も仮想現実やネットワーク、AIの進歩が世界を塗り替えていく前で影を薄くしているように見える。この映画を見ているとしかし今から60年も前に現実に宇宙への航海があったという事実を感じてしみじみしてしまった。
世界設定が特徴的で、こことは違い違わない世界を作ることに腐心しているのが認められる。通貨は棒状、スプンは三角ととにかく何かとズラしていて風景もジブリの類型のようでそこに止まらない。
一方で大枠のストーリーは現代の視点で見るならなんだか宗教勧誘アニメか何かのようである。{netabare}下心で若くて敬虔な女に近づいた自堕落な男が感化されて宇宙で戦争と人間の原罪を憂い、祈りを捧げるようになる、というストーリーはあまりにも胡散臭い。あんな女は今ならば科学信者に火あぶりにさせられるだろう。{/netabare}