「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン(アニメ映画)」

総合得点
91.3
感想・評価
575
棚に入れた
2726
ランキング
36
★★★★★ 4.4 (575)
物語
4.3
作画
4.6
声優
4.4
音楽
4.3
キャラ
4.3

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ネタバレ

遊微々 さんの感想・評価

★★★★★ 4.9
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

移ろう時代、されど人はその一葉に万感の思いを・・・

まずは今作に携わった関係各所の方々、非常に大変な時期を過ごされたことと思いますが、それらを乗り越えて今作の完成まで漕ぎつけたこと、本当にお疲れ様でした。

さて本作の感想ですが、個人的には非常に評価の難しい作品でした。
というものの、見過ごせないレベルで大きな不満点があったからです。
{netabare}言わずもがなギルベルト少佐の生存ですね。はっきり言ってこの展開は私の好むところではありません。
そもそもこの物語は、ヴァイオレットがドールの仕事を通じて様々な想いに触れて「愛してる」を知る話だったはずです。彼が今際の際に残したこの「愛してる」という言葉、一体どういった真意が込められていたのか、その答えが分からない謎を追い求めていく、そんな彼女の痛々しいまでのひたむきさに私は心を惹かれたのです。
ドールの仕事の中で触れていく多くの「愛してる」の感情、それに出会う度にぼやけていた少佐からの「愛してる」の輪郭が徐々にはっきりとしたもになっていく。しかしそれは決して明らかになることのないもの、この切なさ、無常さ、しかしその中に存在する確かな暖かみ、この絶妙なもどかしさこそが物語により深みを持たせると思います。
また彼の存在というのは、ヴァイオレットにとっては自分を救ってくれた存在であると同時に、彼女を過去に縛り付ける楔にもなっていたと思います。彼女が彼の存在しない世界の中で、今後どういった道を見つけていくのか、これも非常に重要になってくると思います。
彼女の彼に対する想いは、一種の依存めいたものに見えました。彼を通してでしか自分の存在価値を見出せないかのような、そんな危うさを孕んでいるように感じてしまったんですね。
だからこそ、彼の存在しない状態において、彼女が何に対して関心を持っていくのか、自分の存在にどう答えを見つけていくのか、それを見届けたかったんです。
しかし彼が生存していて、しかも再開まで果たしてしまっては残念ながらこれは成立しません。彼の存在はすなわちあの時の「愛してる」の真意が表明してしまうことを意味します。劇中でそれが描かれたかどうかは問題ではなく、その可能性が生まれてしまうということが重大なのです。
また彼女の存在理由が「ギルベルトのため」ということに限定されてしまう気もします。それはあくまで過去の彼女であって、これからの彼女はまた違ったアプローチをしてもらいたかったです。
{/netabare}

とまあ長々と愚痴を書き連ねましたが、しかしこの私の勝手な好みと幻想を以って安易に評価を下げていいほど軽い物でないのが今作です。
アンやユリス関連の話は胸を震わされましたし、あの圧巻の映像表現にはいくら称賛の言葉を送っても足りません。
私の求めていた物ではありませんでしたが、大きな感動を与えてくれた作品であることも間違いありません。やはりこの作品を見れたことは、感謝の気持ちしかないですね。

{netabare}(開始10分も経たない内にアンのエピソード思い出して一人すすり泣いてたのは恥ずかしかったなあ・・・){/netabare}

投稿 : 2020/10/15
閲覧 : 303
サンキュー:

37

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