フィリップ さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
愛はたゆたう
アニメーション制作:京都アニメーション、
監督:石立太一、脚本:浦畑達彦、
演出:石立太一、藤田春香、小川太一、
キャラクターデザイン:高瀬亜貴子
音楽:Evan Call、原作:暁佳奈
先日、劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデンを視聴して、
その超絶作画と練り込まれた脚本に感嘆した。
京都アニメーションのアニメに対する愛とこだわりを
存分に感じさせてくれた作品だった。
ただ、私にとってこの作品は、TV版を視聴したときには
あまり響かなかったシリーズ。
というのも、これまでの京都アニメーションの作品群を超える
美しい作画と世界に発信することを標榜した
コンセプトによって期待が過度に高まり、
見事に裏切られたように感じてしまったからだった。
そして、配信がNetflixのみという視聴環境の難しさもあり、
番外編であるExtra Episodeは、
本編と映画2本を観終わったあとに、ようやく視聴するに至った。
しかし、タイミングが間違っていた。
この作品は、必ず本編と一緒に観ておくべきだろう。
おそらく、それによって本編の評価にも影響する
最重要エピソードのひとつと言ってもいい。
ほかの話をカットしてでも、
本編に入れるべきだったと感じた。
なぜかと言うと、人によっては
本編で大きく引っかかる要因のひとつになる
ヴァイオレットの心の成長が見えないという部分を
しっかりと描いているからだ。
しかも、お話の出来も10話に次ぐほどの感動を得られ、
卓越した完成度を備えており、最終回にもつながっていく。
原作では、この話は第4話と第5話の間に
差し込まれるべきものだったのだそう。
ところが、何らかの事情によって、
本編からカットされてしまった。
おそらくテーマが重なったこともあるだろうが、
ヴァイオレットの成長が見られる重要エピソードなので、
絶対に本編に必要だったと個人的には思う。
だから、もしこれから視聴される人がいるなら、
ぜひ、本編の4、5話の間に視聴することをお薦めしたい。
ある日、ヴァイオレットのもとに
有名オペラ歌手からの代筆依頼が舞い込む。
内容は「全ての女性が共感し、全ての男性の胸を打つ」恋文だった。
あまりに難解な依頼にヴァイオレットは苦悩する。
誰もが感じられる「愛」とはどのような形なのだろう。
感情があまりなく、人の心が分からないヴァイオレットが
古典を読んだり、C.H郵便社のメンバーから
話を聞いたりしながら、「人を想う気持ち」について
深く考えながら、理解していく構成は見事。
とても腑に落ちるストーリーで、
視聴後に心地良い感情がこみあげてくる。
そして、次に5話の公開恋文の展開となるのは、
全体の流れとしても納得感があった。
愛はどこにあるのか。
言葉では説明できない感情を掬い上げ、
温かい気持ちにさせてくれる。
(2020年9月22日初投稿)