TaXSe33187 さんの感想・評価
3.8
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 3.0
音楽 : 2.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
親切設計の野崎まど脚本
正解するカドやバビロンと比べるとかなり分かりやすく親切なまど脚本の作品
書籍作品の傾向で言えばknowあたりをもう少しエンタメに寄せてビジュアルで伝わる情報の比率を大きくした印象
量子コンピュータ内に再現された仮想世界という舞台で、
「実在した人物が実際に生活することで過去の世界を再現している」
という部分を利用した入れ子構造になっているのが面白い
大筋としては事故で死亡したヒロインを救うために未来の主人公が過去の主人公を導くってシンプルなものなので取っ付きやすい
この手の過去改変モノに付き物の「世界の強制力」ってやつが「再現されるべきデータへの修正」という形で描かれているのも分かりやすい
未来の主人公が語っていたとおり、
「完璧に再現された世界であり、かつ外からの観測が出来ないならば現実かどうかの区別に意味がない」
という枠組み通りの部分でハッピーエンドを描きつつ、ラストシーンで更にもう一段どんでん返しを仕込むのはさすが野崎まどといった感じ
タイトルの意味も序盤・終盤・ラストでそれぞれに紐付けられていて、その点でも感動してしまう
難点は2つで、1つは単純にSFが苦手な人は理解を拒否するだろうなって点
野崎まど作品としては「うさぎさん」の次くらいにはシンプルなんだけど、それでも慣れない人は振り回される感じがあるかもしれない
もう1つは個人的な趣味になるんだけど、音楽の使い方が正直悪い…というか嫌い
「君の名は」みたいな演出で昨今の流行に合わせようとしたんだろうけど、あの手法自体があんまり好きじゃない
作画(CG)の良さもあって全く見れないわけではないけど、ただの青春モノみたいな雰囲気の邦楽をジャカジャカやられてもうるさいだけ
ボーカルが前面にでたような陳腐なミックスは映像に合わせるつもりがなく、しかもボリューム自体が大きすぎて没入が削がれる
そうやって素に戻って聞かされるのが「この作品ならでは」みたいな雰囲気のない陳腐な邦楽
歌詞が素敵なの!みたいな意見もあるだろうけど、歌詞がなきゃ価値を見いだせないなら映像を支えるための挿入歌としては3流
曲としての魅力が感じられないのにボーカルがドヤ顔で前に出てきて映像を邪魔するのは本当にやめてほしい
挿入歌を抜きにしてもこの作品はBGM全般を通して聴き応えがなかった
同監督のSAOみたいな戦闘の臨場感もなく、最近放送されていた「ID INVADED」みたいな独自性もない
せっかく独特な世界観なのに何も考えず新海作品の表面だけをなぞったような音楽の使い方は純粋にマイナスポイント
音楽の部分でいくらか興を削がれたので長くなったけど、作品全体としては良く出来てる
声優も怪しい部分はあるけど、たどたどしさが主人公の性格にもマッチしていて途中から気にならなくなる
もう一度野崎まど作品を一通り読み返したいと思うくらいには期待に沿う出来だった