Fanatic さんの感想・評価
3.9
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 2.0
状態:観終わった
緻密な心理描写と駆け引き重視の野球物
A-1Pictures制作。
監督は「SHIROBAKO」や「ガルパン」の水島努さん。
原作は未読ですが、『月刊アフタヌーン』で連載中の漫画のようです。
スポ根ものは結構好きなジャンルなんですが、本作は、根性というよりも心理描写や駆け引きの描写にかなり重きが置かれています。
近年の野球物の中では「ダイヤのA」が比較的近い気がしますが、野球独特の心理戦を軸にした駆け引きの描写はダイヤ以上にきめ細かいです。
その意味では、従来のスポ根ものよりも、「ONE OUTS」のような駆け引き特化の作品の方がむしろ近いかもしれません。
一球ごとに変わるキャッチャーとバッターの読み合い、ベンチワークから読み取れる相手チームの作戦etc……。
グラウンドで相対する選手同士だけでなく、実にさまざまな状況を常に分析しながら動いている選手たちに、「野球選手ってこんなにいろいろなことを考えながらプレーしているのか~」と感心しきりでした。
こりゃ、頭が良くないとできないスポーツですね。
第一期の半分近くを占める桐青戦では、ほぼすべての打席の結果が描かれていて、それによって刻々と変化する戦局と、それに合わせた両チームの作戦や戦術が丁寧に描かれています。
応援席で、野球とはあまり関係ない話題で盛り上がる保護者の会話なんかもほのぼのしていて良かったです。
作画も綺麗で、十年前の作品ですが、さすがはA-1という出来でした。
選手の動きはもちろん、普通は静止画で済まされそうな応援席の様子も、一人一人が動く楽器演奏シーンなど丁寧に描かれていると思いました。
主人公は、すぐにウジウジメソメソいじけてしまう野球少年、三橋廉。
中学時代は学園経営者の孫という理由でエースになっていましたが、どんなに打たれてもマウンドを譲らなかったため試合には負け続け、チームメイトからも嫌われることに。
その罪悪感から自信をなくした廉は、野球を止める覚悟で外部の西浦高校を受験しますが……。
そこで出会ったのが、野球部の捕手、阿部隆也。
廉の、スピードは遅いながらも独特の球筋と抜群の制球力に気づいた彼は、廉を自分の言いなりに投げさせれば公式戦でも勝負になると考えて……というところから物語がスタート。
西浦高校野球部は、軟式から硬式に変わったばかりの新生野球部で、顧問は数学教師、監督は女性、しかも部員は一年生ばかり。
そんな弱小野球部が甲子園を目指して頑張っていくというのは、王道物が好きな方にも響くシチュエーションじゃないでしょうか。
唯一、個人的に馴染めなかったのは、廉の極端に卑屈で自虐的な性格です。いつでもとにかく、何かというとビクビク、ウジウジ。
新しい仲間と過ごすうちに少しずつ変わっていくのかと思って我慢していましたが、結局大した変化もなく、ずっとそのままでした。
正直、この主人公の性格が合わずにすぐに切ろうかとも考えましたが、設定やストーリーに惹かれてずるずると視聴継続。
結局一気に完走したので、評価としてはとても面白かった作品ということになりますが、やっぱり主人公の性格だけは最後まで好きになれませんでした。
序盤は仕方ないとしても、周りはみんな、廉をエースとして支えていこうと頑張っている仲間達ですし、もう少し心を開くとか、信頼して成長していく様子なんかが見たかったなぁ……。
それだけ中学時代のトラウマが深いということなんでしょうけど、そんな廉の境遇を慮れない私は冷たい人間なのかと、軽く自己嫌悪に陥ります。
とりあえず、主人公の性格以外はとっても楽しめる野球アニメでした!