栞織 さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
精神医療ものを初めて入れた点で画期的
いろいろと社会現象を引き起こした本作ですが、テレビ版のみの評価をまずさせていただきます。作画などは90年代作品としてはがんばってはいますが標準だったと思います。ただ背景設定の緻密さでは群を抜いていました。ワンカットしか映らない背景の設定がものすごかったです。その意味のあるワンカットが1秒ぐらいしか画面に映らない。これが庵野監督の手法なのですが、ついていくスタッフは大変だったと思います。まさにガイナックスでなければできない作品でした。
内容はみなさんよくご存じで、キャラもよく知られていますから、いまさらどのキャラがどう魅力的でという話は割愛させていただきます。私がこの作品で一番驚いたのは、いわゆる精神医療現場の単語がずらずらと出て来たことです。心理学関係が放映当時は指摘されていましたが、今では一般的になっている医療用語も、この作品では普通の単語として使用されていました。それがまず驚きでした。アニメもここまで来たのかと思いました。それは社会的な要請だったのかもしれません。これだけ一般社会でうつ病の話がされていたら、そのような作品は出てしかるべきだったのでしょう。しかしエヴァ以前の作品ではそれはなかったと思います。そういった日本社会、いや全世界的な精神社会の変質を、このアニメ作品は予見し描いていたと思います。その意味で、本作は画期的であり、前代未聞のことでした。SF作品としては、本作は座りの悪い、設定に穴のあるものだと思います。テレビ版での最終回は楽屋落ちみたいな話になってしまいました。映画版でもそのような設定上の結末は、解決していません。しかし、地上波のテレビ番組で、子供向けのロボットアニメでそのような話をした事、本作はこれに尽きると思います。
戦闘場面などは私が指摘するまでもなく、非常に秀逸でした。「男の戦い」の回前後の盛り上がりは、素晴らしいものでした。スタッフの人々は、アニメ作品に限らず特撮や映画作品を本当によく研究されていると思います。それなので、いつも結末が舞台劇的手法になるのは非常に残念なのですが、それもまたエヴァンゲリオンであると言う事は、認めなければならない事なのだと思います。