砂粒と嵐 さんの感想・評価
4.1
物語 : 5.0
作画 : 3.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
最高の「部活モノ」で最強のバディ
SPYAIRのイマジネーションがOPとして最高すぎる。
あのどこまでもいけそうな無敵な感じ、努力と友情と勝利、今後何度もオープニングが変わるけど、ハイキューを象徴するテーマソングだと思う。
部員のいない超弱小排球部だった日向の中学時代から始まり、当時の因縁の相手、影山と高校でチームメイトに。やがてコンビを組むことになり、変人速攻とかいう(ここだけはフィクションならではの描写)超人技を武器に日々成長し、やがてバラバラだったチームのメンバーも集まってきて、音駒が登場し、伊達工を克服し、今後のキーポイントとなる青城への敗北、ここまでが一期。スガさんと及川の影響でセッターとして影山が大きく成長するのも、一期の主軸に据えられたストーリーだ。
まず、チーム全体の成長や、個人それぞれの役割を丁寧に描いてるのがすごく良い。
日向は典型的な主人公タイプの性格だが、天才なのは影山の方で、影山も過去にトラウマを抱えていて、とても未熟な存在として描かれる。(影山はクールなビジュアルをあてがわれているかと思いきや、ただのアホなバレー馬鹿なので、そのギャップもまた良い。)
この二人以外にも、旭さんのエースとしての重荷との葛藤、ノヤさんの覚悟と存在感、また明らかに負け役のスガさんや山口、縁下や木下がただのチームメイトや脇役に追いやられることがなく、それぞれが主役で、それぞれの戦いがある。全員がカッコ良い。そこがハイキューの素晴らしさだと思う。
烏野というチームが強豪ではなく、まだまだ成長途中の「ダークホース」の位置づけなのもとてもワクワクする。それを「烏」で表象しているところも、とても好き。
同じように、日向影山の「太陽と影」は正反対で補い合う関係であることを示しているし、それとまた別方向の日向月島という「太陽と月」の対比は月島が日向に触発される存在でありながらも二人が違ったベクトルで違うフィールドで輝くことを表しているし、そこと近からず遠からずの平凡な名前を持った山口、旭さんとノヤさんの名前の対称性、など名前のセンスが最高。
腐女子が好きなアニメ、という認識がされがちだが、単にそれは良いバディがたくさん描かれているからだと思う。
日向と影山(最高のライバルで最強の味方)・月島と山口(山口の一番のヒーローである月島と月島の一番の理解者である山口)・大地さんとスガさん(剛と柔・表と裏からチームを支える二人)・旭さんとノヤさん(役割も性格も正反対で互いにリスペクトしている)・岩ちゃんと及川(エースとしての最強とキャプテンとしての最強)・黒尾と研磨(研磨の能力を見出し最大限に引き出す黒尾と黒尾だからこそ心を開く研磨)など、どれもひとつひとつ、味わいごたえのある関係性だ。
原作漫画の絵もわりと特徴的だが、登場人物の顔つきにそれぞれリアリティと目立つ個性があって私は好み。
また、大会の雰囲気や細かい描写 応援や掛け声やウォーミングアップの時間、試合前の緊張感など徹底的にリアリティを追求している。原作者はじめアニメのスタッフ陣は、「バレーボール」以前に「部活」というものに深い思い入れがある人たちなのだろう、と何度も感じた。
特に「勝者と敗者」では、日向たちのような頂を目指せない、同じスポーツをやって同じ大会に出ているのに、同じようなレイヤーで勝負できない人たちがいることを、をきちんと描いている。彼らの努力や、彼らの祈りや、彼らの戦い、そういう彼らの物語を真正面から描いているところが、本当に素晴らしいと思った。
また、そういう圧倒的な力量差のある相手との試合だったとしても、勝つか負けるかは最後までわからないのが勝負というものだし、だから強い者は手を抜かず、弱い者は最後まで勝利を信じて一点でももぎ取ろうと必死に戦うことが、望まれるべき態度である、それがスポーツマンシップである、というイデオロギーを強く感じた。同じコートに立って戦う以上、力量関係なく、対等な「ライバル」である、ということが何度も強調され、美しいなあと思って泣いた。