Fanatic さんの感想・評価
3.1
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 2.5
状態:観終わった
経済×バトルの着想は面白いけれど、上手く落とし込めていない印象
竜の子プロ制作、監督は「ガッチャマンクラウズ」と同じ、中村健治さん。
ノイタミナ枠らしい尖った設定ですが、内容は、簡単に言えば単純なバトルもの。
経済関連の設定がいろいろと肉付けされてはいますが、そこはあまり考えなくても良いんじゃない?という結論に達しました。
私自身、株を何銘柄か保有していて(優待目的の現物取引なので、資産運用と呼べるほどのものでもないですが)、その関連でラジオ日経などもよく聴いているので、多少は経済単語に馴染んでいるつもりですが、この作品に経済の概念が上手く落とし込まれているとは思えませんでした。
未来を担保にして戦う、という設定は、恐らく日本の膨大な赤字国債のメタファーかと思います。
ミダスマネーという闇のお金が世界に出回り、すでにそれ無しでは経済が立ち行かなくなっている世界。普通の人は区別がつかないんですが、とあるきっかけでミダスマネーが見えるようになるくだりはなかなか不気味で面白かったです。
最終的に、未来を担保にすることをネガティブに捉えていることから、赤字国債=悪という前提に基づいたプロットなのかな。
ただし、現実世界の報道では、赤字国債のGDP比の計算方法が国によってばらつきがあることに触れられていなかったり、債務額だけがクローズアップされて債権額が話題にならなかったりと、かなり偏向が見られます。
国の借金の問題は、一面的に捉えて善悪を論じられるほど単純なものではありません。
そんな難しいテーマを、本作はかなりデフォルメして見せているので、視聴者もそれほど小難しく考える必要はないと思います。
経済用語もいろいろ出てきますが、本来の意味は下記の通り。
アントレプレナー=起業家
アセット=資産
ディール=取引
フレーション=インフレーションの語尾。単独で使われることは殆どありません
これを本編では、アントレプレナー、つまりバトルプレーヤーみたいなものになった人たちが、アセットと呼ばれる分身を操ってディール(バトル)するお話、としているわけです。
フレーションとは、アセットが使う技のことですね。
アセットはアントレプレナーの未来の具現化みたいなことが言われてますが、主人公のアセットがどうして美少女(声:戸松遥さん)だったのか、最後まで分かりませんでした。
ともあれ、普通のバトルアニメに使われる単語を、それっぽく経済用語に置き換えただけで、現実のアセットマネジメントとの関連性は希薄です。
個人的には、「ハゲタカ」や「半沢直樹」のようなマネーゲーム系の話は好物なので、例えばチャートやファンダメンタルを参考に投資やトレードを繰り返し、キャピタルゲインを稼いだり、時にはロスカットをしたり……みたいな概念をバトル物に落とし込んだものを期待していたんですが、正直肩透かしでした。
ディールの結果によって自分の保有する株価が値上がりしたり、負けたと思ったけど空売りで儲けましたー!みたいな戦略があると、もっとそれっぽくなった気がします。
で、普通のバトル物として本作を観てどうかというと、特に目新しい内容でもありません。
アントレプレナー同士のディール結果によって資金の移動はありますが、ルール設定や現実世界への影響など、関連性があやふやで雰囲気で押し切っている印象。
ただ、テンポは非常に良く、中弛みもほとんどないので、観始めれば一気に完走できる勢いもあります。
経済云々の設定を度外視すれば、まあまあ、つまらなくはないかな、という感じ。
未来を担保にして戦うという設定はなかなか面白かったので、経済用語などで下手に小難しい印象を与えず、ディーラーたちの光と影、明と暗、喜怒哀楽に焦点を絞って作った方が、テーマは伝わりやすかったんじゃないなぁと思います。
着想は面白かったけど、上手く消化できていない印象でした。
ラストは、{netabare}日本が改変され、ドルが通貨として流通している社会に。
恐らく経済破綻した後の光景を描いているのだと思います。
にも関わらず、そこに描かれた日本人は、どこか幸せそうにも見えます。
でも、本当に円の価値が一夜にして暴落するようなことがあれば、あんな風に笑顔で過ごせる日本人がどれだけ残ってるかな?と、ちょっと考えさせられました。{/netabare}