Ka-ZZ(★) さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
昭和20年、広島・呉。わたしは、ここで生きている。
この作品の原作は未読ですが上映された当時、のんさんが主人公に起用されたことなどで話題になっていたので作品の存在自体は知っていましたが、中々機会が合わず今回ようやく視聴することができました。
18歳のすずさんに、突然縁談がもちあがる。
良いも悪いも決められないまま話は進み、1944(昭和19)年2月、すずさんは呉へとお嫁にやって来る。
呉はそのころ日本海軍の一大拠点で、軍港の街として栄え、
世界最大の戦艦と謳われた「大和」も呉を母港としていた。
見知らぬ土地で、海軍勤務の文官・北條周作の妻となったすずさんの日々が始まった。
夫の両親は優しく、義姉の径子は厳しく、その娘の晴美はおっとりしてかわいらしい。
隣保班の知多さん、刈谷さん、堂本さんも個性的だ。
配給物資がだんだん減っていく中でも、すずさんは工夫を凝らして食卓をにぎわせ、
衣服を作り直し、時には好きな絵を描き、毎日のくらしを積み重ねていく。
ある時、道に迷い遊郭に迷い込んだすずさんは、遊女のリンと出会う。
またある時は、重巡洋艦「青葉」の水兵となった小学校の同級生・水原哲が現れ、
すずさんも夫の周作も複雑な想いを抱える。
1945(昭和20)年3月。呉は、空を埋め尽くすほどの数の艦載機による空襲にさらされ、
すずさんが大切にしていたものが失われていく。それでも毎日は続く。
そして、昭和20年の夏がやってくる――。
公式HPの「ものがたり」を引用させて頂きました。
戦時中のごく一般的でありふれた家庭における生活が描かれています。
決して豊かとは言えないつつましい生活ながらも、その家庭ならではの笑顔が溢れていました。
当時は隣近所との付き合いも深く、「困ったときはお互い様」的な空気が浸透していたのが作品を通して窺えます。
戦況が落ち込んでも変わらない関係性が保てていた古き良き時代だったと思います。
こういう話題はこれまで数多く取り上げられてきましたがが、この作品で個人的に新しい視点だと感じたのは、一般人の戦争に対する思いです。
昼夜を問わず鳴り続けた空襲警報に気力・体力共に奪われ、この呪縛から早く逃れたいと思っていた人は大勢いると思います。
配給物資がだんだん減っていく中、モノが何もない状況でも耐え続けたのは日本に勝ってほしいと願っていたから…
ですが、戦局が絶望的になってきたと国民が気付き始めたのは、やはり本土決戦に移行してからでしょう。
「一億玉砕」や「進め一億火の玉だ」などのスローガンは当時の国民の目にどう映っていたのでしょう…
それでも、必死で戦っていた国民がいることを決して忘れてはいけないと思いました。
特別なことは何もしていません…そもそも一般人に出来ることなんて限られていますから、特別なことは何もする必要はないんです。
規律を守り、慎ましいながらも日々を生き抜いていく…
これだって立派に戦っていると言えると思います。
日本の敗戦を伝える玉音放送の受け止め方は人それぞれで正解も間違いもありません。
だからすずさんの言動に、戦争の日々を過ごしてきた日本人の気概を感じた気がします。
そして戦争は人々から大切なモノを奪い去っていきます。
家族、恋人、仲間、友達、そして居場所…
掌から零れ落ちるのは一瞬です。
上映時間は約130分、アニメーション制作はMAPPAさんで、数々の受賞歴を持つ作品です。
気になる方は是非本編でご確認頂ければと思います。
私はしっかり堪能させて頂きました。