えりりん908 さんの感想・評価
2.5
物語 : 2.5
作画 : 2.5
声優 : 2.5
音楽 : 2.5
キャラ : 2.5
状態:観終わった
これってつまり、逆ホラーパターンですよね?
「王様ゲーム」とか「ダーウィンズゲーム」とか、
各クールに存在する、理不尽なスプラッターホラー。
収拾のつかないまま終わっちゃうと王様ゲームみたいになってしまうし、
世界観と展開の辻褄が上手く合ってまとまるとダーウィンズゲームになる。
無能なナナって、
こういう作品と同じ、なんですね。
それで、最初の頃に感じていたことは、{netabare}
殺される側の人間だけからの視点で、理不尽な残酷を描き、
その恐怖や不安を描くっていう今までのホラーと違って、
反対側の、殺す側の登場人物の視点をメインに据えているというのが、
新しいスパイスになるかも?っていう興味でした。
次々に殺されていく絶海の孤島に集められた子供たち。
まだ、事態の深刻さに気付かないままの能天気な人とかの中で、
暗殺行為の事実、暗殺者の存在に考え至り、
対策や反攻を考える少数の登場人物。
この視点だけで展開すれば、王様ゲームと同じ。
つまり、見飽きたパターンで、つまらない。
これを、
殺す側=支配者とかゲームマスターとか・・・の手先の視点で、
ひそかに頭を使って暗躍して、一人ずつ殺していく展開!
しかも殺される側は人智を超えた超能力者たちで、
暗殺者は、何の超能力も持たない、ただの無能力者!
この演出で、サスペンスとして描くと、
面白いぞっていう実験的な試みですね。
実際、超能力者側の視点も、
暗殺者の視点も、
両方描かれているから、新味はすごく、感じました。
どちらの陣営に感情移入するか?ではなく、
この対立構造がどういう風に決着するのか。{/netabare}
手垢にまみれたジャンルでも、
演出と構成の工夫で、
面白く観れるっていうのが、
新しい!と思いました。
でも、途中からムクムクと、違う感情が芽生えて大きくなってしまいました。
それは、{netabare}
ナナに対する嫌悪感、というか、全然共感できないキャラクター設定。
これがすごく、大きかったと思います。
まずナナにとって最大の頼みの綱みたいな小道具である、ナナのスマホ。
何の機能ももたないスマホなのに、それでいて、
島に暮らす生徒たちの「推定殺害人数」は表示されるけど、
その根拠が全く見えないんです。
ナナが、生徒ごとの能力を知って、そのうえで「推定殺害人数」と突き合せれば、おかしいぞ?って誰でも気づけることなのに、
全く疑問を持たずに無辜の生徒たちを暗殺し続けるのが異常過ぎて、
ナナは明らかに洗脳されているというキャラ設定をくっつけて、
視聴者の共感可能性を捨て去らせる制作姿勢。
人を殺すための毒物取り扱いの技術や、心理操作にたけたプロファイリング能力と、この、被洗脳者であるという精神的な破綻って、
あきらかに視聴者の反感を買うものだったと思うんです。
{/netabare}
そして、それと対になるように、{netabare}
ナナを追い詰める役回りのはずの、キョウヤの、
不老不死設定と、その設定の扱いづらさのために作品を作り続けるうえで使い勝手が悪いからって、
途中から彼の洞察力をもぎ取って、ただのモブキャラにしてしまって、サスペンス展開を出来なくしてしまったこと。
{/netabare}
さらには、ミチルという、{netabare}無垢の存在のクローズアップのタイミング。
この展開自体は、無しではないと思います。
でも、これをやるなら序盤に、
ナナが自らの暗殺者としての使命や、
自分のせいで父母を殺されたという暗い記憶に、
自ら疑問を感じ取るという展開を提示して、
もっとキャラクターが斬新な方向で躍動できるようにするべきだったと思うんです。
それを、終盤のクライマックスに持って来て、
感動譚のように変にまとめようとしたりするから、
観ている側は、
尻切れトンボな感覚と、
結局何を見せられていたんだ?っていうストレスだけを、
滓のように残してしまうんだと思います。
{/netabare}
そもそもダメなのは、
超能力者が存在すると分かった段階で、
{netabare}その超能力者を絶海の孤島に追いやれる程度にはコントロールできるのに、
なぜ孤島に追いやったうえで、
実現できるかどうかもよく分からない一人の無能力者の手で、
殺させなければいけないのか、全然解らないっていうことです。
人類は、残酷なほどに利己的です。
超能力が実在するものなら、医学・生理学にも、物理学や工学にも、そしてもちろん軍事や暴政や独裁や大量殺戮にも利用しようとする、
すなわち「Charlotte」や「亜人」的に、悪用も含めてどん欲に研究・利用を指向するものなのじゃないかって、
当然、視聴者は考えますよね?
それを一切しないのなら、納得できる理由をちゃんと用意しないと、根本的にダメだって思うんです。{/netabare}
結局は、王様{netabare}(しかもかなり、幼稚で愚かな王様){/netabare}の視点で「王様ゲーム」を、
それも間抜けで陳腐なやりかたで描いた、
着眼点だけは面白かったけど、物語の構成力が圧倒的に足りなかった作品だということなんでしょう、というのが、
最後まで観て思った結論です。