遊微々 さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
居場所を求める根無し草たちのバラード
1998年に放送されたサンライズ制作のSFアニメ。
このたび10年ぶりくらいに再視聴しましたが、やはりいつ見ても色褪せることない名作ですね。
大まかな話としては、スパイク、ジェット、フェイ、エドの4人の賞金稼ぎ集団の、時に愉快で時に切ない日常を描いた作品で、ジャンルとしては一応ハードボイルドSFガンアクション、といったところなんですが、必ずしもこうとは言い切れません。
とはいうのも今作は基本的に1話完結のオムニバス形式の作品なんですが、エピソードによってそのテイストがかなり違うのが特徴です。
ハードボイルドでシリアスなドラマ、明るくポップなコメディ、シュールで不可思議なシナリオと様々なジャンルの話が詰め込まれていて、見ていて全く飽きません。
今作を語る上で重要なのは、基本的にハッピーエンドと呼べるようなエピソードがほとんどないことです。大概4人の思惑は空回りし、頑張りが徒労に終わることも少なくありません。これは人生とは必ずしも上手くいくことばかりではない、と言ったことを暗に示していると思われます。しかし同時にそんな不条理をどう受け入れるか、これもまたキャラクターの生き様から学ぶことができます。
そしてもう一つ、今作はとにかく「語らない」作品です。各エピソードの結末にしてもうそうだし、キャラクターたちの掛け合いにしてもそう、とにかく多くを語りません。創作においてこの「語らない」という表現は、非常に重要ですが、同時にかなり難しい要素だと思います。私は見ている側に対して想像の余地を持たせ、人によって様々な解釈を持たせるということは、創作作品に於いて非常に大切だと思っています。しかしこれは少し塩梅を間違えると単なる説明不足になる危険を孕んでいます。
ビバップの場合は巧みなセリフ回しからなる人物描写によって、この「語らない」という表現を非常に有効的に活用出来ていたと思います。ビバップ号に乗る4人は互いにほとんど干渉しません。お互いの過去を探ることも、語ることもほとんどありません。しかし短い言葉のやり取りの中で、相手に対する信頼がしっかり顔を覗かせていたのは見事でした。これが成り立っていたのは当然ライターの手腕による部分も大きいでしょうが、声優陣の卓越した演技力も大きいですね。山寺宏一氏や林原めぐみ氏といったメインのキャストはもちろんのこと、1話限りの登場キャラクターにも多くの実力派を起用しており、作品全体に厚みを持たせるまさに「プロ」の仕事を体現していました。
作画に関してはアナログ作画ということも考慮すると、TVアニメーションとして破格の出来と呼べるのではないでしょうか。アクションシーンはかなり見応えがあったと思います。
菅野よう子氏が手掛けた音楽も名曲揃い。「ビバップ」というタイトル通り、ジャズ、ロック、ブルースと多くのジャンルを取り入れています。特にOPの「Tank!」はTVのバラエティ番組をはじめ多くの場面で耳にすることも多く、元々がアニメソングだということを知らない人も多いのではないのでしょうか?
個人的には人生で一度は見るべき一本だと思いますね。今回再視聴して改めてそう思わされました。