waon.n さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
多彩で美麗。濃厚で流麗。
アレクサンドル・デュマといえば、映画『三銃士』の原作である小説の『三銃士』の原作者であり、劇作家などもやっていたという。文学界でもその名は現在まで影響を残すほどの人物だと個人的には思っています。
さて、このデュマ原作による『モンテ・クリスト伯』がこのアニメ『巌窟王』の原作であることは言うまでもないかと思います。
しかし、原作は長大なようで、これをアニメで24話でしっかりと描き出すというのは割と骨が折れる作業だったのではないでしょうか。
そういう意味でこの作品の最大の魅力はこの原作を基にしたシリーズ構成にあるかと思います。最後まで観た結果の感想を最初に書いてしまいますが、物語の進み方や起承転結がしっかりしており、作品全体がプロットからしっかりと作りこまれていると感じられ、とても好感が持てる作品となっていました。
原作『モンテ・クリスト伯』では主人公がタイトルの名前と同じくモンテ・クリスト伯なのだけれど、アニメでは違います。
純粋無垢で真っすぐな性格のアルベールが主人公です。
なぜ主人公を変えたのか、そこにはおそらくモンテ・クリスト伯の人生を追うような原作同様のストーリー展開であると、尺の関係で上手くまとめることが困難になってしまいます。であるならばこの物語の肝である復讐するという部分を切り取って話を構成し、尚且つモンテ・クリスト伯の経歴も改めて紹介できるようなポジションの人物を主人公に持ってきたというところかと感じました。
なので、物語があり、人物がいて、さて誰の視点から見たらこの復讐劇が面白いかを考えたのではないでしょうか。手持ちの駒はすでにあり、それをどう配置するのか。そしてこの配置がピッタリとハマった作品になっています。
この物語の面白い部分というが、{netabare} 復讐劇でありながら、主人公は復讐される側である。{/netabare}という点ですね。
しかも、直接的ではなく中立的な視点から物語を伝えることのできる人物が主人公だったでしょうか。それ故の純粋無垢な設定だったということでしょうか。この人物を軸に持ってきたことにより、新しい視点からこの復讐劇を捉えることができたのではないでしょうか。原作ファンの方はこの物語をどうとらえたのか、ちょっと気になるところです。
さて、もう一つ舞台設定が未来だった点についてもお話をしたいと思います。原作は19世紀のフランス。まだ未開の地の存在が多くあり、眠れる秘宝があるという想像が膨らむ時代です。
これを現代でやってしまうと、現実味が一気に薄れてしまいますね、それならいっそ未来でまだ未開の地という意味で宇宙だったのでしょう。
なので、この古典的な貴族的風習と未来的技術の不一致はむしろ望むところといった感じだったのだろうと思います。そして物語はこのSF的な設定など意に介さないように進んでいきます。つまりこれは舞台設定であり、意味はそこまでないのです。未来だろうと、過去だろうと同じ物語は描ける。しかし、現代に則して描くのであれば、未来の方が良いというだけの話。
これが、また美術の世界設計とリンクする話に繋がっています。
背景は現代のフランスを想像させつつ、その彩はどこまでも多彩で美しく描かれています。ここに貴族の世界と未来の世界が融合されどこか不思議な世界を作り出しています。洋服の模様なんか面白く絵が動いていることがより強調されるような演出ですね。見ているだけでも面白いと感じられます。
服装は古風でありながら、斬新さを見る事ができており、世界観ともリンクしているように感じられました。
声優陣は豪華ですね。まず言いたいのは、中原麻衣さんはやっぱりカワイイ。福山潤さんは少年と青年の間を演じる難しい所でしたが、素晴らしい演技でした。中田譲治さんは伯爵が似合いますね(意味不明)。本当に脇役含め素晴らしい配役だと思います。特筆させてもらいますと、関智一さんはやはり天才なのではないでしょうか。
音楽も良かったですね。OPとEDが作品の個性をより引き立てていました。当時リアルタイムで観ていた方々は。この濃厚で異色な作品は他の作品と見比べた時どう映ったのでしょうか。私気になります。
待て、しかして希望せよ。