遊微々 さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
口に出来ない気持ちを、言い淀んでしまう言の葉を、掬い、紡ぎ、認めて、そして少女は「想い」を知る。
今作のPVを見た時の衝撃は覚えています。
また京アニがなんかヤバそうなやつ作ってる!!という印象を受けましたね。
結局当時の私のアニメに対するモチベーションが著しく下がっていた時期だったため視聴には至りませんでした。
しかし現在映画が公開されていることもあり、この機を逃してはいけないと思い立ち、今回視聴することを決意しました。
とにかく胸に染み入る物語でした。毎回のように心を震わされ、全編通してほとんど泣いていましたね。
私がこの作品に入り込めたのは、一つは主人公のヴァイオレットの未熟さと純真さに惹かれたからですね。
感情の機微、言葉の裏表を読み取ることが出来なかった彼女が、ドールの仕事を通じて様々な想いに触れ、徐々に自分の感情を表に出していくようになる、その成長ぶりを見るのが好きだったからだと思います。
彼女は何も分からない少女でしたが、だからこそ誰よりも純粋でありました。彼女は「愛してる」を知るために、たくさんの「愛してる」を真っ直ぐ見つめていました。それ故に、様々な人々の心に寄り添うことが出来たのだと思います。
そしてもう一つ、「家族」が絡んだエピソードが多かったからですね。私はこのテーマに大変弱いです。どんな人も、その人が存在するということは必ず家族の存在が同時にあるわけです。
私の思う家族とは、血の繋がりではなく温もりがあるかどうかです。温もりがあるということはすなわち愛が存在することの証明だと思います。そこに血の繋がりは関係ありません。その想いこそが何事にも代えがたい大切なものなんです。
今作の家族には全て愛の温もりを感じることができました。だからこそあんなにも心を揺さぶられたのだと思います。
特にダメだったのが7話と10話ですね。愛のカタチは様々ですが、親が子を想う気持ちほど美しいものはありません。「展開が読めた」「どこかで見たことある」そう仰られている方もいらっしゃいますが、私は例えそれがどれほど似通っていようと、決して同一視はしません。その一つ一つの想いが本物であり、一つ一つが特別なんです。
特に10話は50年にも渡って手紙を送り続けることもそうですが、ラストでヴァイオレットがアンのこれからを想い涙を流すシーンがとても印象的です。ドールとしての仕事を全うするために感情を表に出すのをこらえていた彼女が、その想いを吐き出すかのように吐露するあの場面は、ヴァイオレットがもうかつての道具ではないこと、彼女の成長を示す1シーンでした。
高い評価も頷ける作品でしたね。美しい作画と、それに見合う物語、また一つ出会いに感謝する作品が増えました。