遊微々 さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
変わる想いがある。変わらない想いがある。人の数だけ形があり、人の数だけ色がある。かけがえのないその気持ちを、人は愛と呼ぶのだろう。
今までのP.A.オリジナル作品と打って変わって世界観を一気にファンタジー路線にした青春モノ。
思えばこれがリアタイで追ってた最後のP.A.作品でした。
海の世界・汐鹿生
陸の世界・鴛大師
この2つの異なる世界が共存する街を舞台に繰り広げられる人々の繋がりを描いたストーリー。
両者の間には深い溝があり、それゆえ住人同士がたびたび衝突を繰り返してしまいます。
しかし全員が全員そうではなく、互いに歩み寄る姿勢を見せる者も中にはいます。この辺りは現実でもそうですね。
この作品が掲げるテーマの一つがこの「溝がある者同士の交流」だと思います。
確執がある理由の一つに、両者の間に生まれた子供は汐鹿生で生活できないから、というのがあります。
しかしこれは建前にしかなっていません。恋仲になるような関係に対してだけならまだ分かりますが、実際は大人も子供も衝突し合ってるのが現状でした。
色々理由をつけてはいますが、最終的にはプライドの問題なんじゃないかと思いますね。主人公の光も最初は意地になって反発してました。「相手より優位に立ちたい」という人間のエゴだと思いますが、これは同時に競争心が生まれてより良い物が誕生する可能性もあるので一概に悪とは言い切れないんですよね。この辺りの折り合いって本当に難しいと思います。
やっぱり一番は互いにとって大事な共通の目標に向かって歩むってことなんですかね。敵の敵は味方、じゃないですけど。まあ難しいテーマだと思います。
そしてもう一つのテーマは何と言っても「愛」ですね。
誰かを好きになる気持ちは時に人を暖かくします。しかし同時に傷ついている人がいるかもしれません。
誰かを好きになることで他の誰かが傷くなら、好きになんてならなければいい。登場人物たちは皆、誰かを強く愛するほどそんな気持ちに胸を締め付けらていました。
でもそれは決してダメなことではないんです。たくさんの喜びや悲しみが人を想う気持ちをさらに強いものにすると思います。辛い思いを知っているからこそ、誰かに対してより優しくなれるんです。
そんな当たり前な、でも見過ごしてしまう大事な気持ちを教えてくれた作品だったと思います。
作画は相変わらずすごく綺麗。今作は特に海と深い関わりがあるため、幻想的な海の風景は作品を彩る素晴らしい効果を発揮していました。
キャラクターも皆良かったです。特に美海ちゃんすごい好きでした。それだけに彼女の想いが報われるか否かはかなり心配して見つめてましたね。
非常に美しい物語です。これを見ると少し人に優しくなれるような気がします。