遊微々 さんの感想・評価
4.9
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
灯台下暗し
原作:森見登美彦×監督:湯浅政明
このタッグにより2010年にノイタミナ枠で放送された本作ですが、その独特のストーリー構成と、溢れんばかりの感性が惜しみなくつぎ込まれた映像は、アニメーションの枠を超えた一種の芸術作品とも形容できます。
放送当時は書店等でも映像が流されプッシュされていましたし、それが視聴するきっかけにもなったのでよく覚えていますね。
<あらすじ>
バラ色のキャンパスライフを夢見る主人公の「私」は、キャンパスライフを謳歌するため意気揚々とサークルに加入するも、自分の思い描いていた未来とはまるで違う不毛な2年間を過ごしてしまう。そのたびに「1回生のあの時に戻りたい」と「私」は願う、そして開かれる新たなる道・・・・
要約すればループものに近いようなパラレルワールドを描いた物語。主人公である「私」は「あの時こうしていれば」「別の道を選んでいれば」といつも後悔し、そのたびに時が遡り別のサークルを選んだ場合のストーリーが展開されるわけだが、結局そこで待ってるのは形こそ違えどやはり不毛な2年間を過ごす「私」の姿。
皆さんもこういう経験ありませんか?「あの時こうしていれば」は誰もが一度は思い描くことですが、しかしそれは多少形が変化するだけであり、自分自身が大きく変わらなければ結局待ち受けているのは満たされない結果である、というのが今作の一つのテーマであったように思います。無論環境の変化は自分自身の変化にも直結するため、必ずしも誰もがそうとは言い切れないかもいれませんが、あの時別の選択を選んでいた方が良かったというのも確たるものでもありません。
自分もついついこういう考えを巡らせてしまいがちですが、その度に自分に次のように言い聞かせて納得しています。「今自分が選んだ道こそ最良の選択だった」と。あの時別の選択をしたことで事態がもっと悪い方向に転がっていたと考えればどうです?簡単に戻りたいとは思えなくなりませんか?
そして今作が伝えるもう一つ大事なことは、目の前に転がっている好機を見逃してしまわないことですね。自分の思い描く理想や先の未来にばかり目がいって、目の前にある些細なきっかけが見えていないなんてこと、もしかしたら誰にでもあるのかもしれませんね。案外自分にとってプラスになるのはそんな何気ない小さなことだったりするのかもしれません。大事なのはそれに気づけるか、そして信じられるか、今作を見てそのように思いました。
OPを担当するのはアジカンこと「ASIAN KUNG-FU GENERATION」。詳細は知りませんが、今作のキャラクター原案を務めている中村佑介氏がアジカンの全てのCDジャケットのデザインを手掛けているので、それが縁だったりするんでしょうかね。アジカンと言えば「リライト」のようなシャウトの効いたサビが特徴的だったりしますが、今作OPの「迷子犬と雨のビート」はそんなイメージとは異なる曲調です。正直結構好きですね。
放送当時はイマイチ理解が及んでおらず、なんか雰囲気スゲーくらいにしか感じ取れてなかったような気がしますが、この歳になって見返すとまた新たな発見が色々出てきますね。これだからアニメの視聴はやめられません。