plum さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
現実と妄想の対比
「好きなものを好きでいられなくなるって、きついよな。」
乃絵の兄(純)の言葉ですが、この作品に登場する人物の多くが、この想いを実感することになります。眞一郎から比呂美。比呂美から眞一郎。乃絵から眞一郎。愛ちゃんと三代吉はお好きにどうぞ。純から乃絵はごめん。自分の想いは届かない、届けることができないと知ったとき、あなたならどうする?そんな風に問いかけられている気がしました。ちなみに私なら、それでももがきにもがいた挙句、玉砕して、一生誰にも話さない思い出になるでしょう(笑)
さて、そんな様々な想いが交錯する中、私が最も興味を持ったのは比呂美です。表面的には才色兼備でスポーツもできる、絵に描いたような優等生です。でも、いざ好きな人のことになると、リアルを通り越して”生々しい”行動や発言をします。妬みや僻みという、およそ自分では認めたくない負の感情が描かれており、そんな自分が嫌で嫌で仕方ありません。アニメのキャラとして見れば、腹黒いとか性格が悪い、ということになるんでしょうか。ただ、こういう感情や行動って、誰もが経験したことがあり、そして誰もが目を背けたくなるものだと思います。
そんな比呂美と極めて対照的に描かれているのが、乃絵です。彼女は純粋で決して裏切ることはなく、その言動には気高ささえ感じてしまいます。言うならば”天使”のような存在であり、極めて”アニメ的”な存在です。彼女の発言は、「あなたは飛べる」「真心の想像力」「涙を集めている」といった、謎めいているというより、フィクションでしか発せられない言葉が多く、リアリティ溢れるこの作品において、彼女だけが妄想の産物のようでした。その為か、本作の登場人物の中で、唯一乃絵だけは共感できるものがありませんでした。
本作の主人公は、言うまでもなく眞一郎です。そしてメインヒロインは、作品のタイトルや構成から考えると乃絵でしょう。生々しい比呂美と、非現実的な乃絵。ただ、自分にとっては、最初から最後まで比呂美の物語でした。好きなものを好きでいられなくなる。好きでいられなかったものが、実は好きでいてよかった。そんな状況の変化における、彼女の心情を描いた作品だったと思います。主人公でもないのに、表情やしぐさ、心情の描き方が、異常ともいえるほど細かく表現されています。この細かさは、なかなか他のアニメでは見られないと思います。
そんな訳で意見の分かれる結末ですが、大事なのは眞一郎がハッキリとケジメをつけることであり、それがしっかりなされれば比呂美でも乃絵でも、どちらでも良かったと思っています。気持ちは比呂美でしたけどね(笑)
キャラ以外の面では、背景がとても好きです。富山の町並みや仲上家の建物などとても丁寧に描きながらも、意図的にぼかしているのが、なんだかいい雰囲気を出していました。また、”冬”をすごく感じることのできる作品でしたね。
好きなアニメっていくつもあるんだけど、True Tearsはいい意味でちょっと違う感じの好き、かな。