マミー さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
本編を見終えました。すばらしいの一言
配信がなかったので、久しぶりにレンタルで観ることにしました。
まず、1度通しで観て、次に、1話ずつ細部を点検するように観ました。少なくとも3周は観ましたね。
驚いたことに、よく見れば見るほどに精巧につくられていることが分かります。
カットバック、フラッシュバックなどの映画的手法がいたるところで多用されています。
クローズアップのカットも効果的に使用され、正に映画を観るかの様。
また、原作がラノベということで、セリフも多く、そして長く、重要な意味が込められている。
ルパン三世のタイプライター予告のように、タイプされた文字のテロップも効果を発揮している。
また、数々のキーワードと鍵となる小道具が沢山ある。
キャラクターの表情が、一瞬の変化まで描かれており、まるで役者が演技しているかのよう…
という具合で、非常によく作り込まれている作品ですね。
結論から言うと、これは見逃してはならない重要な作品です。
ジャンル分けすれば恋愛物でしょうから、好みが分かれるでしょうが、単純な作品ではないので、挑戦する価値があります。
まるで人形のように美しい少女が、考えられないほど過酷な過去を持つ。
「その少女の存在は秘かに隠されていた。だが、その少女を知る者は彼女は道具だと言った。
命令すれば戦う。人の形を模しているだけの心をもたない、ただの道具だと。」
14歳に満たない少女が、実は殺人マシーンであり、軍の道具としていいように使われてきた。
こんなことは、リアル(あるいは実写)では、100%考えられないわけで、そこがアニメの特権。
十分に丁寧な設定をすることで、200%のフィクションの世界に没入していくことができるのです。
ここは、劇場版を観たとき真っ先に気になっていた点ですが、本編を観てみると
この物語の主題は別のところにあるので、この点には興味の目を瞑っておくべきですね。今の私は、全く気にしません。
心をもたない少女が、手紙の代筆という仕事、その人の話から隠れた本当に伝えたい気持ちを掬い取って、それを手紙にすること。
この仕事を「自動式手記人形(ドール)」というが、この仕事と人との出会いを通して、主人公が成長していくというお話です。
この作品の着眼点が面白いのは
メールやSNSが飛び交う今の時代に、「手紙」の重要性をテーマにしたこと
まるでアキバのメイド喫茶風の口上や衣装をまとうドールの設定
の2点ですが、全14話の中には、数々の心を揺らすエピソードが含まれています。
そう言えば、普通は1話ごとにタイトルをつけますが、ヴァイオレット・エヴァーガーデンは数字だけですね。
これは、すべてのお話が、ヴァイオレットの成長譚なので、すべて「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」だということでしょう。
また、第1話と第2話では、オープニングテーマもエンディングテーマもなく、ひたすら物語の背景を設定する流れが続きます。
後の各話でも、Aパート、Bパートの区分けがなく、物語が途切れることなく展開されます。
そうした配慮によって、私たちがストーリーにぐいぐい引き込まれていくのではないでしょうか。
内容ももの凄く濃いですしね。
1,2話での物語の設定は突拍子もないものなのですが、ここで物語に入っていけるかが試されるのです。
さて、レンタルの円盤では14話まであるのですが、13話で完結というようにも見えます。
(14話は特別番外編ということですね)
【第1話】
入院中のヴァイオレットにホッジンズ元中佐が会いに行くところから物語は始まる。
冒頭に、ヴァイオレットが書いていた報告書?が風に飛ばされて舞い上がって、どこまでも飛んでいく。
このパターンは、劇場版の冒頭でも再現されていましたね。他でも、手紙がよく飛ばされますがw
「その少女の存在は秘かに隠されていた。
だが、その少女を知る者は彼女は道具だと言った。
命令すれば戦う。人の形を模しているだけの心をもたない、ただの道具だと。」
とんでもない設定が語られます。
彼女の動作、言動が、すべて軍隊様式になっているのもこのためかと分かる。
お土産に用意したぬいぐるみ3種のうち、ヴァイオレットは子犬のぬいぐるみを選ぶ。
選択した理由は、少佐の「犬」と呼ばれていたから
この子犬のぬいぐるみは、ヴァイオレットの心情を表す小道具として、その後何度も登場します。
残った2種のぬいぐるみは、社長のデスク上に並べてあるのが少し笑えますねw
もう一つの重要なアイテムは、何といってもエメラルドのブローチ、少佐そのものですからね。
この回で、主人公の名前の由来が分かり、過去も分かる。
そして、ホッジンズ社長のもとで働くことで彼女の将来が展開していくことも。
はじめは、郵便配達の仕事を任されたが、当然のごとくドールの仕事を知る機会を得る。
「僕にはじめて優しくしてくれたのは君だった。
君が世界のすべてだった。
君のためなら僕は何でもできた。
君の気持が知りたい。
君の心を分かりたい。
今は離れているけれど、君のことを…愛してる」
でよろしいでしょうか。
カトレアの書いた手紙は、まさにヴァイオレットの心情と重なった。(見事なクロスカッティング!)
最後にテロップ『「愛している」と自動手記人形』
【第2話】
カトレアが不在の時、代筆の依頼人が来る。エリカと居合わせたヴァイオレットが応対することに。
エリカは前の仕事で失敗して自信喪失しており、対応できない。
そこで、機械仕掛けのヴァイオレットが応待することになるが、結局、相手を怒らせてしまう。
カトレアが何とかとりなすが
カト「人が言ったことがすべてではない。人間は弱いもの。うらはらよね。」
今回のテーマは、この「うらはら」だ。
駆け出しのアイリスは、ヴァイオレットの失敗を見て、ドールの仕事は彼女には無理、辞めさせたほうが良いと社長に進言するが、
エリカは、何故かヴァイオレットを庇い、続けさせて欲しいとお願いする。これも、うらはらだ。
でも、これで次の展開に進むことになる。
【第3話】
ヴァイオレットが本格的にドールになるための専門学校に通う。
そして、ここで初の友人(と言えるか)レクリアと出会う。
ヴァイオレットは技能や知識では断トツ1位の優秀さであったが
あまりの率直さ、と言うか経験値の低さで、卒業を認められないこととなる。
しかし、ルクリア計らいで、ヴァイオレットに兄スペンサーへの思いを手紙にしてもらう。
ルクリアの心を見事に汲み取った手紙を書くことに成功したヴァイオレットは、
教官にも認められ、晴れて卒業するのであった。
テロップ『あなたが良き自動手記人形になりますように』
【第4話】
駆け出しドールのアイリスが初の依頼を受け出張する回
と同時に、ヴァイオレットの初の仕事ともなる。
しかし、本当は仕事の依頼ではなく、久しく帰京することない娘を心配する両親が娘を呼び出すための方策だった。
故郷の駅に降り立った時、そして社に帰還する時、アイリスが駅前で水たまりにうっかり足を踏み入れてしまうのだが、
初めは、不快な表情をし、二度目は笑みを浮かべる。アイリスの心境の変化を良く映し出している上手い演出です。
苦い思い出のある、ど田舎の故郷に戻ってきてしまった屈辱の表情が前者であり、
屈折した両親への思いをヴァイオレットの手紙によって氷解させられ、晴れ晴れとした表情が後者でしょう。
ヴァイオレットもまた一つ学ぶ。
V「愛してるはとても勇気のいる言葉なのですね。」
テロップ『君は道具ではなく、その名が似合う人になるんだ』
【第5話】
幼さの残るシャルロッテ姫から恋文の依頼を受ける回
すでにドールとして一人前になっているヴァイオレットだが、ドールどうしの美文調の手紙では満足しない姫
そこで一計を案じるヴァイオレット、お相手の王子専属ドールと連絡を取り…
ここでは、柔軟さを見せる今までにないヴァイオレットがいます。
でも、相変わらず無表情はそのままですが。
作戦は見事に成功を収めます。
【第6話】
シャヘル天文台への仕事に向かうヴァイオレット
冒頭、ライデン港にてディートフリート大佐に出会う。
D「多くの命を奪ったその手で、人を結ぶ手紙を書くのか?」
9話でも、少佐に成り代わってこの言葉が出てくるので、強烈な一撃であったことでしょう。
でも、相変わらずの無表情ですが。
天文台では、青年写本家80名とうら若きドール80名が、一人ずつペアを組み、貴重な本を写本し保管するという仕事が待っていた。
ヴァイオレットの相方はリオン。孤児で皆から偏屈な奴とみられていたが、やがてヴァイオレットが似た境遇にあることを知り、
少しずつ心を開いていく。そしてアリー彗星を一緒に観る約束をするのだった。
L「その人と離れていて寂しくないのか?」
V「寂しいというのはどんな気持ちなのか、私には理解できないのです。」
L「本気で言っているのか。」
V「私は嘘はつけません。」
L「じゃぁ、その人のことを思い出すことはないのか。」
V「いつも思い出します」
L「会えない日が続くと胸がぐっと重くなったりしないか。」
V「なります。」
L[それが寂しいってことだよ。」
V「それが寂しいということ。私はあの方と離れて寂しいと感じていた…」
言葉が詰まるヴァイオレット、やがて
V「私にとって、あの方は世界そのものです。それがなくなるくらいなら、私が死んだほうがいいのです。」
L「いや、驚いた。それじゃまるで…そうか、お前、そいつのこと愛しているー」
最後の重要な言葉は、アリー彗星を見る驚きの声にかき消されてヴァイオレットには届かないのですが…
そこで、リオンは決心する。天文台に籠る写本家ではなく、旅に出て文献を収集する父と同じ仕事に就くことを。
閉じ込められていた扉の向こうへ跳び出す勇気をリオンはヴァイオレットからもらったのでした。
この話もとても重要かつ良い話でした。
【第7話】
観劇するヴァイオレット
(リア王より)「ああ、私はこの罪を背負って生きるしかない。この先、一生。」(今回のテーマ)
かつて人気の劇作家が、今は酒浸りで自堕落な日々を送っている。
新作の戯曲が書けなくて、挙句にドールに代筆を頼むという、それやっちゃダメでしょ!
結局、その人の事情と背景を知ることが肝要なのですね。
ここでは、フリルの付いた水色の日傘が登場します。亡くなった娘の持ち物でした。
作家の現在が、娘のオリビアが原因であったことを知ったヴァイオレットは共感する。
V「大切な人と別れるということは、二度と会えないということは、こんなにも寂しく、こんなにもつらいことなのですね。」
ここで、ヴァイオレットは初めて涙を流す。ますます学習してますね。
「神様なんていないと思っていたが、いるならきのことだろう。」
H「君は自分がしてきたことで、どんどん身体に火がついて燃え上っていることをまだ知らない。
そして、いつか自分がヤケドしていることに気付くんだ。」
帰りの船上で美文の体が燃えていることに気付くヴァイオレット。
下船すると義母が出迎えていた。
まず、自分がした非礼を詫びる(学習済み)。
その時、少佐がなくなっていることを初めて知らされるのであった。
ヴァイオレットは、社長のところへ飛んで行き、問い質すが、少佐の詞をどうしても受け入れることができない。
そして、テロップ『 (空白) 』
【第8話】
戦争時にフラッシュバック、
ディートフリート大佐が弟のギルベルト少佐に土産を渡す場面から
D「そいつは子供ではない。
そいつは武器だ。
ただの戦う道具だ。」
子どもの権利条約無視、人権侵害ですが、戦争の最中。それでも、凄まじい偏見。
ライデンシャフトリヒ海軍省のディートフリート大佐に面会に行く。少佐が未帰還であることを確認するためにだ。
D「やはり武器は武器だな。」
こちらも、相変わらずである。
そして、再び戦時下へ
感謝祭の夜、町の出店で少佐はヴァイオレットに感謝を込めて贈り物をする。
それが、緑のエメラルドのブローチ
この時、「美しい」という言葉を知る。
V「少佐の瞳は美しいです。」
以来、このブローチは少佐そのもの、ヴァイオレットが何度もしかっりと握りしめるシーンが映し出される。
【第9話】
ヴァイオレット最大の危機、そして立ち直りの回
少佐が右目に銃撃を受けた後の、あの気になるシーンから始まる
この物語の中で最も凄惨な場面、ヴァイオレットが如何にして両手を失うか
失ってもなお、口で咥えてまで少佐と一緒に逃げようとする。
少佐「生きるんだ、ヴァイオレット。君は生きて自由になりなさい。…心から…愛してる」
そして、その後の展開も明らかに
V「あ・い?…あいって何ですか?分かりません。私、分かりません!」
戦争のシーンが度々現れますが、正しい戦争なんてありません。
正義か悪かは国家が決めること。戦う人と人とは、ただ殺しあうだけのこと。
ガルダリク軍(いつも同じ顔の損な役回り)の兵士も必死なんです、生き残るために。
戦争の悲惨さを訴える反戦映画ではないので、この先がテーマです。
呆然とするヴァイオレットに会社へ帰ろうと声をかけるホッジンズ
今回の社長は、ただ優しいだけの男ではなく、厳しく見守る立派な大人です。
H「どうするかは自分で決めるしかない。燃えあがった体と向き合って、受け入れた後に」
会社に帰ったはいいが、部屋に閉じこもり悶々とするヴァイオレット。
子犬がじっと見つめているところがいいですね。
妄想の中で、愛しい少佐が嫌みな兄に入れ替わって痛烈な一撃を
少佐「手紙か、多くの命を奪ったその手で…人を結ぶ手紙を書くのか。」
V「少佐、私はどうしたら…命令をください!」
まだ、同じところに留まっているヴァイオレット
彼女を動かしたのは、ローランド爺が届けてくれた一通の手紙でした。
ロー「どれ一つをとったって、誰かの大切な想いだからな。届かなくていい手紙なんてないんだ。」
その手紙はエリカとアイリスからのもので、「心配している」「待っている」という
伝えたい気持ちをしっかりとヴァイオレットに届けたのでした。
動き出したヴァイオレット
早速、ルクリアの兄スペンサーから依頼の仕事を果たす。
それは、もう一度やり直す気持ちになった自分を、支えてくれた妹への感謝の手紙でした。
V「それは、私が生まれて初めてもらった手紙です。
手紙をもらうというのは、とてもうれしいことなのだと分かりました。」
ヴァイオレットも同じくやり直す気持ちになれたのですね。
帰りの道中で、新聞に、そしてポスターに、自分が成してきた仕事の成果が披露されます。
そして、社長室に一心不乱に駆け上がるヴァイオレット
V「私は自動手記人形でいていいのでしょうか?
生きていていいのでしょうか?」
H「してきたことは消せない。でも…、…
でも、君が自動手記人形としてやってきたことも、消えないんだよ。」
テロップ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』
やったね!社長。あんたはどえらい社長だ!
【第十話】
今回は、この物語の中での紛うことなき白眉
この悲しくも、限りなく素敵なアンのエピソードが劇場版へと発展していくのですね。
これは絶対に他人と一緒に観てはいけません。
必ず一人で見てください。
人目を気にせず泣けますからね。
嗚咽を我慢せずに、清らかな涙を流せますから。
何度見ても、と言うより見るほどに
初めから最後まで、いつでもどこでも、目が潤みっぱなし。
ドライアイの人には打って付けの物語です。
文章で表現するのは、物語を陳腐にするだけですので、ただ一つ
50年にもわたって、誕生日に手紙送り届けるというアイデアの素晴らしさ!
それに、遠く離れていても
テロップ『愛する人は、ずっと見守っている』
【第11話】
今回の依頼主は、戦闘地域にいる人だった。
しかし、ドールは、お客様がお望みなら、どこへでも参るのが信条
ヴァイオレットは、周りの反対を押し切って、仕事に赴くのであった。
ここから、戦争の匂いが濃く漂い出す。
そして、2話連続の最終章へとなだれ込む。
【第12話】&【第13話】
ガルダリク帝国とライデンシャフトリヒ両国の平和協定締結のため
ドールとして派遣される(そんな重大な仕事までやるんかい!)
D大佐も護衛として同行
そして、それを阻止する反乱分子との最後の活劇
列車上での戦闘シーンは、まるで攻殻の少佐そのもの
サイボーグと化した戦士のごとく弾丸をよけるのも、義手が千切れていくシーンもあり。
間一髪で、危機を脱し、平和協定締結となる。
平和を象徴するかのような「航空祭」
ドールたちも命名自分の手紙を書くことに
もちろん、ヴァイオレットもはじめての手紙を書く。
そこで、例のD大佐と出くわす。
D「あいつの分も、お前は生きろ。生きて、生きて、生きて、そして、死ね。これが俺からの最後の命令だ。」
V「もう、命令はいりません。」
軍人であるD大佐の限界のお言葉でしょう。
でも、ヴァイオレットはもう自立しているのです。
そして、大佐のモノローグ
「俺が捨てた道具を
ギルベルトは道具として扱わなかった。
だから、それは両腕を失い
主を失っても
あいつからもらった大切なものを
決してなくすことはないだろう」
最後に、ヴァイオレットから少佐への手紙
だから私も生きて、生きて、生きて
この先何があるかわからなくても
ただ生きて
そして、また会えたら、こう伝えたいのです
私は今、愛してるも少しは分かるのです
テロップ『自動手記人形と「愛してる」』
見事に完結しました!
最後に二つ
2018年冬季のアニメには、もう一つ「宇宙よりも遠い場所」という
甲乙つけがたい、傑作アニメがあるのですが
同時期に2つも傑作がつくられるとは、奇跡と言っていいのかも
その後、京都アニメーションであのような凄惨な事件があったこと
そして、今年、素晴らしい劇場版が上映され
ヴァイオレット同様に、京アニが見事に復活されたことを
心より喜び申し上げます。
ここまで、長文と駄文にご付き合いいただきありがとうございました。
ブルーレイを注文しました。
不備や欠落を後程補填したいと思います。