Fanatic さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.5
作画 : 5.0
声優 : 1.5
音楽 : 4.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
ラストシーンを、わたしなりに考察(◍>◡<◍)
まずは作画から。
新房監督×シャフトの劇場版アニメということで、当然クオリティは高いです。
もっとも、これくらいの物は作ってくるだろうと予想はしていましたから驚きもないですが、キャラデザも物語シリーズ等を手掛けた渡辺明夫さんなので、一目でシャフトと分かる絵作り。
シャフト節はそこまでキツいとも言えませんが、それでもアニメを観慣れていない一般層には、ちょっとエキセントリックに映るかもしれませんね。
序盤、花火を横から見ると、丸いか平べったいか……という疑問について、男子生徒たちが真剣に話し合っているシーンがあります。
中学生にもなってそんなことも分からないのかな?と違和感を覚えましたが(今は平面的な特殊花火もあるので、平面が一概に間違いとも言えませんが)、これの原作は、設定が小学生なんですね。
花火についての話題は作品の根幹に関わるので変更はできなかったのでしょうけど、それならなぜ、わざわざ中学生の設定に変えたんでしょう?
小学生の設定のままでは売れないと思ったのかな?
そんなこともないと思うのだけど……。
内容は、いわゆるタイムループもの。
主人公の島田典道が「もしもあの時、〇〇だったら……」と呟いて謎の玉を投げる度に、分岐点まで遡って過去をやり直せる、というお話。
但し、単なるタイムループではなく、過去に戻る度に、友達の意見が変わったり、電車が海の中を走ったりと、世界に異変が起こっていきます。
世界線の移動ではなく、トワイライトゾーンのような平行異世界に迷い込んでいく感じは、湯浅監督の「四畳半神話体系」に少し似ています。
主人公二人のCVは評判が悪いようですが……確かに、これは擁護できないか。
典道役の菅田将暉さんのミスキャストが悪目立ちしていますが、及川なずな役の広瀬すずさんも、良いわけではありません。
脇役のほとんどは本職の声優さんで固められているので、余計に主人公二人の拙さが浮いてしまっています。
この手の劇場版アニメを観る度に思うのですが、いい加減、本職以外の俳優を起用するのは止めて欲しいなぁ、って思います。
話題作りで脇役に起用……くらいならまだいいのですが、メインキャラともなると、作品に対する影響度が悪い意味で大きすぎます。
ただ、この作品が埋もれてしまった根本的な理由は、脚本が地味だということに尽きるんじゃないでしょうか。
脚本を担当された大根仁さんはテレビドラマなどを中心に活躍されている方で、アニメ作品に携わったのは本作だけ。
そのせいかどうかは分かりませんが、展開にワクワク感もないですし、印象的なシーンも少ない。
脚本のせいではありませんが、典道も、魅力的なヒロインのなずなに比べてかなり見劣りするというか……ぶっちゃけ、カッコ良くない。
個人的にいいなと思ったのは、なずなが親に連れ戻されそうになった時、思いのたけを叫ぶシーンと、同じくなずなが瑠璃色の地球を歌うシーンくらいでしょうか。
致命的だったのは、ラストシーンの分かり辛さ。
以下では、私なりに、ラストシーンについて考察を加えてみました。
ネタバレ度が強いのでご注意下さい。
{netabare}
クライマックスの海のシーン、
なずな「ねえ典道くん、次会えるの、いつかな?」
典道「え?…あっ……なずな!……」
なずな「……なによぉ? 言ってよぉ?」
典道「俺は、なずなのことが……」
ここで、砕け散る謎の玉と共に、空に散らばる欠片たち。
その一つ一つに、二人の〝未来〟の映像が映し出されていきます。
最後に典道が掴んだ欠片には、口付けを交わす典道となずなの姿が……。
それを見て、何かを決意したように海へと飛び込み、なずなの元へ向かう典道。
恐らくこの時、彼はなずなと共に別の世界へ旅立つ決心をしたのではないでしょうか。
二人を祝福するように輝く、満天の花火。
再び見つめあい、微笑みを交わし、抱き合う二人。
なずな「次会えるの、どんな世界かな?」
どう答えてよいのか分からず、黙ってなずなを見つめ返す典道。
やがて、「楽しみだね」と囁いて典道の元から泳ぎ去っていくなずな。
少し寂しそうに微笑むなずなと、ボォ――ッと彼女を見送る典道……。
一瞬、離別ルートの結末だったのかな?と思いましたが、ラストの教室で典道も消えていたことから、やっぱり二人は別の世界で結ばれたんだと解釈しました。
一緒に泳いで行かなかったのは、これまでの世界に全く未練のないなずなと、まだ僅かに後ろ髪を引かれる典道の違いかな?
ただ、見ようによっては、二人で神隠しにあったような不思議な印象も受けます。
様々な解釈ができる余白を残したラストシーンは、狙ってそうしたのでしょう。
しかし、全編を通して観念的・抽象的な演出が多かっただけに、最後くらいは制作サイドの解をはっきりと示したラストシーンが用意されていたなら、評価もだいぶ違っていたように思います。
{/netabare}
以下は、テーマ曲「打上花火」の一節です。
パッと光って咲いた花火を見ていた
きっとまだ 終わらない夏が
あいまいな心を 溶かして繋いだ
この夜が 続いて欲しかった……
――酷評が多いようですが、そこまで悪い作品ではないと思いますよ(ˊᗜˋ;)