Fanatic さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.0
作画 : 5.0
声優 : 2.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
前半の盛り上がりが、鑑後の満足感に繋がらず
監督・脚本は細田守さん。「時かけ」「サマーウォーズ」「おおかみこどもの雨と雪」に続く、同氏の第四作です。キャラデザ・作画監督も、ずっと細田監督とタッグを組んできた山下高明さんが担当。
CVは、相変わらず本職声優をほとんど起用せず、タレントや俳優を多く起用。
ただ、熊徹役の役所広司さんを始め、多々良役の大泉洋さん、百秋坊役のリリー・フランキーさん、宗師役の津川雅彦さんなど、脇を固める……とくに、おじさま方には好演が多かったです。
一方、主人公の蓮を演じたお二人は、どちらもいまいちだったかなぁ……。
幼少期を演じた宮崎あおいさんは、演技はともかく、声が可愛すぎ。
いくら変声期前の男児役とは言え、あれでは普通に女の子です。
最初のうちはずっと、実は女の子だった的な設定なのかと疑って観ていました。
青年期を演じた染谷将太さんは、根本的に発声が微妙。
声がこもっていて聞き取り辛かったですし、幼少期の宮崎あおいさんとあまりにもギャップがありすぎたのも違和感の原因に。
楓役の広瀬すずさんも、どうも合ってなかったです。
本作が声優デビュー作となるようですが、その後の「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」や「ルパン三世3D」などで演じられたメインヒロインを見ても、演技、上達してます?
なぜこの方をわざわざ起用するのか、理由が分かりません(〃_ _)
次に、本編について。
視聴前は、方々からネガティブな評価を聞くことが多くて、ハードルもかなり下がっていました。
そのせいか、前半は「あれ?意外と面白い?」という感じ。
作画も非常に綺麗で、特に渋谷の街のリアルな描写はお見事。
バケモノの世界・渋天街も、少し「千と千尋の神隠し」を思い出させるような東洋風の雰囲気が素敵でした。
そこに偶然迷い込んだ蓮が、熊徹と出会い、修行して強くなっていく過程は、昔のカンフー映画のようなノリで懐かしくも楽しかったです。
蓮だけじゃなく、蓮と修行することで、熊徹の方もまた成長していきます。
反発しながらも絆を深めていく二人の姿からは、単なる師弟関係というよりも、親子関係に近い空気を感じることができました。
ここまでは良かった!
{netabare}ところが、青年期に入って蓮が現実世界の渋谷と行き来できるようになると、いきなり知識欲が芽生えたり、大学に行きたいと言い出したり、実の父親と再会して一緒に暮らそうとしてみたり……。
蓮の心境の変化の理由付けも曖昧でしたが、物語の構成としても、前半の熊徹と過ごした渋天街パートが生かされておらず、テーマが散らかってしまった印象。
熊徹と暮らし始めたのも、他に選択肢がなかった蓮少年にとってはいわば成り行きで、生きるために強くなりたい、というエゴが発端だったと思います。
そこから深まっていった熊徹との絆を、普通にそのまま生かすようなシナリオにすればよかったと思うのですが、いつの間にか、闇に囚われた一郎彦との対決という超展開に発展していて、正直頭がついていきませんでした。
ぽっと出のヒロインの楓も、いったい何がしたかったのか。
もっと以前から蓮との絡みがあったのならともかく、後半になって急に出てきて大学受験を進めたりして、物語を脱線させただけだった印象。
あと、よく分からなかったのがチコ。
途中、女の子?の姿になってましたよね?
なんだか意味ありげなキャラだったわりには何も回収されずに終わっちゃいましたし、あれは一体何だったんだろう?{/netabare}
観終ってみて、この何も残らなかった感じは何だろう?と思い返してみると、やはり、いろいろ詰め込みすぎてテーマがぼやけてしまっていたのが要因だったのかな、と思いました。
大きく分けると、前半の熊徹との日々を描いた渋天街パートと、青年期以降の、人間社会に適応していこうとする現実パートの、二部構成のようなプロット。
この配分が均等すぎて、どちらの印象も弱めてしまっていたのかなぁ……。
恐らく「新冒険活劇」というキャッチに相応しい、ダイナミックな展開を試みて作られたプロットなのではないでしょうか。
一つ一つのパートはそれなりに観応えがあったので視聴中は楽しめましたが、鑑後の満足感には繋がっていなかった気がします。