101匹足利尊氏 さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
ドデカくて、よく回るけど、安全装置が機能した良作オリジナルアニメ
【物語 4.5点】
限界まで詰め込んでも、ひっくり返しても、崩れない安心感。
本作のシナリオは、
構成に基いて、全話分の脚本を一旦通して書く。
→長~い脚本会議で伏線など調整して詰める。
という手順で構築されたとのこと。
この方法なら、オリジナルにありがちな、
自由だからと色々詰め込んで、広げた大風呂敷を畳めなくなる心配はない。
(逆に窮地から起死回生の脚本で大ミラクルもないですが)
色々と専門用語も満載で、限界までよく足掻き、
どんでん返しも頻繁な本作だが、
視聴者とのキャッチボール成立のための、
設定解放等のタイミングも程よく調整されており、
終始、淀みのないペースで、ナルホドそう来たのか……。
といった感じで余裕を持って完走可能。
【作画 4.5点】
アニメーション制作・NUT
巨大移動要塞≪デカダンス≫の体高は3000メートル級。
雲海を突き抜ける富士山並の巨大物体が大規模変形し、
時にそれに匹敵するサイズの≪ガドル≫に殴りかかる戦闘描写は圧巻。
≪ガドル≫の周囲に広がる防衛フィールド≪ゾーン≫
重力が不安定化する空間での空中戦闘には、
同じくNUTが手がけた『幼女戦記』とは、また違った独特の浮遊感がある。
ゆるキャラ?と思しきサイボーグデザイン等も、
凄惨な展開や、グロ表現を視聴者に注入するのに有効。
またキャラデザによって見せられない表現が視聴可能になってしまうこと自体が、
異なる存在を同質に見ることができない人間の性を想起させ、
異端視し、異端視される壁に挑む、テーマ深化に寄与する舞台装置として機能。
{netabare}サイボーグの尻から排泄物同然の≪オキソン≫注入や嘔吐など、
人類でやったら放送事故級の描写もこのキャラデザなら自由にできますw
また、{netabare}ゲーム内NPCポジションで人類が奴隷同然の境遇で
システム運営に飼われている{/netabare}という衝撃設定も、
視聴者としてサイボーグを下に見てしまうことで、より味わい深く消化できます。{/netabare}
【キャラ 4.5点】
ヒロイン・ナツメ。
運命に反発して燃える少年ヒーローのような彼女の喜怒哀楽が、
燃料切れな“組長”に生きる気力を注入する構図。
(カブラギさんヒロイン説(笑)まんざら荒唐無稽でもありませんw)
理解可能な壁には真っ直ぐにぶつかって行けるが、
方向性を見失わせる価値観を知らされた時は脆さも見せる。
その脆さもまた、カブラギの行動を刺激する心地良い関係。
その他、サイボーグ陣では一つ目のジルがお気に入り。
シナリオ展開のための無茶振りも面倒臭そうにこなす、
できるサイボーグですw
因みにスタッフ&キャストの間では安酒密造機?サルコジが一番人気なのだとか。
ターキーとの絡みは、小物感もあって“人間味”が伝わるステキな一幕でした。
ところで、キモカワ≪ガドル≫ペットのパイプ。
ぬいぐるみの商品化はあるのでしょうかw
【声優 4.0点】
ヒロイン・ナツメ役の楠木 ともりさん。汚く叫べとのオーダーにも対応し、
生命感溢れる活発な少女を熱演し、新境地を開拓。
ともりる演じる熱血少年主人公とかも、いつか見てみたいです。
“組長”カブラギ役の小西 克幸さん。抑えた演技の中で、
淡々とした無気力ボイスから、ナツメから波及した、
静かに燃え上がる生命の怒りまで好演。
個人的には『アルテ』の“師匠”レオ役の記憶も新しく、
少女を指導する上のポジションにて、
不器用で素直になれない男の面倒臭さが倍加された感じ。
ヒール役に回った子安 武人さんの{netabare} 「世界にバグは不要です」{/netabare}も象徴的なセリフでした。
【音楽 4.0点】
劇伴は、笛やパイプが牽引する民族音楽風で≪タンカー≫の世界を、
デジタル音楽でサイボーグの世界を表現。
双方の架け橋となる心情曲はピアノ等の王道で。
3テーマ構成でスケールの大きな世界観をフォロー。
OPは鈴木このみさんの「Theater of Life」
エネルギッシュなギターサウンド&ボーカルに生命力を注入される良曲♪
このクールでは『リゼロ』2期や『恋プロ』の主題歌も担当して大活躍でしたね♪
今年末からの声帯結節手術による休養から無事復帰されることを祈っております。
EDは伊東歌詞太郎さんの「記憶の箱舟」
透明度の高い男性ボーカルが、意味深で、世界への感慨も漂う歌詞を歌い上げた良作バラード。
OP映像は作品ダイジェスト型。一応ネタバレしてはいるが、
後になってそういうことか!?と分って来る構成。
ED映像のイメージイラスト群は、
{netabare}最終決戦からカブラギと再会するまでのナツメの3年間{/netabare}を描いた内容。
こうした演出も、構成・脚本が安定していなければできない芸当。
OPやEDで、これができるアニメにハズレはない印象です。