Fanatic さんの感想・評価
3.5
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 1.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
小気味よい純エンターテイメント作品
制作はマッドハウス。
細田守監督に、脚本は奥寺佐渡子さん、キャラデザは貞本義行さん。
「時をかける少女」とまったく同じ布陣です。
「時かけ」は、私にはあまり刺さらなかったのですが本作は普通に楽しめました。
作画は、2009年の作品とは思えないくらい綺麗。
「時かけ」でなんとなく漂っていたジプリっぽさが消え、キャラクターは少しシャープなデザインに。
どちらが好きかは人それぞれですが、本作の方が、エヴァのイメージの強い貞本義行さんらしい気はします。
ヒロイン、夏希の実家に集まった親戚の面々があまりにも大人数で最初は戸惑いましたが、日本の原風景のような光景が、サイバーバトルという硬質なテーマを中和してとても親しみやすい空気感を作り出していたと思います。
〝アルバイト〟を頼まれて、夏希の実家を訪れていた主人公・健二が、夏希の親戚たちと力を合わせて、謎の人工知能・ラブマシーンと戦うというストーリー。
わちゃわちゃといろんなキャラが入り乱れる中で、唯一含蓄のあるキャラとして登場するのが、夏希の曾祖母・栄おばあちゃん。
国家の緊急事態に際して、国の関係各所に指示を出すような謎の人物ですが、初対面から健二のことを気に入り、「夏希を頼む」などと、曾孫の将来を託すような発言まで。
健二の何を気に入ったのか明確にはされていませんが、このカリスマおばあちゃんの発言が、まとまりのなくなりそうなシナリオに一本筋を通し、先の展開をも暗示して観客の視点を落ち着かせていたような気がします。
イベントもテンポよく配置され、次々と変わる展開のおかげで中だるみは感じませんでした。
終盤の、ラブマシーンとの対決では、侘助、佳主馬、夏希、そして健二と、バトンリレーのように見せ場が繋がり、テンプレではありますが、嫌味のない小気味良さでクライマックスまで一直線。
ベタと言えばベタですが、下手に小難しくしたり教訓めいた要素は入れず、分かり易さに特化したことがお茶の間に親しまれている理由なのでしょう。
他人との団結やサイバーバトルと言った主題が、気負わずに表現されていた点は好感を持てます。
CVについては、本作でもほとんど本職の声優さんは使わず、俳優を起用。
情緒的な表現が求められるシーンもなかったので、「時かけ」などに比べればさほど気になりませんでしたが、それでもやっぱり、褒められた演技ではなかったです。
特に健二役の神木隆之介さんは、モゴモゴボソボソと聞き取り辛くて、演技以前に発声に難アリといった感じでした。
本作を観ると、「君の名は。」で瀧くんを演じた時は、あれでもだいぶマシになってたんだなぁ、と分かりました。
栄おばあちゃん役の富司純子さんはとても良い演技をされていたと思いますし、本職の声優ではなくても、もう少しどうにかなりそうな気はするんですが……。
{netabare} ラストは、健二の活躍を見て好意を抱いた夏希と、イチャコラしながらフェードアウト。
それまで、あまり恋愛的な匂いを感じさせない作品だったので、突然の展開はちょっとしたサプライズでした。
ラストシーン自体には不満はありませんが、「え?そんな簡単に好きになっちゃうの?」と、やや唐突にも感じたので、もう少し途中途中で心理描写を織り交ぜてくれても良かったかも。
もっとも、謎のカリスマ、栄おばあちゃんの「夏希を頼む」というフラグ発言が、ラストシーンの暗示としても機能していたのでしょう。{/netabare}
全体的には、肩肘張らずに楽しめる純エンターテイメントの良作だと思います。