「アクダマドライブ(TVアニメ動画)」

総合得点
76.5
感想・評価
366
棚に入れた
1255
ランキング
706
★★★★☆ 3.7 (366)
物語
3.7
作画
4.0
声優
3.8
音楽
3.6
キャラ
3.7

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ネタバレ

TAKARU1996 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

この、クソッタレな世界に、精一杯の悪を込めて。

2020年12月25日記載

衝動的に書きました。適当に書いた散漫文章故、読みにくいのはご了承下さい。





クリスマス・イヴ。めでたく最終回を観終えて「傑作とは、本作のような作品を指すんだろう」と深く痛感致しました。
大人になってほぼ無縁なイベントと化したこの日。そんな無価値の聖夜の中で、最高のクリスマスプレゼントを戴けた心境。今を生きる僕等に向けて、これから先の世界を歩む人間の生き方を確かに示し、最後まで駆け抜けさせてくれた次第。一生心に残る作品だろうと、魂にビートが刻まれた瞬間です。


「え、何このアニメ知らない」って思った人、貴方は運が良いですよ。この「爽快感と躍動感の塊みたいなスピード的熱狂」に触れる最高の機会を、ここから一気に体感出来るんですから。
そして、そんなスタイリッシュバイオレンスアクションが踊る中、彼等彼女等の生き様に触れて、気がつけばそんな人間達の信念から至る物語に、心から一気に酔いしれられるんですから。

『アクダマドライブ』

それは、悪人と称される方々の物語です。世間的には罪人とされる碌でもない奴等の集い。社会でそんな立ち位置に属する、人間としてどうしようもない彼等は「アクダマ」と称され、そこに「notアクダマ」の一般人と「アクダマ」の運び屋が巡り会った事で始まる、500Yen以上の価値を秘めたクライムアクションSFストーリーです。
前提情報は上記で充分。いや、正直何も必要ないかもしれない。取り敢えず1話を観れば良い。恐らくあまり巡り会った事のない、映像表現の斬新世界へ瞬く間に惹き込まれてしまう事でしょう。


年末へと至る無礼講って事で、この際だから遠慮なくぶっちゃけます。

今年1番のアニメです。

放送前から期待していた為、最初から強く心惹かれてたんですが、そのまま見事最後まで、一気に突っ走ってくれました。
オリジナルアニメが異彩を放っていた2020年。其の中でも正に珠玉の出来。供給過多粗製乱造時代の昨今において、本作が生まれ出てくれた事に関しては感涙滂沱の極みです。

僕は運び屋が1番好きだったんですけど、彼には本当にやられました。
一般人をあくまで対等に扱い、何だかんだでほっとかない其の心意気。感傷に囚われず、理性的に物事を遂行する中、自らの信念だけは徹底して貫き、相手の立場も尊重して受け容れ、助力するだけの度量を持つ。
正に同じ男として、理想の生き方を体現させたハードボイルド。僕はコイツの生き様で、心をガッシリと掴まれました。別のキャラを好きになった人は恐らく、僕とはまた違った価値観をその身に獲得する事でしょう。


全話観終えて思ったのは、毎週生み出されるクオリティの凄さ。言う事無しの文句無き完成度。確実にスタッフ全員が神魂込めて作り上げた作品の代表であり、アニメ新時代へ触れたような本気を、本作では強く拝見した次第。

「良くぞこの傑作を世に出してくれた」

観終えた今は感謝の気持ちに包まれた心境。他の追随を許さない圧倒的興奮で、僕等視聴者を物語の渦へ巻き込む運びと相成った始末。
「傑作」と称する他ない作品の誕生を、僕はめでたく目の当たりにしたのでした。



最後まで観て思った事
{netabare}
まず前以て述べておくに、本作には2種類の人間が居ると僕は考えています。

『悪玉』の人間と『悪魂』の人間。

前者はただの「悪」であり、後者は信念を持った「悪」と言えます。
まず『悪玉』について。衆愚や一部の処刑課が主に該当している悪玉は、信念も碌に持ち合わせていない只の一人間に過ぎません。
他者や世界に支配される事でしか自らの価値観を保てず、しかもその考えすら二転三転一新させて、明確な自己を持てない人間の総称。確固たる支柱を得ていない彼等は普通の人間。言わば「一般人」とも言い換えられましょう。

処刑課は最初こそ「正義」の信念を持ち合わせているように感じましたが、最後は全てが瓦解して、見る影も無い醜態を曝け出していました。
僕は昔から「正義」と言う言葉が大嫌いで、それをチャラチャラ口にする奴はもっと嫌いだったんですけど、御多分に洩れず本作の彼女等も酷かったですね。
自らが起こす行動の正当化だけの為に「正義」と言う言葉を利用した振る舞い。醜い性根以外をまるで感じませんでした。
それは彼等が、貫き通せない紛い物の信念を振り翳す他にない「悪玉」でしかない存在だったからです。
そこには甘えた現状しか無く「正義」と言う言葉を悪用して使うクソッタレな性分しかありません。

自分が正義だと勘違いするな、いつも自身を正しいと思うな。
揺らがない思想も持てない奴が、正義を知った風に語ろうとするな。

処刑課が歩んだ結末は、自分の道が正しいと崇拝してきた奴程、陥る復讐の連鎖です。そしてそれこそが「魂」を持たない「一般人」の常態となります。
魂と言う名の信念を貫き通せない者は、図らずもこの道へ進む他ありません。これ程までに醜悪な物は他に無いとも言えるでしょう。


そして「悪」の深奥。「悪玉」を超えた中心部に存在するのが「悪魂」となります。
これは前者とまるで真逆。他者も世界も関係なく、根底の価値観を内に秘めて統一、自身の信じられる道を歩んでいく、明確な自己を心に留めた人間を指します。
そして一般人は「悪玉」を乗り越えて「悪魂」になったからこそ、彼から受け容れられたんです。
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「あの……運び屋さんはどうして運び屋をしているんですか?」
「……」
「あ、いや! 私なんかが気にする事じゃないですよね!! 今のナシで!」
「俺の居場所だからな」
「え……」
「……居場所」

『アクダマドライブ』#03 MISSION:IMPOSSIBLE 一般人・運び屋
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「運び屋さん、私達をお兄さんの所へ運んでください」
「お前……俺を何だと思ってる?」
「推定懲役745年運び屋! 処刑課に囚われたお兄さんの下へ私達を運ぶ、こんなに高度な仕事他には無いでしょう?」
「くだらん」
「お金は払います。私の全財産10億Yenでどうですか?」
「はした金だ」
「はした金……10億Yenですよ。シンカンセンの時より高いんですよ?」
「今の俺にとっては、はした金だ」
「そんな……」
「……」
「もう最後までやるしかないんですよ」
「逃げる場所なんてどこにも無い」
「私に残っているのは……私の居場所はここだけなんです!!」
「……」
「良いだろう、受けてやる」

『アクダマドライブ』#08 BLACK RAIN 詐欺師・運び屋
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この「居場所」と言う言葉は「自分が自分でいられる為の拠所」「自らの信念を貫き通す事が出来るあり方」を指しています。
一般人は自身の事を詐欺師と称する他無かった程、自分に何も無い事を自覚していて。自分の事をアクダマとして誤魔化す他ない「全てが嘘偽りな居場所」の真っ只中に居た訳で。
個性が強すぎる周囲の中で佇む「無個性」に、彼女は密かに懊悩していました。
これは、そんな一般人が「悪魂」と言う居場所を得た中で、自らの在り方を貫き通す話であり、そんな信念に対して対等に応えた運び屋の話でも在ると言えるんです。

「何故運び屋が一般人の依頼を引き受けたか?」
それは、
「運び屋の思想と一般人の思想が同一化したから」
「一般人が運び屋の放った言葉『居場所』の意味に気付いたから」
「同じ信念に共感した彼が『悪魂』として対等に応えたから」です。
価値観の相違により対立する世界の中、描かれるのは「それでも『自己』を見失わずに己を全うする自由精神」に過ぎません。
そこに魂があるかどうかで、生き様がまるで変わる世界。それこそ「悪魂」を「悪魂」が運ぶ疾走寓話『アクダマドライブ』の意味を指し示したと言える次第。

よく本作の感想で「誰一人幸せになっていない」「結局死んで終わり」「ハッピーエンドが良かった」って感想を目にするんですけど、本作はそもそもピカレスク・ロマンであり、悪となった主人公達が報復を受けるのは、ある意味当然の所業とも言えます。
それが覚悟を貫き通した者に対する、物語が仕掛けた現実の手向けです。そこがまるで機能せずに「英雄崇拝」と「幸福な結末」で幕を閉じる駄作程、語る価値の無い物はないでしょう。

しかし「だから幸せじゃなかった」と言うのは、聊か短絡的に過ぎ去ります。

彼等は自身の「悪」を貫いて、それを正当化するような真似は決してしません。自らの振る舞いに真摯で居続け、決して意志は揺らぎませんでした。
だからこそ、自らの道を歩んでいく上で覚悟出来ていたからこそ、最期に「あの表情」を浮かべられたと感じるんですよ。
本作においては、信念を貫き通せてこそ、初めて満足気な最期を遂げられるキャラクター達の生き様があります。彼等は自らの思想を心行くまで全うしたからこそ、あんな希望の表情を浮かべる事が出来ました。
だからこそ「死んだから幸せになっていない!」と勝手に断言する行為程、愚かな事はありませんし「結局死ぬだけの御話でしょ?」と安易に纏められてしまう行為程、瑣末な事もありません。
僕の中で本作は「そういう物語」じゃないんですよ。


それでは『アクダマドライブ』とは、果たしてどんな物語だったか?
僕の回答はたった1つ。正当化しない、言い訳しない、そして必ず貫き通す「悪の魂」を描き切った物語です。
{/netabare}





『アクダマドライブ』は好きになったキャラそれぞれから、生き様の全てを教えられるアニメです。
軟弱な作風や甘い展開のアニメが多い昨今、それは恐らく、多数派の時流に乗れない要素を示す総称となります。
生き様をキャラクターが高らかに謳い上げ、クソッタレな世界の全てを自身だけが持つ自我だけで持って生き抜く格好良さ。それはマイノリティにしか受け容れられない憂慮もあり。
そして、この作品自体がそんな人間達にしか認められないカルト作品と化す可能性は否めないでしょう。

でも、本作を観て『悪魂』になった皆さんなら、そんなの関係ないですよね?
自分が好きだと言える物は、胸を張って好きだと言えますよね?
世界に揺れ動いて、自分を裏切るような真似だけは絶対しませんよね?

人間は『悪魂』であるべきです。それは、人間が人間として貫き通す生き様の証。自分勝手に身勝手に生きながらも、根底にある大切な衝動だけは命を賭しても守り通す、自らの魂を賭けた精神に他ありません。
世界がどのように変っても、世間がどう揺れ動いても、関係ない。
様々な病原菌、心を曇らせるニュース、クソッタレの上層部と、自身の信念すら多大に揺るがせてしまう事態が多くの数を占める世界。
そんな無慈悲へ生きる僕らに対して「どのように生きるか?」を描き切った最強のアニメ『アクダマドライブ』

俺は『悪魂』として、最大級の意志を込めて、本作を強く肯定します。
クソみてえな2020年の終わりの終わりに、最高のアニメをありがとう。


上出来だ。





P.S.
本文中では語れませんでしたが、映画好きとしては、製作陣が好きなタイトルを話の章題、中身に組み入れている所も本当に好きでした。
出てきた映画はいずれも世に生み出されるだけの秀逸さを内に秘めた作品なので、是非1度観てみる事を推奨します。
個人的オススメは『デッドマン・ウォーキング』『ロストチルドレン』『ウォー・ゲーム』

投稿 : 2020/12/31
閲覧 : 294
サンキュー:

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