Fanatic さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 2.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
後宮小説を子供向けにアレンジした架空歴史絵巻
酒見賢一さんのデビュー作『後宮小説』を原作とする作品です。
監督は押井守さんの師匠でもある鳥海永行さん。
スタッフには、キャラデザ&作監の近藤勝也さんなど、スタジオジブリ作品の制作に関わっていた、あるいはその後に関わることになるアニメーターが多数参加していました。
ストーリーは、17世紀初頭の中国をモデルにした架空の国を舞台に、皇帝の妃に志願した少女・銀河の数奇な運命を描いています。
権謀術数の渦巻く宮廷、私利のために宮女狩りに走る宦官(かんがん:去勢された官吏)たち、皇帝の正妃を決めるための教育風景、そして、反乱軍との戦争など、歴史絵巻風の内容が80分程度に纏められています。
皇帝の繁栄と衰退、諸行無常感も漂う内容ですが、映像は、未来少年コナンやパンダコパンダなど往年の宮崎作品のような空気感。
だいぶ子供向けを意識して仕上げられていたのかな?
原作は未読ですが、主題の壮大さと作品のテンポを見る限り、かなりの部分が端折られているんじゃないかなぁ、と感じます。
キャラを立たせ、展開に説得力を持たせるには尺が短すぎた印象。
{netabare}主人公・銀河が、正妃に相応しい女性に成長していく様子もほとんど描かれておらず、皇帝コリューンとの交流も物足りません。
魅力的なルームメイトもいるけれど、ほとんど掘り下げられていませんし、原作では壮絶な最期を遂げたらしいタミューンの死もあっさりと処理されています。
さらに首を傾げたのは、反乱軍の首謀者の一人、混沌に対する銀河の態度。
本来であれば、帝国を滅亡に追いやり、皇帝や後宮の仲間を死に追いやった反乱の首謀者である彼に相当な憎しみを抱いてもいいと思うのですが、そういった感情が見られないばかりか、最後は後宮の事後処理に協力させて、ちょっと仲間っぽい雰囲気に?{/netabare}
恐らく、1990年当時のテレビ放送アニメですから、子供に見せることを前提にされてあのような演出になったのだと思います。
シナリオ自体は結構重く、いろいろ考えさせられる部分もあるので、現代でリメイクすれば、大人の視聴にも十分に耐えられる作品になるんじゃないかなと思いました。
本作も、重いシナリオを軽いタッチで見せられたような、グリム童話を読んだ後のような独特の鑑後感は、味わい深いものがありました。
これ、子供の頃に観ていたら、結構なインパクトになった気がします。
放送当時の時代背景などを考慮しながら視聴してみるのもいいかも知れません。