ちゃりお さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
100%純愛
{netabare}
映画の主題
映画冒頭、そこから私は泣きだしてしまった。
見覚えのある家からその物語は始まった。TVアニメのあの家だ。あの娘さんのお話かと思ったがどうやら葬式なんだとか。誰の葬式なのか、思いを巡らせる。
お婆ちゃんが手紙をもらっていた。
なるほどそう来たか。あれから70年程度たっていると言うことなのだろうか。少なくともCH郵便社はあれから五十年は存続し手紙を届け続けたということか。まったく、コンドラチェフの波は何の仕事をしているのか。
コンドラチェフさんよ、技術革新は五十年周期で起こるんでないんですか?郵便社が乱立していたヴァイオレットの時代から五十年もCH郵便社が生き残ったのならそれは凄い。深夜配達もしなければ退役軍人社長の会社が生き残れるとはとても思えない。ヴァイオレットもCH郵便社も過去のものになった時代と考えるのが自然という思考に至った。戦争がもう過去のものになり、戦争で人をあやめた、大切な人を無くしたといった苦しい思いを抱く人も少なくなって平和になった世界である。
つまり、本作の戦争というテーマ、そして恋愛というテーマの中で戦争はある程度収まり、その代わり新たな課題が提示されている。仕事と家庭の両立とでも言おうか、現代特有の悩みであるこの問題にいかに向き合うか。これがこの映画の主題であり帰着点であるのだと、そう言える。
恋愛と仕事
ヴァイオレットは18でCH郵便社をやめてドールをやめたと冒頭で語られた。仕事と家庭の問題ではないだろうか。それまでの論理展開からそう誰もが予想できただろう。
つまり、映画の主題からいえば生き別れた少佐と結ばれ仕事をやめる。こういうストーリー展開だろうということだ。
しかし少佐は生きているということになってしまう。ではどうして連絡をよこさないのか。ヴァイオレットは有名なドールであってCH郵便社の事業は国内外各地に及んでいる。どうして連絡がないか。
王道を言えば記憶喪失。ただこれには問題がある。記憶が戻るきっかけである。このきっかけをヴァイオレットが与えるわけにはいかないからだ。
ヴァイオレットと少佐の関係性を考えたい。少佐はヴァイオレットにとってたくさんのものを与えてくれたひとであり、思い人でありながら斜め上の人間なのだ。だから逆があってはいけないのである。
何らかの理由で記憶はあるが連絡せずにいる。この問題解決がこのあとの展開で示されるのだろうと、そう冒頭から読み取れた。
感想
終わってしまったなという感じである。物語はこれからも続くというようなものでなく。きっぱり終わったなという印象。
ハッピーエンドなのかな。非常に楽しかった。
冒頭のCH郵便社博物館では元軍人らしく気配を感じさせないところからこだわっていたのだろうと、脚本の出来に期待させられた。
手紙の価値の変移と現在での意義を再確認させられた。一般化すれば廃れた技術でも過去の功績は偉大だということだろうか。
再開
筆跡。手紙特有のそれはやはり電話やネットの時代において少々忘れられがちである。筆跡は人のアイデンティティーであって手紙の時代の人なら分かるのだろう。
少佐の生存、深まる謎。
どうして連絡しないのか、連絡できないのか。
ヴァイオレットは心のうちの上手く口に出せない感情を手紙にのせることをしてきた。
少佐の思いを、心のうちを理解する。
そのような物語の終わりかたは手紙の不必要を意味し、手紙の重要性を意味する。逆説的ではあるがやはり正しいのだ。
手紙をきっかけに始まる心のやりとり。
それは、手紙をかえさない気持ちのぶつけあいへとなった。
手紙の衰退と重要性を、愛と家族の重要性を感じ取れるのではなかろうか。
技術革新、発展と世代交代、衰退。多くのものが避けられないそれを、すくなくとも衰退するものを忘れないで、覚えていたい。往年の技術者たちに思いを馳せたい。そういった作品であった。
{/netabare}
これは100%純愛である。