aonisai さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
本当の聲とは
原作漫画、公式ファンブックを読んだうえでのレビューです
まずこの作品は漫画7巻62話を原作としておりそれを129分という非常に短い時間にまとめた挑戦的な作品です。129分という短い時間にまとめるためにストーリーの枝葉を切り落としています。例えば原作では主人公以外の人物がより深堀されています、特に西宮母、真柴については映画のみでは補足できないことが多いです。
さてこの映画では京アニならではの演出や繊細な音楽によって原作に色を付けているといえるでしょう、例えば作画に関していうとキャラクターの動きによって心情を表現していたりだとか空を工夫したりとか、音楽に関していえばピアノの中にマイクを突っ込んでノイズを抽出したりとまあこの場で語りつくせないほど細やかな作りがされています。
原作を書かれた大今先生も本当に緻密な絵で登場人物の微妙な心を描き切っています。原作を書かれた大今良時先生、心情描写に長けた山田監督、そして作品世界に寄り添うことができる牛尾憲輔さんという最高の役者がそろっていたのではないでしょうか。
さてストーリーについてですがこれは西宮硝子にどれほど寄り添えているか、西宮硝子をどれだけ理解できているか、理解しようとしているかによって非常に評価が変わると思っています。決定的なことは公式ファンブックに書いてあるので細かい言及は避けますが、ヒントとしては小学生の時の自分は加害者であったと思っているということです。それもずっと。
ある意味この作品は視聴者としてはマジョリティの健聴者と硝子のディスコミュニケーションが起きうるということで視聴者を巻き込んだテーマの演出を行っているといえます。
しかしながら私にそれがないと言い切れるかというと難しいところです。
「お前のこえ聞いてるつもりだったけど、本当につもりなだけだった」
これは原作最終盤にでてきた石田の台詞です。
'あなたは友達のこと、家族のことをわかったつもりではないですか?'
そう作品が呼び掛けているようでした。
このような普遍的なテーマを扱った作品は20年,30年たってもその時代の人に影響を与える力があります。多くの人にこの作品と原作を読んでほしいと願っています。