どどる さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
花束
なにこの名作。
▶キャラ描写の話(アサルトリリィの最高なポイント)
膨大な設定や人数を抱えながらスッキリとした作りにまとめている、超いい仕事です。
動作の1つ1つにキャラクター性があるため、単独のキャラ回がなくてもどんどんキャラクターが深くなっていきます。
キャラクターが1話の中に数十秒登場するとき、単にストーリーをつなぐセリフを言うときにも、そのキャラの内面が画面に表れる。
そういう作りをしています。
最初に感心したのは、2話終盤の楓・J・ヌーベルが夢結の頬を張ろうとするシーンです。
夢結のつめたい言葉に言い返すより先に手が出る楓・J・ヌーベル。
楓・J・ヌーベルの直情径行と、どういうときに激昂するかの行動原理が出ています。怒る理由は梨璃のため、他人のために怒る女です。
そして、このシーンでもっとも大きい意味を持つのは、楓のビンタが未遂で終わったあとに、夢結が楓に先攻ビンタをすることです。
一見無意味なビンタと、楓の不意打ちビンタには反射的に身構えたのに、2度目は脱力して反撃を待つ姿から、「未遂に終わった楓のビンタで改めて叩かれるための行為」であることが分かる表現になっています。
今の自分に対するじくじたる思いと、それを打開したい気持ち。
夢結に「私だって本当はこのままで良いとは思っていない。変わらなければ、変わりたい。楓さんが言う通り、梨璃さんの求めに応じることは、私自身のためでもあるかもしれない」というようなことを言わせれば簡単ですが、言えば夢結のキャラが台無しになります。
黙って思い詰める性格はそのまま、ちゃんと内面も画面から伝わってきます。
こういうのが好きです。
ほかにもopedでは抽象的ながら分かりやすい表現が多用されていて、まずop中で登場人物が花になぞらえられていることが分かります。
(梨璃は髪飾りにもしている四つ葉のクローバー、二水ちゃんはキンモクセイ、梅が黄色のフリージアなど)
それぞれの花言葉にも意味がありますし、同じくop中で梨璃が夢結に花束を渡す絵があるのは4話のレギオン結成回と、そこで結果的に起きる夢結の心情の変化を示しているのは明白です。
「私は梨璃とレギオンのみんなのおかげで笑えるようになった」的なセリフはありませんが、中心的テーマとしてopで毎回描写されています。
そういった作りが多めのアニメです。
▶全体の話
アニメで中心になっていたのは梨璃と夢結をふくむ4人のつながりでした。
そして、そこに割り込んでいく楓・J・ヌーベル。
この5人のバランスがすごくよく、特に美鈴お姉さま~結梨ちゃんの暗くなりがちな流れを破壊していく楓・J・ヌーベルの信頼感がすごいことになっていました。
シュッツエンゲルの関係性に割り込めないくせに、シュッツエンゲルの空気を肯定的なものにしていく。
約束された負け犬なのに勝ち過ぎている女。
何をそんなに勝っているのか……人生……?
死んでいる人や死んだ人が生きている人の心をとらえ続けてしまうストーリーラインからは想像しづらいような、明るく楽しいアニメでした。
▶好きなキャラ
キャラはもちろん楓・J・ヌーベルが大好きですが、「誰のことも大好きだからナ!」と人を気にかける吉村・Thi・梅。
楓と近い、他人を気に掛ける性格を持ち、表面的にはとても明るいのに、人が悲しんでいるときに遠巻きに見守っていることしかできない梅もグっとくるキャラクターです。
夢結さまのことをずっと気にはしていた。気にはしてたけど何かできなかったキャラがいるというのは作品以前の時間を感じさせる演出です。
悩みまくりで思い込みの激しい夢結も好きですし、健気かわいい純粋なまま逝った結梨ちゃんも好き。
神雨はシンプルな百合に見せかけて神→雨に重さを見せていて良いし……梨璃ちゃんの健気っぷりは当然良いし……好きなキャラが多すぎる。
アールヴヘイムの押しが強い女、遠藤亜羅椰。アールヴヘイムの小動物っぽい江川樟美ちゃんなども良い感じでした。
好きなキャラが多い。
EDで毎回見せていたのと、最終回でうっすら形になった梅、鶴紗、二水の3人シュッツエンゲルが見たい……。
キャラクターがひとりひとりでなく、関係性の上に成り立っているのが最の高。
▶欠点とか
ただ、最初にメリットとして指摘した、膨大な設定や人数を「描写しない」ことは人によっては欠点になります。
何が起きたか詳しく説明して欲しい人、分からないまま見続けられない人などにも向いていません、生まれてはじめて見るアニメにも向いていません。
説明の尺を、選択的にキャラクター描写に振り分けたアニメです。
だからこそ、ストーリー進行や設定の説明に時間を割く1クールアニメでは時間が足りなくて出来ないキャラクター描写が出来ています。
類似の作品を見慣れていて、作中のようすに大体の察しがつく人。
世界観は添え物であり、キャラクターがメインであるべきだという感覚の人。
百合が好きな人、異性愛以外の恋愛に説明の必要を感じない人。
群像劇が好きな人、などには最高の作品のひとつになりうるアニメです。
視聴途中のときの感想。
{netabare}
ひとまず期待値込み評価。
とにかく良い。
3話までのは内容はおおよそ予測が立つように作られていたし、ここまで見ていればopedに本編の内容が含まれているのも分かるので、すでに終わり方も大筋予想が立たなくもないようになっている気がします。
なぜそれが素晴らしいかというと、百合だから。
急展開でビックリ、意外な展開でどっきり、そういう情緒のない展開はおそらく少ないはず。たぶん。
情緒を見せるには見せ方が優れていなければいけなくて、それが難しいのですが、アサルトリリィは現時点ではこの問題点をクリアしています。
キャラクターの表層的な性格よりも、行動理念やトラウマ、考え方を関係性の中で見せようとしているのとても良いです。
タイトルにふくまれるブーケ(花束)は弔いの意味も示されていますが、日本ではウェディングブーケを指すことが多い単語。
ハッピーエンドを示唆しているような気もしています。
意外と直情傾向で他人のことを考えがちな楓が好きです。
{/netabare}